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第39話 伴出、皮算用する

「ごきげんよう」

 パトリシアが礼をし、パトリックがそれに倣う。

「お家の方は問題ないので?」

「ええ。かあさまがもう全て取り仕切っておりますし、イェゾウーサが守っておりますので」

「イェ、ゾ?」

「説明おじさんだよ」

「ああ······」

 たぶん誰も覚えていない人の話を終えると二人は神妙な面持ちで切り出した。

「サワキさんに聞きたいことがあります。あなたはこれからどうするつもりですか?」

 パトリシアがサワキを厳しい目で見つめながら聞いた。

「どうするとは?」

「あなたはもしや教会に行くつもりなんじゃないですか?」

「んー、いいえ。どうしてそう思うんです?」

「クラッテンハイムが教会の密使であったことをご存知だからです」

「だからこそ教会とやらは避けます。もうオレには勇者の剣もありませんし、人心を得る要素はなにもありません。元来あれらとは無関係の人間ですし」

「では、どこに?」

「えーとですね、そもそもなぜどこかへ行くと?」

「······」

「本当は気づいているのでは?」

「あれ? サワキくんもう次の目的地決まってたんですかにゃ?」

「あ、言ってなかったな」

「······シノファリオ家ですね?」

「はい。ホーリという子がシノファリオのつくった鉄兵士だとして、ヨモギ様が開放されたのなら、奴らに従うのが本心ではないはずの彼らから情報をもらえるかもしれないな、と」

「なんの情報ですかにゃ?」

「ヴィクトリアだよ。十中八九ホーリはヴィクトリアをもとに製作されている。文明レベル的にメモリーとかいうのの記録を元にしているはずさ」

「シノファリオにあるはずのメモリーが目的だと」

「なるほどですにゃ。サワキくんの目的はたしかに勇者の痕跡をたどることにありますけど、関係自体はないから情報さえあれば······あっ!」

 セイカがルーシーに向かって口に手をやるジェスチャーをしていた。「しー」のポーズだ。

「やはりあなたは勇者ではないのですね?」

「はい。無関係ですね」

 サワキはおかしそうに笑っていた。

「オレの目的はひたすらにくだらないことです」

「というと?」

「詳細は伏せますが身体的問題の解消に関することです」

「······なるほど」

 パトリシアの目はサワキの頭に釘付けだった。

「一つ、シノファリオはかあさまの開放をもちろん知っています。二つ、あなたは事を大きくした容疑者であるとも伝えられているはずです。三つ、メモリーのことは簡単に教えてもらえるようなものではないと思います。それでも行きますか?」

「はい」

 サワキは即答した。

「では、私達のどちらかを連れて行ってくださいませんか?」

 パトリシアも即座に返した。

「なぜです?」

「······」

「サワキちゃん、お二人は気に病んでおいでなんダヨ」

「自分達はなにもできなかったと?」

「······!」

「真面目なんですね。まったくそんなことはないと思いますけど。シノファリオと連携をとり、戦略を練り、自分達が前線まで出たのにまだ自分を責めるとは」

「僕達はもっと見識を高めなければならない。これからのセルディーを思うのならよくやった、頑張っただけではダメなんだ」

 パトリックは手を強く握りしめたまま言葉を絞り出した。

「······ミーからもお願いするヨ、サワキちゃん。二人がここまで言うなんて······この二人はミーにとっては家族のようなものだ。汲んでやってくれないカナ?」

「セイカさんには恩義がありますし、そうですね······オレは一切責任を持たないという条件付きでなら」

「では私を!」

「いや僕を!」

「パトリック、あなたは家に残りなさい! 長子が家にいなくてどうするの!」

「僕達は双子だろ! 立場は対等だ!」

「そう思ってるのはあなただけなの!」

「うーん······」

 腕を組み悩むサワキ※1




※1 万が一この小説がゲーム化とかした場合にはここで連れて行くのがパトリックかパトリシアか選べる予定です。

 二人は総合的な強さは同じくらいだけどステータスのバランスが違ったり覚える精神コマンドが違う的なアレ。

 これを捕らぬ狸の皮算用といいます。


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