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第三十三話 伴出、ぶっ飛ぶ

 波が塔のある一帯を押し流す。

 サワキもセイカもルーシーも踏ん張ることすらできずその質量で押し飛ばされてしまった。

「まずいぞ!」

 シンがムツを見る。

「こうなったら我々も!」

 ムツが頷く。

 襲いくる波からセルディー親子を守るので精一杯であるが、加勢した方がいい。いや、加勢する以外にできることがない。

 槍と弓矢を取り出したところでそれを誰かに取り上げられた。

「もーう我慢できませんわ! クラッテンハイム! この『双頭竜』が直々に成敗してさしあげます!」

「パトリシア様!」

「ぼ、僕もやるよ」

「パトリック様も!」

 武器をとったのはセルディーの双子だ。

「かあさまはまだ目覚めていないようですが息が落ち着いています。どうやら体調が悪いのは本当にあのクラッテンハイムの呪いかなにかだったようですわ! 二人はここを守っていてください!」

 槍をブンブン振り回しながらパトリシアがムツとシンに場を託す。

「よし、行くよパトリシア!」

「ええ、パトリック!」

 双子が飛び出した。


ーーブシャア!!ーー


 水で足をとられるかと思ったが、双子の近くの水が割れるように避けた。

風の魔法(シユーテイングエア)!?」

 シンとムツが驚いた。

 風が双子を守り、そして進路を切り開くように鋭く流れたのだ。風の魔法シューティングエアである。

「ほう······」

 風はクラッテンハイムまで届いた。

「かなりの威力だな御子息たちよ!」

 悠々の態度でクラッテンハイムは迎撃に出る。

 パトリシアの槍を受け止め宙にパトリシアごと放り投げると、パトリックが放った矢をつかんで見せた。

 巨体だがかなり俊敏でかなり器用だ。

「だがわかってますよ! 人間の、しかも魔法の専門職でもない貴方たちにこれほどの魔法は何発も使えますまい!」

 そしてまたしても水と波。

 二人は他の人間と同じく遠くへ飛ばされた。

「うわぁ!」

 飛んできたパトリシアをパトリックが受け止める。

「ま、まだです!」

 起き上がったパトリシアが槍を構え、またしても風を纏う。

ーービュン!ーー

 そして、鋭く尖った風。魔法の風。

「グッふふふ、所詮は子供。芸がない」

 余裕のクラッテンハイムだったが、その優れた修正者(リバイス)としての視力があるものをとらえた。

「ぬおおっ!!」

 思わず全力で転がる。

ーーキュンッ!!ーー

 凄まじい風切り音、そして物が吹き飛ぶ音。

「ちいっ! 避けられましたか!」

 パトリシアが悔しそうに叫ぶ。手には何も持ってない。

 パトリシアは槍を風で飛ばしたのである。

「くううっ! 悪魔のような発想をしおって! そして、重くて密度のあるものを飛ばせるほどの圧を出せるとは······! だが、それも通じぬ!」

 クラッテンハイムは想像以上に強い。そして、まだまだ余裕を持っている。それはすぐに証明される。

「その実力にお答えしよう双子よ。修正者(リバイス)となった者の完成した形での魔法、水の魔法ウェービングウォーターを見せてやる。先程までのただの現象再現ではない本物の魔法だ」

 クラッテンハイムはサジフと同じく魔法として成り立っていない魔法未満のものしか使ってなかったのだ。

「勇者には効かないということらしいが、この威力でもどうなのか試してみようじゃないか······」


 肉眼で見えるほどクラッテンハイムに魔力が集中していく。

 地鳴りともなんともいえない振動。

 おそろしい気配。

 本当に魔法が通じなければ耐えられるのか疑いたくなるほどのプレッシャー。


「パトリック、パトリシア、いますか?」

 小さな声が輿から聞こえてきた。

「かあさま!」

「大丈夫なのですか!?」

「塔です。塔に行きなさい」

 輿の中から人が現れる。ヨモギである。

 その姿はドレスを纏った少女のような、いや、少女そのもの。ヨモギはまだ年端もいかない少女だったのである。

「かあさま〜!」

 パトリシアはヨモギの足元に滑り込んだ。

「無理をなさらないでください。まったく、我らが父がロリのコンだったせいで、まだ10にも満たないかあさまがこんな辛い目に······」

「かあさま〜! ふがふが! ふがふが! かあさまの香り! 香り! スメル!」

 クラッテンハイムの魔法のおかげで地面は泥になっているが、気にもとめずにパトリシアはヨモギの足にまとわりついている。

「いいのですよパトリック。それより急ぎ塔に向かいなさい。あそこにあるモノを使うのです。わたくしがここに来たことですでに塔の封印は解けております」

「あそこにあるモノ? まさか!?」

「そう、伝説の鉄ーー」

「かあさま! パトリシアをなでなでしてくださいまし

! あぁ、かあさまスメル! スメルチ!」

「よせよパトリシア、話が進まない。あとスメルチは竜巻の意味だ、臭いとは関係ない」

「ホーロドニースメルチ!!」

 パトリシアはもうダメだった。年下の少女にバブみを感じてオギャる赤い人(アズナブル)発作が出ていた。

「わたくしにはわかります。あの鉄兵士が動いています。あれを使うのです」

「わかりました。ですがパトリシアがこのままでは。それに時間も······いや、ならば!」

 パトリックがサワキに向かって叫んだ。

「サワキ! 今から君を塔に向かって()()()!」

 すっ転んでいたサワキの耳にその声は届き、パトリックの方を見た瞬間、風の魔法によりルーシーがサワキの方へ吹き飛ばされ、ぶつかったルーシーごとサワキは塔の方へと吹き飛ばされた。

「にゃ、にゃにを〜······!!」

「すまないルーシー、サワキには魔法が効かないから」

「なにをするのか彼には伝わったのですか?」

「彼ならきっと」


(も、もういいだろうか·····?)

 さんざんイジられてきたクラッテンハイムは少しだけ空気を読んで魔法を発動せずにパトリック達の動きを待っていたのだった。


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