第40話 伴出、だだをこねる
「そうだ、こういうのはどうだ?」
サワキが手を叩く。
「パトリシアさんがパトリックくんのフリをしてセルディーに残り、パトリックくんがパトリシアさんの服装をしてオレと来る」
「うーんナルホド二人は双子、そう簡単にはバレないかもダネ。でもやっぱり最後はバレるだろうしそこまでする理由はあるのカナ?」
「お互いの立場や気持ち、考え。環境が変わった方が見えるものがある。識見も高まると思うよ」
「嘘ですにゃ女装美少年についてきてほしいだけですにゃ」
「そそすそそなんわけまいないだろ!! そんなわけないだろ!」
「絶対そうですにゃ、顔に書いてありますにゃ」
「違う! そんなことはない! ここはひとつ、パトリックくん自身に決めてもらーー」
「あ、普通にイヤなのでやっぱり残ります」
「ああああああああああああ!!!!」
「そりゃそうですにゃ」
「イヤだいイヤだい! オレは独占欲の強い女装美少年に女の子と仲良くしてたら耳を引っ張られたいんだい!」
「みなさんお気になさらず。いつもの発作ですにゃ」
「サワキちゃんはパトリック様のどこにそんな要素を見出したんダイ? わずかたりともそんな素振りなかったろう······?」
「たとえ99%勝ち目がなくとも1%あれば戦うのが北斗神拳伝承者としての宿命なんだもん!」
「いや0から1を見出してるだろうサワキちゃんは」
「もんじゃないんですにゃよもんじゃ」
サワキがどうしようもないことを言って聞かないのでとりあえずパトリシアが着いていくことで話はおしまいとなり解散となった。
※ ※ ※
その後は割りと淡々としていた。書状が届き、ムツとシンの新たな活動がセルディーにも受諾されたと記されていたため二人は拠点に戻っていった。サワキとルーシーについてはコンデイトから直ちに出ていくように記されていた。また、ヴィクトリアについての記載はまったくなかった。
少々納得のいかない結果ではあるがこれでもセイカがずいぶん取り計らってくれたものだと予想できたし、ここいらで手打ちにしたいというヨモギの意志も読み取れたのでサワキは呑むことにした。
「これでよかったの?」
まだ暗い街角でサワキに質問する影があった。
「まあ賢者ってやつの情報は得られなかったけど収穫はあったよ」
密かに呼び出されたサワキがコソコソと返す。
「山をこえるつもり?」
影が動いてそれが異巫女であるとわかった。
「そのつもりだよ」
「アドバイスだけどやめておいたほうがいいわね。もう道にはシノファリオの者が配置されているし、ルプスは広大。一番奥には凍結のドラゴンが住んでいるという伝説まであるわ。だからおかしな気候なのよあそこ」
「じゃあどうすれば?」
「ブレディール湖から船で渡ればいいんじゃない?」
「ブレディール?」
「そう。このコンデイトのずっと北東にあるクソでかい湖よ。琵琶湖よりも大きいんだから」
「琵琶湖を基準にされてもな······」
「それよりも、あのピンクのお嬢さんもついてくることになったそうじゃないの」
「耳が早いね」
「あなたの連れ女の子ばっかりね。ハーレム系みたいになってるわよ」
「まあやっぱり定番だよね。仕方ないよね、その方が需要あるし、これは仕方ない」
「そうね。需要といえば万が一この小説がまかり間違ってコミカライズ化とかアニメ化になったらあなたはクビよ」
「······えっ! クビ!?」
「クビ。他メディアに進出したらこの小説は『選ばれし勇者は異世界にて植毛するF〜原作小説では少年が薄毛の解消のために異世界に行きましたが人気がほしいため主人公をちょっと肉付きのいい女の子にしてダイエットのために異世界に行くように改変します~』になるわよ」
「······えっ! クビ!?」
「そうだってば。需要の問題よ」
「いやいや待ってよ。じゃあその女の子は相当に太ってるの? 心不全になるぐらい?」
「そんなわけないでしょ、何キロあるのよそれ。ちょっとよちょっと。ライザリン・シュタウトちゃんぐらいふとももむちむちなだけよ伴美ちゃんは」
「ばばばばバンビ!? 沢木伴美!?」
「ええ。ちなみに見た目もライザちゃんをコピ、オマージュするわよ」
「ちゃ、な、しょな(そんなもん)、ふぞきんな(ふざけんな)!! ぜんぜんいいだろそんなもん! わざわざ異世界行かなくても! むしろいい点だろ!」
「弱点でもマイナスでもなんでもないことを女の子キャラに弱点として与えてイジってキャーキャー言わせるのなんて定石なの知ってるでしょキモヲタなんだから」
「クビはオレじゃなくてもいいだろ! いやオレにヲタクって設定はないわ! 実際ヲタクではあるけど! だいたい他に影薄いのいるだろ! それを女の子にすればいいんだ!」
「うるっさいわねこいつ。他って誰よ」
「あの、えーと、もう名前忘れた。ほら、演技がダイコンの説明おじさん」
「脇も脇、ほぼモブじゃないのよ。変えても誰も気にしないわよ」
「でも、でも、オレ八神庵の非公式ライバルキャラだし!」
「京サマ(草薙京)がいるのにそのポジションは無理でしょ」
「じゃあK! Kの一人! クローンで!」
「あなた曲がりなりにも刀キャラなんだからサムスピとかにしなさいよ、ナインハルト・ズィーガーのライバルキャラでいいんじゃない?」
「えーと······あっ! じゃあ水邪で! 水邪で頼む!」
「露骨に女性人気狙っていくのね。あと必死すぎよ。でも水邪的なデザインはアリね、ルーシーちゃんあたりにそんなデザインになってもらおうかしら」
「へ? ミーシャを? イミちゃんさぁ、ミーシャは胸ぺったんこだけど立派な女の子だよ? 乳ポローンなるじゃんあんな格好したらさぁ。セクハラなんだよそれって」
「あら、ルーシーちゃんは男になってもらうのよ。っていうか主要キャラはバンビちゃん以外はイケメソばっかりになるの」
「え、女の子ばっかりじゃなくて逆ハーになる予定なの······?」
「そうよ。この小説はファイナルファンタジータクティクスが元ネタ(要出典)だけど『F』になったらイメージ元はふしぎ遊戯になるわよ」
「すっごい変わりよう」
「だから男キャラはみんな胸はだけてるの。なんなら丸見えよ」
「おまえふしぎ遊戯にどんなイメージ持ってんだよ。一人としていないよそんなキャラ。このクソ小説の万倍本格ファンタジーしてるぞ」
「知らないの? 少女漫画のイケメソはことあるごとに胸をはだけさせてアンニュイな表情しなきゃいけないのよ」
「少女漫画読んだことないだろ」
「あと指がフェイスハガーぐらい長いの」
「じゃあオレ指のばすから! 万力で伸ばすから! クビだけはやめて!」
「もうこれ決定事項だから。じゃーね、バイビー!」
「待って、バイビーは古い! バイビーは古いよ!」




