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第三十二話 伴出、口を塞がれる

「グブブブフフ·····」

 変異したクラッテンハイムの姿は石灰質な巨人に海藻が生えたような異様な姿であった。具体的にはバイオブロリーに苔が生えた感じだ。

 ズシンという足音がその重量を予感させる。

「なぜ私がいきなり変身したかわかるか? サワキバンデ」

 その声は人間であった時の声が加工されてスピーカーから発せられているかのようであった。

「わかるとも。戦闘描写は好きだが面倒な上にあんまり受けがよくなさそうだからだ。加えてそろそろ一つの事件を長引かせすぎているからだ。つまり、ここいらでそろそろ一つぐらい見せ場をつくっておこうという考えだな」

「サワキくん今すぐ黙るにゃ!!」

「サワキちゃんイケナイ!」

「サワキ殿おまえもう喋るな!」

「勇者よ、そういう現実的な理由を聞いているのではない·····」


 クラッテンハイムだったものは周囲を見渡しながら愉快そうにしている。

「ここでの用は済んでいる上にいらぬことを知っている者が多いようなのでな。まとめて消えてもらおうと思ってのことだ!」

 セルディーの兵たちは突如現れた怪物に大騒ぎし、逃げ出し始めていたが、すぐに足が止まっていた。見えない壁があってそれ以上進めないのだ。

「サジフのときと同じような結界か······! だが、規模は比べ物にならない! つまり、それだけ攻撃魔法も大規模だと予測できるな」

 一つの問題がそれであった。

「へへーん! サワキくんは魔法に対して高いアドがあるんですにゃよ! たとえ規模を大きくしたところでそんなものはーー」

「すまんミーシャ、たぶんめっっっっちゃまずい」

「あにゃ!?」

「理由は二つ。一つ目は魔法そのものには強くてもその余波で起こった現象には対処しきれないこと。二つ目は効果範囲。オレか剣の周辺しかかき消せない。つまり離れた場所や広い部分の防御や防衛には向かない」

「つまりそれは···」

「ピンチだよ!!」

「はにゃー!!」


 サワキとミーシャのやりとりを見て笑っているクラッテンハイムだったがそこに油断はなく、視覚に素早く回り込みその大戦斧を振り下ろすセイカを見落としてはいなかった。

 セイカは怪物化するクラッテンハイムに驚きもせず、冷静に、倒すための行動をとったのである。優秀な戦士である証拠だ。

 クラッテンハイムはそれに気づきながらあえて受けた。

「なんと·····!」

 クラッテンハイムの体はセイカの斧をただ体に乗っけただけだった。

「なにかの、層が!」

 驚くセイカをクラッテンハイムは笑う。

「高圧の魔力だよ」

 おそらくは熊をも倒したであろうセイカの一撃は、クラッテンハイムがただ腕を振るうだけで跳ね返されてしまった。

 クラッテンハイムはさらに見逃さなかった。セイカの反対をとって下から潜り込むサワキを。

「ヤーッ!」

 サワキの気合。

「グワーッ!」

 クラッテンハイムの悲鳴。

「ウソだろ······!」

 止まる刀。驚愕するサワキ。

「ああ、嘘だよ」

 嘲笑うクラッテンハイム。

「たしかに面白いな、オティの剣」

 クラッテンハイムが刀を掴む。サワキは引こうとしたが凄まじい力で動かそうにもびくともしない。

「たしかに魔力は貫通したがバリアと肉体にはまるで意味はなかったな。いくら魔法を切り裂こうが所詮はただの板切れ。こんなもので、その技量で、この『水葬』の名を持つ修正者(リバイス)はとれん」


ーードバアッ!ーー


 周囲一体への衝撃。

 一瞬のうちに大波がクラッテンハイムを中心に発生して周囲一体を押し流してしまった。


 サワキもセイカもクラッテンハイムに傷一つつけることができない。

 

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