第十六話 伴出、はやりたい
「そこまでエルフのイメージに違いがあるとはなぁ」
「全然違いますにゃ、時祭イヴと風祭真ぐらい違いますにゃ」
「片方ザ・フライ2二世誕生(1989年)と入れ替えても違和感ないほどのクリーチャーじゃないか」
「フシャー! シンは立派なヒーローですにゃ! バカにするのは許しませんですにゃ!」
「お、怒るなら比較に出すなよ……」
「おや、見えてきたヨお二人さん」
ムツとシンから別れてから三人は街道を何事もなく進み、ついにはコンデイトの町に到着していた。さらには町の探索などする時間もなく、サワキと猫はセルディーのお屋敷にまで連れてこられていた。
なにか立て込んでいるということだったのでやや拍子抜けしたサワキだったが、問題はセルディー家そのものにあると見た方がいいのだろう。
「まぁ、セイカ様だわ。最近ご無沙汰だったわね……」
「相変わらずの美形だわ……」
「素敵……」
「セイカ様お相手してくださらないかしら……」
招かれているゲストなのか家の者なのかはわからないが女性陣がざわついている。サワキとルーシーは目に入らないらしい。
我が物顔でずんずん屋敷を進むセイカに付いていくと、一人の男が立ちはだかった。
「おや、セイカ・サンジオー様」
「……やあクラッテンハイム殿」
「どうして当屋敷へ?」
「武芸指南役が来てはおかしいかナ?」
「いいえ。しかしご存知かとは思いますが現在……」
「ご令息ご令嬢が行方不明なのは知っているヨ。ただ、ここには他にも弟子がいるのデネ」
「左様で。ただ、申し訳ないのですがただいま奥様のお加減が優れません、くれぐれも騒ぎ立てないようお願いいたします。たとえばどこの馬の骨とも知らない人間を連れ込んだりするような真似はお控えくださいませね」
男の目がサワキの方を向く。
「ああ、そうしよう。それはここにいる最も約束された違賢もわきまえておられるよ」
どうやら紹介されたらしいのでとりあえず頭を下げる二人だった。
「ふん、失礼」
ソバージュというかパーマというか、とにかくモジャモジャした長い髪をかきあげると、男はその場から立ち去った。
「今の男を覚えておいてくれ。クラレンス・クラッテンハイム、現在のセルディーを実質的にまとめているセルディー子爵夫人のその側近ダヨ」
「すげえ髪だったな、ラーメン通り越してビリー・ジョエルみたいじゃないか、羨ましい」
「ビリー・ジョエル、またの名を歌手版シルベスタ・スタローンですにゃ」
「若い頃はスタローンで老いてからはアンソニー・ホプキンスだぞ、一粒で二度美味しい」
「君たちhonestyが足りないんじゃないカナ」
「そもそもオネスティってどういう意味ですかにゃ、オネショタの亜種?」
「誠意って意味だ」
「サワキちゃん意外に物知りだよネ、アカデミーにでも通っていたのかい?」
「まぁ、高校に」
「コーコー?」
「えーと、俺と同じぐらいの生徒がたくさんいる学校で……」
「コーコーはカッパの魔窟、ちぃ覚えた」
「覚えるな」
・ ・ ・
「セイカ先生!」
その部屋には何人かの騎士がいた。誰もまだ年若い。
「賊にさらわれたと聞いておりましたが、よくぞご無事で!」
「うむ。だがあの程度どうということはない。ついでにあそこはもう盗賊の心配もない」
「おお、さすがセイカ先生……!」
サワキと猫の視線を感じてセイカが慌てて若人達を紹介する。
「かれらはこのセルディーに仕えている騎士見習い達だ」
「はじめまして、沢木伴出です」
「ルーシーですにゃ」
一列に並んだ見習い騎士達が立派に挨拶をしてみせた。
「さっきクラッテンハイムとの話を聞いただろうけど、今このセルディーは世継ぎ問題が出ている」
「ミーシャ! やっぱり貴族の少年というのはキラキラしているな!」
「なに興奮してるんですかにゃキモチワルイ。あとボクはルーシーですにゃ」
「ショット・セルディーが逝去された後その子息がその後を継ぐことになっていたのだけれど、後妻であるヨモギ・セルディーが権力を掌握しようとしはじめたんだヨネ」
「だいたいお屋敷に入ってからずっとそわそわしてまるでおのぼりさんですにゃ、恥ずかしいですにゃ」
「いいだろ別に」
「それでも勇者オティですかにゃ」
「普段こんな豪華な家什見ないんだから仕方ないだろ」
「そしてご子息はある日行方不明となった。その裏にヨモギ夫人が関わっているであろうことは想像にかたくないのサ」
「そんなんだから、昔、最近てっきり見なくなったエロ本自販機でえっちっちなビデオだとおもって買ったのがアダルトグッズでさすがに使い方もよくわからず困惑しただけで五千円近く無駄にするんですにゃ」
「なんでんなこと知ってるんだよ!」
「ン"ーーー! ガゴゴッ! ガッ! ってすげー音して嫌がらせかと怒り心頭だったですにゃ」
「そして、ヨモギ夫人は自身の実家であるシノファリオ家から大量の人員を呼び寄せようとしている。実質の乗っ取りだ。ミーもこの子らもそれを防ぎたいと思っている」
「なんだよ今日はやけに絡むな! 自分のことを『宇崎ちゃんは遊びたい』の宇崎花ちゃんのライバルかなんかだと思ってんじゃないの!?」
「な! お、思ってたらなんだってんですにゃ!」
「図星かよ! ライバルになれるわけねーだろ! 向こうは飛ぶ鳥落とす勢いの人気キャラだぞ!」
「同じショートヘアーですにゃ!」
「向こうはオッパイバインバインだけどおまえクッソペチャパイだぞ」
「でもでも! ボクにはネコ耳ネコ尻尾がありますにゃ! 潜在能力は五分のはずですにゃ!」
「なにが五分だ、絵すらついてねえ分際で笑っちゃうんだよね!」
「そんなのお互いさまですにゃ! サワキ君だって向こうの先輩に比べたら女性人気出る要素ゼロですにゃ! 男人気も出ませんにゃ! そもそもこの小説自体が人気ありませんにゃ!」
「おう書いてる奴にダイレクトアタックするのやめろや」
「とにかく、ボクは宇崎ちゃんの非公式ライバルなのですにゃ!」
「そんなら俺だって八神庵の非公式ライバルキャラ名乗るかんな!」
「フシャーー! いおりんを侮辱するのは今すぐやめるにゃ!」
「二人とも聞いてる?」
不人気小説(半ギレ)の不人気キャラ二人(嘲笑)が醜い言い争いをしている中、セイカをはじめとしたこの見習い騎士達の目的が明らかとなった。つまり、セルディー家乗っ取りを目論む狐の退治である。
そして、どうやらセイカはサワキに協力してもらいたいようだ。




