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第37話 伴出、不遜な様子

「よし」

「よしじゃありませんにゃ! オティの剣を敵に渡してしまうなんて!」

「怒るな怒るな、すんだことだガハハ!」

「あれ預かりものですにゃよ! 本当は西ワガサで封印してもらう予定だったやつですにゃ!」

「災難だと諦めな」

「プレデター2(ツー)ゥ!!」

 ルーシーが頭をかきむしる。

 大変なことをサワキがしでかしてくれたので、ルーシーはタイトルの話数表記が漢数字からアラビア数字に変わっていることにも気づかなかった。

「ご命令を」

 わちゃわちゃと言い争っている二人にヴィクトリアが話しかける。

「うん。では、倒れてる人の救助をたのむ」

「かしこまりました」

 飛び降りようとするヴィクトリア。

「待て、階段から行け。自身の機能を損なわないように注意するんだ」

「······あの鉄兵士になにかあるんですにゃね」

 ルーシーは肩を落として諦めた。人間切り替えが大事である。

「サワキさま!」

 塔の真下あたりでパトリシアの叫び声がした。真剣な面持ちだ。

「ヨモギ・セルディーがお呼びなんでしょ、行くよ」

 答えるサワキの顔はどこか冷めたものに見えた。


 ・ ・ ・ 


「なにをしでかしたかご理解なさっておいででしょうね」

 パトリックとパトリシアを傍らに置き、ヨモギは輿の中にいた。

「はて?」

「とぼけないでいただきたい」

「いや、なんのことかわかりませんが。それより要望がありますヨモギ様」

「要望?」

「鉄兵士ヴィクトリア・クリスタルの所有権を半分譲っていただきたい」

「······なんですって?」

「ヴィクトリアはこの後封印することを禁止し、また、戦闘行為やいかなる人間への殺生に関わることも禁止。研究や破壊、分解などの侵襲性のある行為も禁止。人道的な扱いを施し、セルディー家には可能であればヴィクトリアを学校のような場所で人間とともに学ぶ場を与えるその後援者になっていただきたい」

「······なぜ我らがそのようなことを?」

「ヴィクトリア自身に今後のことを選択してもらうためです。そのためにはまず学ばねば」

「今後、とは?」

「無論、兵器としての役目を終えた退役後のことです」

「なにを! そのようなことを無関係なあなたに指図されるいわれはありません。まったく不可解です。あなたはこの惨状の責任をとらなければならないはず」

 ヨモギの輿は担がれ、コンデイトの方へと向かっていた。帰ろうとしているのだ。

 パトリックとパトリシアは黙って二人の会話を聞いていた。

「無関係と申されるのなら被害を被ったのはそれこそこちらの方ですな。無関係なセルディー家ならびにシノファリオ家とあの者達、果ては教会とやらのイザコザに巻き込まれ、しまいには大切な宝剣まで差し出さなければならない始末。これに報いていただきたい」

「なぜ当方が? そちらが闇雲に被害を広がらせた原因であろう。責任はーー」

「原因と? そうおっしゃられるのは結構ですが、ならばこちらは先程の者に申し入れ宝剣を取り返し、コンデイトへの手出しをやめる約束を取り消させてもらうまで。無論以降こちらはそちらのためには一切動くことはないでしょうな」

「なるほどそうでしたね。あなたはあの敵と取引をした人間。つまり敵のスパイです」

「はて? そも当方はただの旅人にすぎません。セルディーに対して通さなければならない義理はないはずですが?」

「つまり勇者の剣を持ち皆を謀って混乱を招いたということですね。重罪です」

「皆を謀ったと? そのようなことに心当たりがあるとすれば、封印されていたはずの鉄兵士が元より開放されていたこと、ぐらいでしょうか?」

「······!」

「城塞都市時代のコンデイトが戦火にまみれた際、セルディーはちゃんとなにかしたのでしょうな? 本当に貴族として恥ずかしくないような血の代償を払ったのでしょうな? まさか封印された古代兵器など無断で使用されておりませんでしょうなあ? しかも王家に無断で」

「······」

 ヨモギから返事がなくなったあたりでサワキは輿から離れていった。

「どこへ?」

「救助の手伝いに」

 うやうやしく頭を下げたサワキはそそくさと塔の周囲へ向かっていく。どうやら救助の指揮にあたっているらしいセイカが頭を下げるのがパトリシアから見えた。

「全員瓦礫から救い出すぞ! いくぞみんな! ファイトォ!」

「一発!」

「充電ちゃん!!」

 そんな声がパトリシアに聞こえた。充電ちゃんってなんだろうとかはとりあえず置いておくことにした。

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