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第十八話 伴出、バレる

 サワキが例の怪しい店に入って約一時間、再び姿を現した頃にはもうすっかり日が落ちていた。

 サワキはどこかふっきれたような絶妙な様子であったが、どうやら進展はなかったようである。

 そんななにやらおかしな様子のサワキの前にある人間がどこからともなく現れた。

「ハロハロー、お困りのようで」

「おまえは……留美子!」

「異巫女だよ」

「なんでこんなとこに? それよりあんな風にいきなり送り込みやがって! さっさとあの薄汚い路地裏に帰れ! しっしっ!」

「困ってるかなと思って出てきてあげたのにひどい言いようね」

「オレは忙しいんだよ」

「どこ行こってたの?」

「情報収集」

「ウソこけ、私ずっと見てたんだから」

「……なんの用だ」

「聞いてくれる気になった? サボリ勇者様」

「勇者はみんなの勘違いだし、聞き込みしようにもオレアリイアのこと全然わかんねーんだもん、仕方ないじゃんか」

「どうせそんなこったろーと思ったから、このコンデイトで噂されている情報持ってきてあげたわよ、セルディー関係の」

「ほう」

「セルディーのお子の居場所はもうつかんでる? 北ルプス山の麓のここ」

「地図があるのか、助かる」

「その場所ってなにもないんだけど、ヨモギ・セルディーの実家であるシノファリオ家から直通で兵を送り込んでこれる大きな道なのよね」

「なるほど匂うな、なにか企んでるのか」

「そんで、それがただ捕まってるだけじゃないらしいのよ、モンスターが番をしてるって話」

「え、この世界って普通にモンスターとかいるの? たしかに『土葬』とか魔物に変身しそうだったけど、野良もいるのかよ」

「驚かないでよ? なんとそのモンスターは"パーたん"って噂なのよ」

「はあ?」

「だから"パーたん"」

「大山法善のこと?」

「それはパーやんでしょ、パーマン4号の本名なんて誰も知らないわよ」

「パーやんはジャイアンとのエロ同人もある(ごく一部で)人気のキャラなんだぞ」

「ねえ、その知識を披露された私はどう反応すればいいの?」

「とにかくその"パーたん"を倒せばいいってことだな! なにせ"パーたん"だからな! これは楽勝! ガハハ!」

「セルディーに関われば勇者オティへと繋がる、それは自然と賢者へと繋がることにもなるはずよ。まあ頑張って。じゃあこれで――」

「ちょっと待てよ。聞きたいんだけど、オレはどうやったらもとの世界帰れるの?」

「願いを叶えたら迎えにきたげるけど」

「たまには帰りたいんだけど」

「えー、あんたのせいで勇者オティが現れたってアリイア中に噂が流れ始めてるんだからそっちも解決してよ」

「なんでよ! オレは頭皮を緑化できればそれでいいんだって! 賢者様見つけられればそれでいいの!」

「魔王復活が本当ならそれをどのみちそれをなんとかするために賢者を探す必要もあるのよね、ついでにやってちょうだいよ」

「なんでそんな危ないことしなきゃならんのだよ、それにあのマオアホそうだったからほっといていいだろ」

「え、もう会ったの? 魔王と?」

「ああ、『土葬』と戦った後に現れたよあいつ。たぶんロリおば属性だなあれは」

「ふーん。じゃあやっぱりもうちょっと魔王の対応も兼ねてちょうだいよ。当座はパーたん退治ね、じゃあシクヨロー」

「ちょ待てよ!」

 去ろうとする異巫女を止めようとしたが、サワキの腕はその体をすっと通り抜けてしまうのだった。


 ・ ・ ・ 


「あのー、志村さん」

「なに? いや、誰が昔の志村康徳(やすのり)だよ!」

「志村けんさんのこと本名で呼ぶのサワキ君だけですにゃ」

 宿でルーシーと合流したサワキは持ち帰った情報を交換していた。

 ルーシーも集められた情報は断片的だったようだが、異巫女の情報と照らし合わせるとやはりモンスターがいると見て間違いなく、そこはルプス山を迂回した先にあるシノファリオ家のある土地、ツサ領との数少ない通り道であるらしかった。

「本当にパーたん討伐引き受けるんですか? やめときましょうよぉ」

「なんでよ」

「だってえ」

「セルディーを辿れば賢者につながるってイミちゃんが言ってたんだよ、俺には必要なんだって」

「誰ですかイミちゃんって……でもでも! 相手は()()パーたんなんですよ!」

「あれ? ()()?」

「え、まさかサワキ君、パーたんがどんな魔物かわかってなかったんですか……?」

「いや、だって、パーたんだぜ? 強いわけないじゃん。魔王とも無関係そうだったし」

「にゃ、ボクだって噂で聞いた程度ですけど。でもでも、魔王すらも手出しできないほどだってことかもしれませんよ」

「どうせ正体はパンプキンヘッド(1988年)とかでしょ」

「パンプキンヘッドでも十分危険かと……違いますよ! 超進化モンスター・双頭竜ギガメギドドラゴンLv100のことですよ!」

「……なにそれ。アリイアってレベルとかある世界観だったの?」

「ありますよそりゃ、世界観のモデルはFFタクティクスなんですから。テロリストに盗賊に強力なモンスターよりどりみどりですよ」

「意外に殺伐としてんなぁ……ちなみにどれくらい強いの?」

「あくまで予想ですが、サワキ君の強さを『YAWARA!』の猪熊(いのくま)(やわら)ちゃんぐらいだとしたら――」

「わかりにくいけど結構高く見積もってくれてるな。じゃあ、パーたんは範馬勇次郎ぐらい?」

「いいえ、キングジェイダーぐらいかと」

「カテゴリーぐらい合わせろや! そんなん一秒で柔ちゃんミンチやんけ!」

「だいたいサワキ君は……ん? なんか匂いますにゃ」

「なんだよ」

「クンクン」

「口でクンクンって言うなよ」

「……サワキ君」

「なんだよ」

「遊廓に行ってきましたにぇ!」

「……なんのことかな?」

「フケツですにゃ! フケツですにゃ!」

「うるせえな! せっかく異世界に来たんだから気兼ねなくお姉さま方とウフフなことしたかろうよ!! こちとら思春期やぞ、夢を叶えてなにが悪い!!!」

「そんなことのためにセイカさんは資金をくれたわけじゃありませんにゃ!」

「戦を前に身を清めるのも戦士の(たしな)みなの!」

「まったくそんなことなら装備の一つでも整えるべきですにゃ。サワキ君は誉れ高いオティの剣を振るう勇者なのですよ、自覚を持つべきですにゃ。それでこそーー」

 サワキを正座させ、まるで教師のようにその前をつかつか歩くルーシー。

 そのルーシーからヒラリと落ちるものがあった。

 拾って見てみるとどうやら領収書である。

 お酒らしき名前がずらり並んでいる。商品名も値段も手書き。ただの晩酌でこんなレシートが出ることはないだろう。

「ミーシャ」

「だからボクの名前はルーシーだと何度も……!」

「ホスト行ってたろ」

「……」

「…………」

「さ、もう寝ますにゃ」

「ミーシャのフケツ! ダニまみれ! 毛玉吐き!」

「にゃんですと! やりますかこのー!」

 二人がそんな感じで一晩中不毛な争いを続けていたので、宿屋の店主は二人が出る時に「昨晩はお楽しみでしたね」というテンプレを言っていいものか迷ったという。 

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