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第三十五話 伴出、声を発す

 その部屋ではキラキラと光の粒子が舞っていた。壁面は滑らかで閃光の筋が走り、壁から自ら生えてきたかのように金色の鎖が垂れ下がっている。

「サワキくん、この鎖······」

「ああ。もう外れているな」

「封印は最初から解けていたんですかにゃ?」

「鎖の先を見てみな」

「根本は金色なのに、先だけ黒い?」

「材質が違うんだろう。そして先端が花開くように裂けている。自ら壊れたかのようにな」

 サワキが鎖を手にし、力を込める。黒い部分は脆くも崩れたが、金色の部分はそのままだった。

「成分構成も違う。この金色の部分はオレの魔力耐性でも刃が立たない」

 サワキは刀を抜くと金色の鎖を一部だけもぎ取った。氷が水に溶けるときのようなバキバキという音がして、刀が触れた部分の金色の鎖は溶けてしまった。

「······なにが違うんだ?」

「にゃ? 黒いところは魔力でつくられた鎖で金色のところは違うってことにゃのでは?」

 サワキは刀を見つめるが、もう声は聞こえてこない。

「······まぁいい。それよりもこれがヴィクトリア・クリスタル、通称ビッキーか」

 垂れた鎖の間にそれはいた。

 一目にはくすんだ洋白製のマネキンといった具合だ。名の通り水晶のように美しい紫色の宝石が右目に収まっている。しかし、顔の左半分はもげてしまっており、なにかオイルランタンのような内部構造が見えている。

「ボロボロですにゃね」

 ヴィクトリアは全身くまなく傷んでおり、凹み、傷、破損、そして煤に覆われているような状態だった。

 サワキは膝をつき、その腕をなでる。

「······キレイな体だ」

「まーたなにかのフェチですかにゃ?」

「美しい球体間接の体だと思わないか?」

「······ボロボロですけど、まぁたしかに元はキレイだったんだろうなとは思いますにゃ」

 ミーシャは少しだけムッとしていた。やたらにサワキがヴィクトリアに見とれていたからだ。

「どうすれば動くんですにぇ」

「うーん。たしかもう準備はできていると······」

「ん? 音がしますにゃ。動きそうですにゃよ!」


ーーガガ······ガ······ーー


 俯くような角度だったヴィクトリアの首が少しだけ前を向くと、なんと声を発した。どうやらちゃんと動くようだ。

「ようこそユーザー。はじめに、ナビゲーションボイスを選択できます」

 女性の声でヴィクトリアが喋りだした。

「······お、声を選択できるのか。最先端だねぇ」

「こだわりの家電みたいになってますけどすごいはすごいですにゃね」

「サンプルはこんな感じです(國府田マリ子風ボイス)」

「おいおい、いいな!」

「次はこんな感じ(椎名へきる風ボイス)」

「いいねー!」

「次はこんな感じ(丹下桜風ボイス)。次が最後です」

「スバラシイ!」

「なんで全部これほどに絶妙なとこついてくるんですかにゃ。作った人の趣味ですかにゃ」

「最後はこれ(銀河万丈風ボイス)」

「あ、その銀河万丈さんで」

「なんでですにゃ! 需要を考えるですにゃ!」

「万丈さんの声が好きだからだよ!」

「いい声ですけどもなんか敵になりそうですにゃ(偏見)」

「わかったわかった。じゃあ置鮎龍太郎さんか緑川光さんでできる?」

「甘い! 濃い! 冷や麦食べたくなりますにゃ!」

「いいじゃんかよ別に」

「もっとカワイイのにするですにゃよ。想像だけなら無料なんですから人気のカワイイ声を設定しますにゃ。それでこの小説の人気爆上げですにゃ!」

「カワイイのはもうおまえの声があるだろ」

「え? きゅ、急に照れますにゃよ〜。うん? いや、ボクどんな声してるんですにゃ? あ! たぶん大空直美さんですにゃね!」

「宇崎ちゃんの自称非公式ライバルキャラまだ引っ張ってんのかよ。ミーシャは桑島法子さんのイメージだよ」

「はあ、不服はないですけどなぜですかにゃ?」

「ホミくんがかわいいって理由だけでエレメントハンター(NHKエンタープライズ・2009年)見てたからだよ」

「なんということですにゃ······なんということですにゃ······」

「ちなみにムツがアイデンティティ田島さんでシンがR藤本さんだ」

「ややこしいですにゃ! 肝心のサワキくんは?」

「オレの声? 風間杜夫さん」

「俳優の!? さてはモルダー捜査官してたからとかそんな理由からですにゃね! 年齢考えるですにゃよ!」

「じゃあ内田直哉氏」

「うちはマダラの人!? サワキくん高校生ですにゃよ!?」

「わかったわかった、じゃあ北○卓士でいいよ!! もう!!」

「タカシ・キタモト大尉専用フルアーマーガンダム(ゲームの私物化)やめるにゃ」

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