第二十話 伴出、双頭竜を討つ
「……にゃあっ!!」
セイカに指摘されて木々の間を見ていたルーシーの体が跳ねた。
毛を逆立てて威嚇のポーズを見せている。
「ミーシャ!」
「誰かいますにゃ! すごい奴が!」
「パーたん!?」
「……!」
セイカが背負った巨大な斧を引き抜いた。敵の強さを認識したからである。
こちらが臨戦態勢に入ったことを理解したのか木の間に潜んだそれが急激に動き出した。
「う!」
敵は速いなどというものではなかった。地面を抉りかねないほどの威力を持った移動である。
「サワキくん後ろですにゃ!」
鞘ごと刀を抜き後ろに向け緊急の警戒を見せるサワキをあざ笑うかのごとくそれは動く。
「双頭竜……いや、これは!」
その正体に気づくのとほぼ同時に攻撃はきた。
サワキの横を抜け撫でるように繰り出された得物。かろうじて防いだサワキだったが、防いだはずの攻撃がサワキの体を裂いていた。
「いってえ!」
腕や手に細かな傷が線状に刻まれる。
「ちくしょう気をつけろ! こいつら人だ! 二人いるぞ!」
それはモンスターではなかった、人間二人による挟撃を受けていたのである。
「これは……!」
セイカの巨大な斧が振るわれると相手には当たらなかったがその後ろにある木の一、二本が砕けて折れた。怪力などという表現では生ぬるい筋力である。
セイカの斧は特別製で、柄の部分まで同じ金属でできた一体形成構造である。
本来これは良くない。斧やハンマーのような叩きつける道具の柄の硬度が高すぎると強度が高くともそれを扱う腕がもたないのである。しかしセイカの体はびくともしなかった。単純な話、セイカの腕はその辺の木の幹数本よりも頑丈だということである。
「攻撃が離れた場所に飛んでくる、魔法じゃないのか? なんとかエアっていうのがあるとかないとか」
「それならサワキ君にはきかないはずですにゃ」
「この攻撃には心当たりがあるネ」
セイカは斧の向きと構えを変えると、敵の方へ突撃しながら月明かりを反射して鈍く光る金属の塊が勢いよく地面に振り下ろした。
次の瞬間地面が炸裂し、その破片が斧と同時に繰りだされた。
「さっきの攻撃には高速で飛ぶ砂利が混じっていたんですにゃ」
「なるほど……いや、どんな筋力で武器を振ればそうなるんだ?」
「にゃっ、セイカさんの一撃で二人との距離を離せましたにゃ、これで正面から戦えますですにゃ!」
正面衝突の準備ができていたが、戦いはそこで終わることになった。
「まだ威力が足りませんナ、お二人」
セイカが二人に話しかけだした。
セイカの声に二人が反応しているらしく、武器をおさめてこっちをうかがいだした。
「まさかサンジオーなのですか?」
「はい、ミーです。セイカ・サンジオーです。レベル100の双頭竜パーたん、そういうことでしたカ」
・ ・ ・
少しして火を囲みながら、サワキ達は先ほどの二人組みと話をしていた。
「えーと、つまりどゆこと?」
目の前のストロベリーブロンドの二人の少年少女はいかにも気品のいい雰囲気を漂わせていた。
「このお二人こそがセルディーのお子さんですにゃ、行方不明のお子さんは二人だったんですにゃ」
「そういやそんな話してたような、それで双頭竜か。じゃあ、レベル100ってのは?」
「パトリックおぼっちゃんはレベル50、パトリシア嬢もレベル50、あわせてレベル100ってことサ」
「へー、ずいぶん高いんだな」
「二人は才能があるからネ」
「ちなみにセイカさんのレベルは?」
「27」
「へ、二人のが高いのか」
「ミーは成長が遅いタイプでネ」
「セイカさんはハーフエルフですからにゃ、長寿はそういう傾向があるんですにゃ」
「ちなみステータスは?」
「ハハハ、サワキちゃん、ゲームじゃないんだからそんなステータスなんてわかるわけないじゃないか」
「まったく、現実にそんなのあるわけありませんにゃ」
「レベル! 魔王! モンスター! 魔法!」
セルディーの二人を無視して話し続ける三人は、レベルがとかステータスはともかく疑いようも無いコミュ力弱者なのであった。




