第二十二話 伴出、嫌がる
「僕達のってことはもう一体あると? 話を聞いている限りだと貴重で強力な兵器のようだけど」
「そう。セルディー家にはかつて勇者オティと共に死王ゴルフィクスと戦ったという伝説の鉄兵士ビッキーが納められている」
「ズームイン朝で英会話してた人?」
「それはウィッキーさんですにゃ」
「オティが名付けたのか誰が名付けたのかは知りませんがあれにはヴィクトリア・クリスタルという名前がつけられているのです。通称でビッキーなのですわ」
「綺麗な名前だな」
「ええ、兵器には勿体無いくらい」
ころころと笑うパトリシア。
「問題はなぜそんなものを狙うのか、ですにぇ。すでにシノファリオは独自の鉄兵士を所有しているんですにゃ? わざわざぶつける意味がわかりませんにゃ」
「そうだなぁ。でももう二人のご子息は見つかったんだし、いくらオティに繋がってるからってそんな危険な兵器には関わりたくないなぁ」
「あら、そちらの方はオティを辿って……? では教会の?」
「あぁ、サワキちゃんは――」
セイカがサワキの身の上を話そうとしたとき、二つの人影が暗闇を潜り出てきた。
「らしくないなサワキ殿」
「君がそんな悪党に及び腰になるなんて」
一瞬身構えるも、その声には聞き覚えがあった。
「おお、ラストハルマゲドンのお二人じゃないか! 一週間ぶりぐらい?」
「名前が違いますにゃラッシング・ビート乱ですにゃ」
「ラストファイターツインだよ猫ちゃん」
「セイカ・サンジオー様、以前はご無礼をいたしました」
ムツとシン、共に『土葬』と戦った仲間との早い再開であった。
・ ・ ・
「ではもう開拓の仕事を?」
「ああ、それで、この辺りでは評判のルプス周辺の道を視ておこうと思ってさ」
「この地域では一番手間取りそうだろ?」
「それでね、実はここに来るまでになにやら不穏な空気を纏った奴がいたんだよね、まさかと思っていたら君たちがいたんだ」
「不穏な空気?」
「ああ、不気味な気配だ……あの『土葬』のような」
「リバイスとかいう奴ですにゃ!」
「サワキ殿言ってたよな? 他にも似たようなのが三人ほどいるはずだって」
「それで伝えにきたってわけさ。偶然とは恐ろしいもので、これも勇者の宿命かな?」
「いやオレのこと買いかぶりすぎだって、ただの高校生さ」
「ただのどころか薄毛、少年趣味、風俗通いの三重苦ですにゃ」
「最悪だね、それでも勇者なのかい?」
「恥を知れケダモノ」
「誉めるのか貶すのかどっちだよ!」
「あのー、サワキさん? あなたが勇者とはどういう意味なのでしょうか? オティとご関係が? セイカとはどういったお知り合いなのですか?」
「パトリシア様ご心配なく、ミーはこのようなみすぼらしい男にはこれっぽっちも興味は」
「そういう意味ではありません」
「おそれながら説明させていただきますにゃパトリシア様パトリック様。こちらにいるボクの飼い主サワキ・バンデこそ! かの勇者オティを継ぐものですのにゃ!」
「なんですって!」
「なんと! あの勇者オティ!?」
「サワキ様、本当ですか?」
「あー、その話は後にして、先にムツ&シンが見た怪しい奴の話を聞いていいかな?」
「それでいいのかい? じゃあ、ほんの少し前のことだ――」
「あ、回想入るんだ」
* * *
「冷えるなこの辺は……」
「これが誰も通らない理由だね、特にこの裏道は夜にもなると氷点下だってある」
「これは大仕事だぞ、切り開くにしたって手がかじかんでまともに動かない」
「そうだね。でもシン、ほら、こうすれば」
「あ……」
「ほら、あったかい」
「ムツ……」
「シンの手は力強いね」
「お前の手はシルクのように柔らかな手触りだな。でもここは……」
「んっ!」
「やっぱりこんなにカチカチになってる」
「これはシンが」
「まだなにもしてないだろ? かわいそうに、こんなに唇が乾燥して」
「じゃあ、シンが潤わせて? 唇」
「ムツはおねだり上手――
* * *
「ちょっと待ってくれ! 何の話を聞かされてるんだいミー達は!」
「しっ! 今いいとこだったですにゃ!」
「これはシン×ムツ?」
「サワキ君甘いですにゃ、これもムツ×シンですにゃ」
「難しいな」
「すみませんご肝心なところだけ聞かせていただけませんでしょうか? 私達の家がかかっていまして、すみません」
「ああ、すまんすまん」
「実は――」




