第51話 伴出、見える
「にゃはぁ〜」
ルーシーが窓の外を見つめながらため息をつく。即座に生臭い空気が辺りに漂った。ルーシーのため息は猫の口の臭いそのものである。
「慣れろミーシャ、5日間連続更新した新作短編が完結したのにポイントがゼロ(※4/17現在も)という史上最低記録をはじき出したのは事実だけども、それだっていつか笑い話になる」
「いえ、今もうすでに笑い話ですけど(笑)」
「違いますにゃよ、不人気っぷりを悩んでるわけじゃにゃい······です、けど! 5日間連続更新した新作短編が完結してもなおポイントゼロォ!!??」
「いかがでしたか? なにが原因かはよくわかりませんでした!」
「検索妨害小説という立場をさっそく受け入れてるのですね(笑)」
「それよりも、船に乗れる算段がつきそうだぞ」
「この小説自体が泥舟みたいなものですから、ちゃんとした船に乗れるのは助かります(笑) でもどうやったですか? 海賊船ってことですよね? どう頼んだんですか?」
「ここの人たちにとっても他人事じゃないってことさ」
「はあ?」
「まあ近いうちに船を出してくれるみたいだし準備しといてよ。あ、パトリシアさん、例の地図、少し貸してもらえません?」
「ああ、いいですよ。今から観光されるのですか?」
「ええ、まあ。ああと、地図にあるこの港の奥のここ、たしかにこういう形のものがあったのですね?」
「ええ、はい。見てただけなので何なのかはわけりませんでしたけど」
「ありがとうございます。じゃあ行ってきます」
部屋を出ていくサワキを眠そうなパトリシアが見送った。
暇そうにパトリシアがルーシーの方を見るとまだわなわなとしている。これでは相手をしてくれそうにない。
(サワキさん、港の奥にある物が気になっていたようですね······)
ぼんやりとそんなことを考えたあと、パトリシアも部屋を後にした。
ルーシーはただ一人ブルブルと部屋で震えていた。
・ ・ ・
サワキは一直線に港のさらに外れに向かっていた。パトリシア手作りの地図にあった謎の場所である。
港の端のさらに端、というかほとんどもう隠れていて見えなくなっている場所である。自然の海が半ば露になっている。
その例の場所に近づくとあっというまに町の人間が集まってきた。
「なんだ旅人さんかい、ここから先へは行けませんべ」
そこにいたのはバリー達だった。
「んー、なにがあるんですか? オレの連れは見れたらしいんですけど」
「そりゃーまぁあのピンクレディーさんは······」
「オレはダメなんです?」
「もういいから帰ってくれんか」
「あ! あそこに目に見えないピンクのユニコーンが!」
「なにぃ! 目に見えないのにピンク色だとなぜわかるという逆説の代名詞略してIPUだと!?」
「よしいまのうちでござるよ薫殿」
「いや、騙されねえべよ。おめえもう長にも会ったってきいたべ。もう十分だべ。ほれ帰れ帰れ」
「やだやだやだ! パトリシア様だけずるい! オレもこの先が見たいんだ!」
ダダをこねるサワキにバリーら警備らしき人間が困っているのを笑いながら見ている影があった。物陰に隠れたパトリシアである。
暇を持て余したパトリシアはサワキを尾行してみたのだ。
(と、ととと、止められてやんの(笑))
ずっと暇だったパトリシアにはこの程度のことでも面白くて仕方ないのである。
「くそっ! こうなったら力づくで行くからな! マッスルボマー(1993年 カプコン)!」
サワキが体当たりでもせんばかりの勢いで警備に突進したところ、それを軽くいなす人物が現れた。
「よさないかサワキバンデ」
その姿は大きな三角帽子に赤く派手なコートをまとっていた。例えるなら、なんか吸血鬼ハンターDとかワソピーヌのミホークみたいなあんな感じの服装だ。例にあげたこの二人は全然違う服装なのだがハートで理解してほしい。
「お、長!」
警備の人間が驚いている。
「たしかに俺は協力を考えると言ったし自由にしていいとも言った。だが、礼節を欠いていいとは言ってない」
「う! せ、セリーナ、セリーナ・ウェイブランナーか······!」
(セリーナ? あれが海賊の長ですか。あら、なかなかの美形ですね······まさか······)
セリーナをもっとよく見ようと覗き込むパトリシア。同時に手にしていた布に巻かれた杖のようなものが音をたてた。
「誰だ?」
(いっけね!)
「ああ、それはたぶん見えにくいーー」
サワキがパトリシアのいる方を指差す。
(気づかれた!? バラさないでくださいよあのアホ!)
パトリシアは思わず身を縮める。よく考えると別に隠れる必要はないのだが。
「それはもういいべよ」
「ああ失礼。なにがいるのかわかってたのか?」
「ああ? 見えないピンクのユニコーンって言いたいんだべ?」
サワキはキョトンとして言った。
「え? 見えにくい偽装をしてるシノファリオからやってきた斥候だろうって言おうと思ったんだけど」
サワキの指差す方向、パトリシアのいるさらに後ろ、木々の中に溶け込むようにカムフラージュした人間が動いた。
「な、なにぃ!?」
「う! し、しまった!」
目を凝らしても蛇のように紛れてよく見えない。サワキの指摘によって相手が動揺したため皆にもわかったのだ。




