第三十四話 伴出、察する
「ふにゃ〜」
サワキの上でルーシーが目を回している。サワキとルーシーは塔の上にふっとばされてきていた。
「んがぁぁ、普通に死ぬぞこれは······」
頭を擦るサワキ。
ボロボロになっていたとはいえ外壁を貫いたのである。かなりの危険が伴っていた。パトリックの巧みな術で二人は風に守られてはいたものの、魔法を弾いてしまうサワキにはどれほど効果があったかわからない。
「ここにはなにかがあるということだな。そしてそれはおそらく······セルディー家側の鉄兵士」
パトリックの読み通りサワキは塔に送り込まれた意味を理解していた。
「問題は3つ。動かせるのか、戦えるのか、味方か」
ぶつくさと呟き寝た状態で周囲を見回すサワキ。
眼前にあるルーシーの尻を押しのけて目についた場所へ向かう。
落ちていた槍を拾う。シンのものだ。パトリシアが風で矢として飛ばして外したものだ。これが塔の外壁に深く刺さり、壁をあらかじめ脆くしていたのである。
「計算してたのか」
サワキが感心しながら言葉を漏らす。
目的の目の前まできた。扉だ。分厚そうでかつなにか紋様が刻まれていて、そこを光が走っている。明らかに特別なものだ。
「うーん、どう見ても封印されてる扉だね! うん?」
お決まりである。
「お、置いていかないでくださいにゃー。どうしましたかにゃ?」
ルーシーがフラフラしながらサワキを追ってくる。
「これ、なにか書いてあるな」
扉の横の台に大切そうに羊皮紙らしきものが置いてあり、そこに文字が書かれてる。
「ふあ〜、こんな文字見たことありませんにゃ、古い言葉にゃんですかにぇ?」
「これ······オレのいた世界、オレの国の古い文字だよ」
「へえ! チキューの? なんて書いてあるんですかにゃ?」
「読めないよ、かなり昔の言葉だし」
ーー差前を抜けーー
サワキに声が聞こえた。
「なんだ?」
ーー差前を抜き、その身に文字を映すが良いーー
「差し歯を抜きそれで身をほじるコロッセオ?」
「なんちゅう闘技場なんですかにゃ」
ーー······すみません、刀に文字を反射させてください。不思議な力によって文字が読めるようになるはずですーー
「かっこつけずにはじめからそう言うんだな」
「一人でなにを?」
「つまりこうしろと。虎眼流紐鏡だな?」
ーーなに?ーー
「あっ! 暗黙のネタが通じない人だ! ここでは珍しいな·····」
「さっきからなにをしてるんですかにゃ? 誰かいるんですかにゃ?」
「声が聞こえてくるんだよ。たぶんこの刀の声だ」
「意志ある剣!? 伝説の剣とかでよくあるやつですにゃ!?」
「または大剣レイガンドに封じられた魔人ダークレイガンド(ラスボス)が自分の封印を解かせるために主人公に語りかけてくるみたいなアレかもしれない」
「しれっとブレイヴフェンサー武蔵伝(スクウェア・1998年)のネタバレをするのやめるにゃ」
「えーと、うーと、ちょっと細かい傷とか汚れで見にくいな。ちゃんと手入れしてないからくすみとか錆がつきはじめてるし。オレ炭素鋼の刃物に向いてないんだよね。これ錆止めにペンキとか塗りたいなぁ」
「剣が喋ると知った途端にペンキを塗るぞとか言ってひそかにプレッシャーを与える勇者の図ですにゃ。こいつさてはDVとかするタイプですにゃ」
「えーと······なるほど」
「わかましたかにゃ?」
「ああ。やはりここに鉄兵士が保管されているようだ。ここに来た時点ですでに起動準備がはじまっているはずで、後はこの刀で封印を解くだけらしい。扉を間に差し入れて割るように封印を開き、本体を縛っている鎖を断ち切るだけだそうだ」
「やりましたにゃ! さっそく······!」
二人が目を合わせた途端に大きな揺れがあった。
衝撃と気配が示している。それこそが修正者クラッテンハイムの放った魔法なのだ。
まずい。周囲一帯が震えるほどの規模だ。この塔すら揺らいでいる。
サワキは急いで刀を突き入れるべく封印の扉に手をかけた。しかし······
「うん?」
「サワキくん! 急ぎますにゃ!」
「······ンよいしょっ!」
ーーゴゴゴゴッ!ーー
サワキが扉に刀を突き入れるまでもなく扉は動いた。
「え!? 封印は?」
「最初から開いていた······? とにかく鉄兵士を起動させよう」




