第三十話 伴出、お利口と褒められる
「待て魔王! あ、これオレも動けんな」
「サワキくん! ボクの出番ではないですかな? マオ達を止めて目論見を吐かせますにゃ!」
「そうか! よし! ミーシャ出ます、ミーシャ······発進!」
「滅びゆくモノのために! って、にゃー、ボクはルーシーですにゃよサワキくーん」
「だっはは! こりゃ一本取られ申したな!」
「マオ達もういないんだよね、バカコンビ」
ホーリが呆れながらツッコむ。
「ねー、どうしよっか? フォア」
ザワッ!
空気が張り詰めた次の瞬間、サワキの首と目が周囲に走った。
近づいてくるのは大きな鎧の男。大きな盾をかまえ、大きな剣を抜き、振りかざしつつサワキに向かってきている。
「······ミーシャ、下がるんだ!」
サワキはせっかく取り押さえたホーリから手を離し、即座から駆け出した。
ルーシーも反応して反転するが、その動体視力でフォアと呼ばれた鎧が一瞬でその距離をつめるのを見た。
まずい。間に合わない。
しかし、サワキは魔法技術によってつくられた武具は通用しないはず。
だが、それを知っているサワキ自身が引いている。
十分に広さがとれると、サワキは刀を構えた。
サワキは逃げたわけではなかった。
直線に振り下ろされる敵の剣に向かって、同じように直線に構え、踏み込む。
ーーカシンッ!ーー
刃と刃が乾いた金属音を響かせる。しかし、しなやかな音は火花すら散らさずに流れていった。
サワキは刃同士が交差する瞬間に自分の刃の下に潜り込むように刀を背の方にまで回したのである。
その動きは敵の剣の道筋を作り、サワキに触れることなく空を切り抜いた。
「ほう、今のを流せるか」
フォアのくぐもった声。
「本来ならば我が剣を受け流した後そのカタナを即座に突き出せば喉を狙えたはず」
少しだけフォアの声に嘲りが混じった。
「それをしなかったのは優しさでも油断でもない。単純に実力だ」
「うーん······まずい」
「サワキくん!」
サワキが牽制しつつ下がる。
「さあ、どこまでもつかな?」
フォアがまたしても剣を振り上げた瞬間、フォアとサワキの間に入りこむ巨大な影があった。
バコンともなんともいえない鈍いが響く金属音とともにフォアの剣がフォアごとふっとばされた。
「ミーを忘れられたら困るんだヨネ」
巨大な斧をふりかざし、セイカが参じた。
「セイカさん!」
「こっちは僕たちにまかせてくれサワキ殿!」
声の方を見てみると、シンとムツの二人は双子とともにヨモギがいる輿のところへ向かっていた。
「ラストファイターの二人!」
「仲間が揃いましたにゃ! これで形勢逆転ですにゃ!」
ミーシャの発言にフォアはクスクスと笑った。肩を大きく揺らし、兜の前に手を持ってきている。
「サワキくん、あのアーマー野郎、顔も表情も見えにゃいですけど動きは雄弁ですにゃよ!」
「高岩成二さんが中に入ってるかのようだぁ(恍惚)」
「逆転ね······たしかに力だけはあるようだなセイカ=サンジオー。だが·····」
例の少女、ホーリがフォアの横についた。
「ホーリのことも忘れられたら困るんだよね」
さきほどの攻撃力を見るに、このホーリを好き放題させるわけにはいかない。
「私もいることもな」
モジャモジャ頭のクラレンスがさらに寄ってくる。いや、フォアやホーリとは少し距離があった。心の距離である。
「たしかに、あまり逆転とは言えないかもな」
人数では味方が上回っている。状況もこちらが敵を囲っている状態だ。セルディーの兵士もいる。しかし、正直なところ戦力は敵の方が上だと予想せざるを得なかった。
「フフン、なかなか利口なんだね勇者オティ。我ら『キルタイムコミュニケーション』の力を存分に思い知るがいいんだよね!」
「······それが組織名なら変えたほうがいいぞ」
「なぜ?」
「えっちな本を出している出版社の名前だからだ!」
「え、なにそれは」
「ほれみろ、やはりマオの言っていた通り『コミックアンリアル』にしておけばよかったのだ」
「同じだ同じ! KTCが出してる雑誌名だそれ! コミックって言ってしまってるだろうが!」
「ちなみにKTC社さんはリアタイ勢の多くが読んだと言われるポケットモンス○ーを遊びつくす本を出した会社さんらしいですにゃ」




