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第十話 伴出、たじろぐ

「表に来ているな」

 髪の長い男がぽつりと呟いた。

「はい?」

 部下らしき男が聞き返す。

「表にいる者達をすぐに連れてこい」

 周りにいた者達もその髪の長い男の変化に気づいてい

た。以前とはまるで違っている。

 先日ふらりと帰ってきた死んだと思われていた男はなにやら不可思議な力を手にしており、そして、ボスが不在の間にアッサリと貴族までさらってきてみせていた。

「おいおい……あれは……」

 やってきたのは二人のボス、そして、西ワガサでそのボスを捕らえた二人組であった。縄で縛って連れてきたらしい。

 言っていることが当たった。長髪の男サジフの透視じみた力まで持ちあわせる不気味さに皆おびえた。

「よう」

 ムツが苛立ちを隠すように軽く挨拶をする。

「生きてたんだね、サジフ」

 シンもまた同じように話しかけた。

「おや、三人組だと思ったが、やはり……」

 縛られた状態の四人を見ながらサジフは一人言だ。

「……」

「どうしたんですかにゃ?」

 サワキがなにも言わないのを心配してルーシーがヒソヒソと話しかける。

「……こわい」

「ハァ……」

 ガタガタ震えるサワキと呆れるルーシーを見てサジフはほくそ笑んだ。

「"ラストファイター"のお二人さん、おかえりなさい。なにやらお客様をお連れになったようで」

「本当は我々も邪魔だって面だな」

「それはどうでしょう」

「狙いはなんなの? サジフ」

「そりゃもちろん下克上――」

「嘘をつくなよ」

 シンの目が鋭くなる。

「おまえ、やっぱり僕達の知ってるサジフじゃないね?」

 ムツも同じだった。

 周囲の盗賊達は少しずつだがその場のおかしさに動揺しはじめていた。

 そもそもこの盗賊団はムツとシンを慕った人間が集まってできたものだった。その二人がいなくなった後に死んだはずの男がふらりと現れ、まして魔法などを身につけ、その上自分達が慕う二人組を殺せと命じていたのだ。そこへムツとシンのなにかを疑うような不穏な言葉。状況は一気に覆りはじめていた。

「おいおい」

 サジフもそれに気づいた。口に指を当てて二人に黙るよう促す。たった一言でサジフの立場は終わりだからだ。

 しかしどこかおかしい。サジフははじめからそれをわかっていてここまで連れてこさせている。そして、おそらく次の展開も読めている。

「ここのボスは俺達だ! サジフ!」

 盗賊達の顔つきが変わると同時に、縛られたふりをしていた四人は縄を捨てて立ち上がった。

 その場にいた皆が得物を抜く。もちろんムツとシンに味方するためだ。

「おまえらはここから出ているんだ! いいから早く!」

 ムツが盗賊達を部屋から追い出す。この辺りはサワキの指示だった。

 シンは部下から槍を受け取り、ムツは弓矢を取り出した。ルーシーも取り敢えず構えて見せている。サワキはしきりに周囲を見回して、それからゆっくりとサジフへ目をやった。

「クックック……」

 サジフが笑う。

 なにか不気味な空気が流れたかと思うと、途端に部屋の雰囲気が凍りついた。

「……ルーシー、扉は!?」

 サワキが叫ぶ。

 ルーシーは不思議そうな顔をしていたがサワキに急かされて扉に走った。

「開きませんにゃ! ま、窓も!」

「鍵がかかっているのか?」

「わ、わかりませんけど……びくともしませんにゃ! なにかおかしいですにゃ!」

「ククク……ハーハッハッハ!」

 サジフが大笑いすると、髪が逆立ち、なにやら一回り大きくなったようなオーラを出し始めた。

「そこのバンダナ、おまえは話が早そうだな。さすがは勇者オティ」

「な、なに?」

 腰の刀は袋に包んであって姿は見えない。それが刀、つまりオティの剣であることはわからないはずだ。伝聞からそこまでの予想したのか。

「ただ洞察力が鋭いだけじゃないな」

 サワキの指摘にサジフは笑いで返した。

「お前達の目的はこの盗賊団を取り戻すこと、貴族を解放すること、セルディーと接触すること」

 まさにサワキの目的だった。

「作戦は簡単、どう考えてもここの盗賊団のイニシアチブは"ラストファイター"の二人が握っている。中枢まで戻って鬨の声をあげれば状況は簡単に覆る。そしてこの俺様を倒せば解決、と」

 サワキのたてた作戦そのものだった。

「いや、そもそもこの戦いに作戦なんていらないことを貴様はわかっていたんだ、オティ。お前達を見つけたら必ず殺せという俺様の命令を下っぱが聞かなかった時点で俺様の支配など脆いものだとわかるからな」

「そこまでわかっていながらなぜここまで来させた?」

「なかなかキレるようだが危機感がないな。当然貴様らに勝つ自信があるからだ、そして――」

「……来る!」

「――勇者オティの抹殺もまた俺様達の目的だからだ!!」

 なにかが爆発したかのようにサジフからの振動、そして圧力。

 ビリビリと吹き抜けていく衝撃に四人はたじろぐ。本能が警戒信号を出していた。明らかに異質な何かをサジフは発している。

「そ、そんにゃ……ありえない……」

「どうしたルーシー」

「と、とても人間が持ちうる魔力ではありませんにゃ!」

「わかるのか?」

「はいですにゃ! サワキ君逃げた方がいいですにゃ!」

「そんなにかよ……」

「小規模な災害なら引き起こしかねないですにゃ!」

「フ、フフ……小規模な災害か? わかってるじゃないか」

 圧迫するかのように場の空気が狭まるのがサワキにもわかった。

「ミーシャ、残念だが逃がしちゃくれなさそうだ」

 サワキは腰の刀を紐解く。

「それこそはまさしく魔法、超自然の理。さぁ、今からその力で試してやろう、勇者よ!!」

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