第二十八話 伴出、危うかった
多勢に無勢だった状況は今度は敵側のものとなった。しかし今真にピンチなのはこの作品だ。またしても間延びしてしまっているからだ!
「どうするんだい? 教会の密使であるクラレンス様?」
刺青の女がいやらしく質問する。
「くうぅ······もういい、やれ」
クラレンスは塔を指さした。
「いいの? 加減とかわかんないけど」
少女が国をかしげた。
「いい! やれ!」
クラレンスは多少苛立ちながら命令をくだした。
少女はふわりと両手をあげる。まったく力みもなく、まるで構えには見えない。
「······みんな下がるんだ!」
サワキは強く叫んだ。
サワキは態度よりもはるかに強く敵を警戒していた。このアリイアという世界には攻撃用の魔法があったし、敵達からはあの『修正者』なる存在の気配がしている。そして、『修正者』の一人である土葬のサジフを思い返すに、この者達の力は大規模な影響を起こすものであると想像するべきだったからだ。
「自分達はここを死守します!」
サワキの後ろにいる少年騎士達が構える。
兵士達もだ。
セイカ達はさらに遠くにいて近づけない。
少女の開いた手、指先がなにかに触れようとしていかのように伸びる。
「伏せろー!」
サワキは刀を抜きつつ両手を大きく広げると、そのまま駆け出した。
その場の全員がサワキがなにをしようとしているのか勘違いした。サワキがいきなり突撃したと思ったのだ。
しかし実際にはその反対だった。サワキは守るために飛び出したのである。
サワキが駆け出した後、少女の指から閃光がほとばしった。
ミシンのような音を何重にも響かせながら光の玉が塔のある方向にメチャクチャにばら撒かれる。その光弾の量ときたら、とても数えられるようなものではなかった。
皆呆気にとられて動けなかった。
その弾は塔だけでなく、その前に陣取る騎士達の方にまで広がり、さらにはひらひらと動かされた手が今度は少女の後ろにいるセルディー兵士にも向けられようとした。
しかし、そこで少女は止まった。
サワキが少女の前に立ち、その手を掴んだからだ。
光弾が着弾したところから煙があがっている。まるで小規模な爆発を起こしたかのようであった。少女の前方ほぼすべての角度、目に見える遠くの方まで万遍なく煙があった。
サワキの後ろからうろたえた声が聞こえる。
「あ、危なかった······」
少女の放った光弾が魔力によるものでなければ今頃サワキは蜂の巣である。また、幸いにもサワキの反応が早かったため、発射角の一部を潰し、騎士達を守ることができた。
「どういうことだい? なにが起こった?」
「なんだ? なぜ生きてる?」
困惑する敵の二人。
「そいつに魔法は効かないマオ!!」
唐突に聞こえる声。塔の方からだ。
ボロボロの塔からざあっという音とともになにかが降りてきた。
「こいつが勇者オティだマオ」
胡散臭いローブが特徴の謎の存在、マオのご登場だ。




