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第十五話 伴出、夢砕かれる

「なんちゅう筋力だ……」

「ああ、ミーにはちょっとあってネ」

 セイカが髪をかき上げて耳を見せる。その耳はとがっていた。

「あ、その耳は」

「まさか」

「エルフ耳?」

「ナイショだよ、ミーはハーフエルフなのさ」

 セイカの告白に静まり返る四人。

「ど、どうりでそんなばかでかい斧を」

「ま、まさかハーフエルフとはな」

「サジフも怖いもの知らずだね」

「フフフ、これは極秘で頼むよ? なにしろサンジオー家にも関わることだからネ。まぁミーは気にしないんだけど」

「いやいやいや! エルフだぞ? なんでこんな怪力を?」

「な、なにがですかにゃサワキ君」

「だってエルフだぞ?」

「え、ええ」

「エルフといえば清楚で美形で華奢で優しい、まさに女神のはずじゃないか!」

「はい?」

「え?」

「せ、清楚? 華奢?」

「そうだよ、それでもって儚くて悪い村人とかに捕まってR18なことされちゃってウヒョーなんだよ」

「あ、あぁ、チキューではそんなイメージなんですかにゃ」

「え?」

「この辺では真逆の評判ですにゃ。粗暴で粗野で大酒のみ、女エルフはオークの少年をさらっては慰み物にしていたぶる極悪非道の怪力淫乱チ〇ポヤクザというイメージですにゃ」

「……マジ?」」

「インキュバスが女エルフを見たら逃げ出すぐらいですにゃ」

 他の二人も無言で頷いており、シンにいたってはムツを庇うかのようにその前に出ているほどである。

「い、いやいやいやそれはあくまでイメージでしかなくて……」

「……ありがとうサワキちゃん。でも、たしかにエルフのイメージはよろしくない。だがわかってほしい、すべてのエルフがそんなオークイーターではないということを」

「ほらな!」

「まぁミーもそういうエルフ的特性がないわけではないけど」

 セイカはそう言って薄く笑う。

「でもね?」

「な、なんですかにゃ……」

 ルーシーに迫るセイカ。なにかハッとするムツ。

「猫ちゃん逃げるんだ!」

 ムツの忠告が出る前にルーシーは壁に押し付けられていた、いわゆる壁ドンだ。

「ミーの対象はキミみたいなかわいい子猫ちゃんだよルーシー」

「ひいぃぃ!」

 そこだけ花が一面に咲きほこりそうな雰囲気の中、ホッとするムツとシン、呆然とするサワキ。

「や、やめてくださいニャー!」

「なにやらショックだったようだねサワキ殿」

「ま、まぁな」

「それにしても、ありがとう、サワキ殿」

「なにが?」

「我々を庇ってくれたじゃないか」

「ああ、いやいや」

「いつ知ったんだ? 俺達のこと」

「ん?」

「我々がただの行く宛のない集団だということ」

「あー、知っていたというか、わかったのさ」

「わかった?」

「相棒のために自分の危険を省みずに命ごいをするような奴が悪党なわけないだろう?」

「……そうか」

「そうさ」

「変われるかな? 僕達は」

「変われるさ。それにさ、お礼を言うのはこっちの方だよ」

「?」

「オレの手助けをしてくれただろ? もう変わってるんだよ、二人とも」

「そうか」

「そうさ」

「……じゃあ」

「あぁ、ここでお別れだな」

「おやおや、意外にモサモサしているね、子猫ちゃん?」

「そ、それ以上はダメですにゃあ!!」」

「おっと助けてやらないと色々な意味でミーシャが食べられちまう!」

「そうだった! あの怪力だから注意しろよ!」

「セイカさん! その辺で猫ちゃんを離してあげてくれ!」


 ・ ・ ・ 


「ここを下れば街道に戻れる。コンデイトまではまぁ少しあるが言っている間に到着するよ」

「セイカさんによるとまだなにかあるらしいから、気を付けてな」

「見送りありがとう、ここまでで大丈夫だ」

「苦しゅうないヨ」

「色々とありがとうございましたにゃ!」

 旅立つ三人が景色に消えていくのをムツとシンはいつまでも守っていた。

 二人にはやることが沢山ある。これから運送屋を行う方針を皆に伝え、計画し、行動に移さなければならない。これは償いでもあるのだ。

「なあムツ」

「なんだい?」

「どうしてサワキ殿は我々を信じてくれたのだろうな」

「うーん」

「我々は悪名高い盗賊だ、普通はそうはいかない」

「異世界から来たから?」

「勇者オティ、か」

「そう。危機感がなかったり無責任なだけって」

「それ、本心か?」

「……いいや」

「そう、かつての勇者オティは盗賊退治をしたんだ。退治どころか我々はむしろ救われた」

「彼はオティじゃない」

「うむ」

「また会えるかな?」

「会いたいな。だから、しっかり仕事して」

「うん。立派なカタギになってから、だね」

「ああ」

「……本当にありがとう、勇者サワキ」

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