第十三話 伴出、猫にひく
「いやだってさ、語尾にマオはないだろマオは、魔王以外ないって」
盗賊の隠れ家を歩きながら四人は話をしていた。
「なるほど、さすがはサワキ殿」
「天才か?」
「すごいですにゃサワキ君!」
「誉めんのそこなのか……」
「それで、あの、サワキ君?」
「ん、ああ。そう、サジフに言った通り、オレは異世界からきたんだ。地球っていう場所というか星だ」
「チキュウ?」
「そうだ。ある理由からこのアリイアの世界にやってきたんだ」
「その理由って?」
「え、完全な私用」
「なんだって?」
「世界を救うためさ」
「やっぱり。なにかよくないことが迫っているのか」
「そうだ。それがなんなのかはわからないけど、それを調べてるところなんだ。騙してすまなかった」
「水くさいですにゃ」
「俺達はただの盗賊だ。気にしちゃいないさ、なあ?」
「そうだね」
「じゃあ、あとは貴族だけど」
「なあ、その前に疑問なんだが、サワキ殿に魔法が効かなかったのはどうしてだ?」
「理由は予想はできるけど、ただ、本当に無効化できるのかはさっきまで確証はなかったよ」
「いつ気づいたんですにゃ?」
「これだよ」
「僕達の部下がつけていた防具だね、これは地味にすごい品でかなりの魔力濃度で精製された金属だった……まさか、オティの剣は」
「そう、オレのいた世界のものなんだ」
「オティも異世界からきたのか?」
「わからない。でも、そうじゃないかと思ってる」
「だがさ、それだけで魔法に耐えられると思ったのか? 博打すぎないか?」
「このオティの剣、よく見てほしいんだ。オレがあのとき盗賊の手を狙ったのは武器を弾くためだったんだ。それ以上のことはある理由でできないとわかっていたから」
「それ以上できない? なぜだ?」
「よく切れそうな剣ですにゃ」
「パッと見はな」
「じゃあナマクラなのかい?」
「見てな」
「おいおい!」
「刃を素手で持ったら危ないですにゃ!」
「待てよ、これは」
「そう、刃つけされてないんだこれ。居合練習刀だよ。本物と同じつくりで刃のない練習用の剣だ」
「なんと!」
「なのに、ほら」
「魔法で精製した金属をバターみたいに切ってる」
「多分、魔力を弾いて分離してるんだ、それで金属が切れてるように見えている。それでなくても金属対金属をしたらいくら刀でも鈍ったり傷がついたりするもんだけど、これにはそれが一切ない」
「でも、それはその剣だけかもしれないじゃないか」
「これ、見ていて」
「ひしゃげた!」
「ちゃんと金属だとわかるのに、まるで紙みたいに感じるんだ。気を付けないと魔力で加工されたものなんでも壊しちゃいそうだ」
感心したようにサワキを見つめる三人であったが、気恥ずかしくなったサワキに急かされて例の貴族のもとへと向かうことにした。
* * *
隠れ家から少し離れた場所の洞窟があり、四人はそこへ向かった。なんでも、そこに牢があるという。
「なんてジメジメした場所だよ、こんなところに貴族様閉じ込めたのか?」
「サジフに言ってくれ。僕達はここを牢としては使ってなかったよ」
「暗いし汚いし変な虫いるし、ミーシャ大丈夫か?」
こんな場所がよくあったなと思いながら連れ合いを気遣うサワキだったが、暗闇の中で光る猫の目を見て後退り、行動を見てさらに後退った。
「? ボクはここ好きですけどにゃ」
見るとルーシーは壁の虫を手で猫パンチして遊んでいた。
「猫め……」
ルーシーにひいていると、先の角の方が明るくなっていることに一行は気づいた。檻かなにかがあるのだろう。
だが、その予想は大きく外れることになる。
フローラルだかジャスミンだか知らないがなにかしら花の芳香。
フワリの流れてくる紅茶の香り、高級な食器の音。
優雅なバイオリンの音色と暖かな燭台の灯りときらびやかなシャンデリアの輝き。
赤いカーペットの上には白く美しいテーブル。
それらすべてを侍らせて豪華な椅子に座った気品のよい女がそこにいた。
長い金髪、サファイアブルーの瞳、スラリと長い手足、腰にはサーベル。どれも気品のよさを表している。
「騒々しいよキミたち、もっとエレガントに振る舞いたまえ」
どうやら彼女はティータイム中らしい。捕まっているのに。
四人は思わずため息をついた。
(また変なのが出た……)




