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第53 伴出、粘っこい笑顔をする

 ルーシーが連絡を受けて港の奥までやってきたところ、敵も味方もなにやらワサワサとしていた。

 モゾモゾしている中心では、だらりと垂れた妙な剣らしきものをビシビシと地面に叩きつけながらサワキが騒いでいる。

「ちっくしょう! オレはいまだにアリイとイマイとニットーとタカトクとマイクロエースの違いがわかってないんだぁ!」

 せーの! アリイとマイクロエースは同じ会社だよー!

「な、なんですかにゃこれは! 応援上映みたいになってますにゃよ!! サワキくん失礼なことを放言するのは今すぐやめるにゃよ!!」

「○○○○○ー○の○○○ィ○○を歌ってた人が○○○○○ーになっててショックを受けてる連中がいたけど、そんなのでへこたれてたら○○○○のファンなんかとうに再起不能になってるわ!!」

「サワキくんを今すぐに黙らせるにゃ!! ASAP!!」

 さすがに度を越したヤックな発言であるためわずかたりとも自主規制を外せないセリフを吐くクソサワキに周囲が慄いていると、セリーナがゆったりと歩みだし、サワキの手からその謎の剣をとりあげた。


「せっかくのウィップソードがこれじゃ台無しだ。いい機会だし、俺が見本を見けてあげるよサワキ・バンデ」

 セリーナが刀身を器用に戻すと顔の前に剣を構えた。柄頭(ポメル)を捻ったりして操作していることから、そのあたりにワイヤーの巻き取り装着のようなものがあるようだ。

 セリーナが構えただけでブレディールの者たちが騒ぎ出した。

「長が構えたぁ!」

「やばいべやばいべ」

「聞いてないべ〜!」

 セリーナが周囲を優雅に見回し、叫んだ。

「みんな無闇に動かないでくれよ! 客人達もだ!」

 斥候をはじめサワキ達はハテナというような具合だったが、優雅にその剣を振るいはじめたセリーナを見て理由がわかった。

 風切り音が少しずつ早くなる。早いだけではない、不規則になる。やがてそれに地面を打つ音が混ざり始めた。

 サワキは周囲を飛び交う『刃』に驚いた。なるほど、この武器はこういうものなのか、と。

 斥候もなにかを避けようとするが反応が間に合わない。周囲に降り注ぐ蛇腹剣の刃たちから実を守るので精一杯であり、徐々に身動きがとれなくなっていった。

「すごい身体能力だ······」

 サワキはセリーナの贅力がすさまじいものであると評価した。これだけの広範囲を刃のついたワイヤーで自在に鞭打つのは並みの筋力ではないからだ。

「ありがとう。でもね、これの本質は振って使うものじゃないんだ。これは······突くものなのさ!」

 ガシャリという音とともにその赤い蛇腹剣の刃が束ねられたかと思うと、その次の瞬間には目にも止まらない速度で『発射』された。

 斥候の2人の目の前に2つに分かれたブレードがそれぞれ威嚇のように地面に刺さった。

 刺突ほどリーチの長い武器の有効な使い方はないだろう。ウィップソードと呼ばれるこの武器もまた同じで、打ち据えるだけのものではなかった。


 斥候は焦った。このウィップソードの威力はたとえその謎の機構付き外装でも直撃すれば無事では済まない。

「くそっ! こうなったらインビジブルカムフラージャーで!」

 部下らしい斥候の姿が薄れたが、すぐにワイヤーが打ち据え、バランスを崩した。

「あの透明化装置なら無駄だぞ。不完全のようだからな。動くと溶け込んだ背景が伸びて装着者に一瞬ついていってしまっている。動き始めでバレる。まして広範囲を打てるこの武器相手じゃ相性も悪い。避けるより捌くのが重要だぞ、頑張れ」

 他人事のようにアドバイスするサワキを憎々しげに見つめる上司の斥候。

「まあ、目的が強行偵察ならこれだけ時間をかけた時点でとっくに失敗なんだけどね」

「······!」

「セリーナ! アレはもうスタンバイできているぞ! こんな奴らにはもうなにもできない!」

 どこかから現れたコウヘイが叫ぶ。

「ニヤニヤ。あれもこれもオレの計算通りですのぉ」

「うわぁ、粘度の高い笑顔ですにゃあ······」

「ようミーシャ」

「にゃ! だからボクはーー」

「やあルーシーちゃん。フフ、名前をずっと間違えてるなんて失礼なヤツだよね、サワキバンデは」

「セセセセセセセセセセセリーナしゃん!? お、おこ、おここ、こ、おこんにちはでございますにゃ!!」

「アハハ、昼間に会うのははじめてだね? おこんにちは」

 セリーナがいることに気づいたルーシーが顔を真っ赤にし、モジモジとしどろもどろになりながら挨拶した。

(あら? あらあらあら? ルーシさんそんな、まるで憧れの君と会ったときの少女漫画の主人公のようじゃないですか! ルーシーさんがあんなに不器用でいじらしかったなんて······セイカがいうにはもうモサモサらしいのが残念ですわね。もう少しルーシーさんの年齢がアレならベストでしたのに······いけません! 私はかあさま一筋! 人のスジに逸れるわけには! でも人はいつか成長するもの、かあさまもいつかは松本清張してしまう······ああ! こんなことばかり考えてはいけません! 今はただ心の中の血小板ちゃんに祈りましょう。勝手な行動しないこと!)

 セイカとパトリシアはおそるべき師弟なのだった。

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