第5話:おまわりさんこいつです
知らない天井。ふかふかのベッド。
さて、俺の今の状況を簡潔に述べよう。……ホテルの一室(スイートルームっぽい)に監禁されています。
……どうしてこうなった
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「まあとりあえず、ユウキ君の守りを万全の体制で固めてください」
あ、どうもです、それは。
「り、了解です!!」
「おいおい、勝手に了解すんなよ新人!
……おエライ猊下の考えはわかったがよォ、悪魔を教会に入れると死ぬだろォ。そこんトコどうなんだァ?」
えっと……死にたくないんですが。そこんとこ、お願いしゃす。
「……なんなら、そちの男子については妾が責任を持って預かるぞえ?」
「……いえ、申し訳ないのですがユウキ・ジンノ君の身柄は『教会』で一時的に預かります。うちの息がかかっているホテルならば、問題ないでしょう」
教会も、この凰璃学園の人達も信用できるかはわからない。だが、少なくともまだ俺は殺されることはない、というのは直感で思った。となると、問題は正太の安否。さて、どうしようか。のんびりと頭を働かしているとフワリと優しい花の香りが漂ってきた。
少しうつらうつらする。
「少しばかり、乱暴ではないかのう?」
ねむっ
「イチイチメンドくせぇんだ。これでも穏便な対応だァ、感謝しやがれ」
フワリ、フワリ
ああ、眠いなーーーーーーーーーーーー
ガクリと崩れ落ちたユウキを、キャンピオン猊下が支える。
「取り敢えず戻るヨ、クルリ。皇帝がお怒りネ」
「それはそれは……不味いのう」
「……ローマ観光、是非ともお楽しみください、先輩方」
「……それはそち次第ネ」
一瞬にして消えた二人。
その気配が完全に消えた事を確認すると、キャンピオン猊下はおもむろに口火を切った。
「先輩方は、とてもお強いので手は出さないように……それと、サンタンジェロ城へソノお嬢さんを運んでおいてください」
丁寧な口調。しかしそれには、抗うことなど許されないような強さがあった。
「サンタンジェロ城って……あの牢獄ですか!? 猊下のご命令に背くわけではないのですが、そこまでしなくともいいのでは……?」
「……へーへー。了解ですッとなァ」
隊長と呼ばれる男は、ユウキをヒョイっと俵かつぎした。
「隊長!」
その言葉を無視して、隊長は今までずっとただ佇んでいたセイへ目を向けた。
「ほら、お嬢ちゃん、行くぞォ」
セイは無表情を僅かに動かして、言った。
「ついて、行く。ユウキ・ジンノ、危害、加えない、肯定?」
「ええ。貴方が来てくれるなら」
優しく微笑みながらおっしゃったキャンピオン猊下。
……このとき、遊撃隊の面々は思った。
絶対、腹黒鬼畜だな、コイツ、と。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「何故ああも簡単に引き下がったのかや?」
「英国を敵にしたかたか、クルリ」
「しかし……セイとやらいう女子が、のう」
「それなら心配ないヨ
今は、ローマにアノ、指名手配犯が来てる噂ネ」
「それは安心できぬのじゃが……して、何やつかのう?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
えー、確か、俺は多分魔法で眠らせられて……
窓の外を見ると、今はもう夜だ。……まて、セイはどこだっっっ!?
マズイ、俺の推理だとーーーーー
「やあこんばんは。月がなかなかにきれいだね。あ、告白とかじゃなくてね?」
窓の外、月を背に、真っ黒いタキシードを着込み、変な仮面をつけ、マントをたなびかせている男がいた……
変人 が 現れた
▷逃げる
▶通報する
▷戦う
▷聞こえなかったことにする
ユウキ は 電話 を 取った
「あー、うん、名乗ってなかったか」
そこじゃない!!
勇紀は思わずツッコミそうになった。
「私は怪盗ルパン。か弱い少女の涙を盗みに参りました」
キザったらしく、それでいて様になっているお辞儀。それを見て、勇紀はーーーーーーーー
「あ、もしもし? 警察ですか?」
「いや、通報しないでね。あと、ここの電話は『外』には通じないよ」
どういうことだ、と思ったのもつかの間。とりあえず窓の外に手を出そうとするも……
バチッと強い音とともに、鋭い痛みに襲われた。
「対悪魔障壁ってとこ。『教会』の人等は、君を出す気はないよ」
あっさりと言い放たれたその言葉に、勇紀は嘘を感じなかった。
「俺を、出してくれる気がある……と、いうことですか?」
「C'est tout à fait le mot!(その通り!)
……この様子を見てご覧」
パチリと男が指を鳴らすと、ぼやーっと次第に画像が浮かんできた。
それは、暗い牢獄の中。綺麗な金髪に隠されて顔は見えないが……俺の、推理、で、は、いや、間違いなく
「セイっ!?」
それは、セイがーーーーーーーー両手両足を封じられ、目隠しまでさせられて閉じ込められている様子だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一回打ち間違えた時のセリフ
「申し訳ないのですがユウキ・ジンノ君の煮殻は」
……不味そう