第二十三話 伴出、説明される
「というわけなんだ」
ムツとシンが言うには、このルプス山麓の道の、さらに獣道と呼べるような裏道を数人の集団が歩いていたという。コンデイトに向かって、である。
人数は三人。
小柄な少女、体にタトゥーを入れた女性、そして鎧男。
「『土葬』の仲間だとすると、四天王と数は合ってますにゃ」
「全員でお出ましか、よっぽどのことがあるな……」
「ミーが思うにこの場合鎧男は『火葬』だろうネ、堂々とした戦いをするんだ」
「いーや『火葬』は女の人ですにゃ、姉御肌な感じのやつですにゃ」
「オレが思うにきっとその鎧男には特殊な事情があるに違いない、姿を隠すためだな」
「サワキ殿はそういうの考えるの得意そうだ」
「どういう意味だよ」
「試しにやってみてくれよサワキ殿」
「えーと……鎧の奴の名前はノア・エリゾチック・古雅宮。世にも珍しい純粋な空間使い。天翼学園の超法生徒会部に巻き込まれる形で入部させらされる。普段は実力を隠しておりCクラス相当の理力しかないが、怒ったときには古代理術を扱え会長ミユキをも超える力を発揮する。ダグラスの呪いにより本気で理術を使うときには髪も瞳も赤く染まる。このときの通称『赤い魔刃』の姿は理術マフィアの中で半ば伝説となっている。普段はそっけないが実は心の底では仲間のことを誰より大切に思っている。香りマニアのため女の子の使っているシャンプーを当てる特技を持っており、それでたびたび変態扱いされる。ハーフで端整な顔立ちをしておりかなりモテるが自覚はない(汗)」
「キリー○ザブラッドの取説ぐらいアイタタですにゃ」
「この世で一番ダサいマニュアルやん」
「あのスタッフ紹介は一見の価値アリですにゃ」
「三人……待てよ、確か情報によると、シノファリオからやってくるのは」
謎会話で盛り上がるサワキ達を無視してパトリックが思案し、パトリシアを見た。
「鉄兵士を入れて三人だったはず!?」
パトリシアが叫ぶ。
「……サワキ殿、どうやらつくづく貴方は『勇者』のようで」
「なんの因果か知らないけど、なにかはあるのかもな」
「サワキ殿、僕達も――」
「いや、二人は仕事を続けてくれ。君達には仲間がいる。二人はその仲間達のために頑張るんだ」
そう言うとサワキは立ちあった。
セルディーの双子は顔を合わせる。夜の空を背景に、焚き火に照らし出されたサワキの姿に何かを感じたのだ。
サワキは腰につけていたナイフを取り外すとムツとシンに差し出す。
「ずっと借りてたやつ、返すよ」
ムツとシンは少し笑うとそれをサワキに押し返した。
「持っていってくれ」
「僕達の代わりにね」
「そいつはボロボロだけどいいナイフだよ。今ではもう見ない輝石でできてる」
「そんな貴重品なら余計に――」
「なるほどオティの伝説ですにゃ!」
猫が納得したように叫ぶ。
「『太陽の剣』か」
セイカも納得したように呟いた。
「輝石でできた剣。『永遠の凍てつき』に封印してあるというあの剣。オティの持つもう一つの剣だね」
「かつて勇者が神より授かったという消えない灼熱を秘めたあの剣」
セルディー兄弟も興味深そうに話している。
「なるほど」
サワキもまた一つ頷くと全員に告げた。
「説明乙!」
ともかく、行く先は決まった。
* * *
夜のコンデイトは静寂に満ちていた。
それらがはじめ街に近づいたとき、誰も何も思わなかった。
コンデイトはかつては城砦化されていた都市であったのだが、今ではもうその名残を残すのみである。まさかこの時代に敵が攻めてくるとは誰も思っていないのだ。
その敵なるものが目指すのはまさにその砦の中心であって、さらにそれを手引きする者がいる。強襲作戦であり、抵抗の無いこれも火種には変わりはない。
「待っていたぞ」
もじゃもじゃ頭のクラッテンハイムが三人を迎え入れた。
「約束より三時間も遅い、なにをやっていた」
クラッテンハイムの眉間にシワが寄っている。
三人は誰も何も答えようとはしなかった。
「なんとか言ったらどうなんだ?」
「我々が何人も集まらねばならないようなことか?」
ようやくタトゥーの女がつまらなさげに言い放った。大きな目は死んだように暗い。
「別に私の望んだことではない」
「そうかいそうかい、じゃあ協力はしないから勝手にやりな」
「いや、待ってくれ」
「イヤイヤなんだろう?」
鎧男が機械音声のようなくぐもった声でクラッテンハイムに言葉を投げた。
「イヤイヤとは言っていない」
「こっちはイヤイヤだよ」
鎧男が遠くにうっすらと影になって見えている砦を指差すと、二人はクラッテンハイムを置いてきぼりにして歩きだした。
「あんたさぁ、嫌われてんだね。あの二人ここに来るまでにずっとあんたの悪口言ってたよ!」
金髪ボブに大きな緑の目、かわいらしい小柄な少女は満面の笑みでクラッテンハイムにそう告げると、先行する二人に追い付こうと元気よく駆け出す。
「……」
クラッテンハイムは想像以上に嫌われていた。溢れる嘔気をおさえてクラッテンハイムも歩きだした。




