第4話:日常とは、その基準は当人によって変わる……だからってこれはないだろ
「ふむ……悪魔に有効な聖なる攻撃とな。なかなかに感知が早いようじゃの」
「矢張り面倒事になたネ。他の班員に連絡しとけヨ」
その暴力的なまでの光は、やっぱ悪魔となった俺の弱点なんだろう。なんかまた非日常が始まったな、と乾いた笑いしか出てこない。
とりあえず、防いでくれたらしき食いしん坊美少女はありがとう。……またなんか食べてるけど。そしてこの事態でも立って寝てるムカつくイケメン、滅びろ。
「うわわわ、どこのとこからの攻撃!? 『教会』に仇をなす者ですか!?」
驚きの連続だからか、自分より慌てているお姉さんがいるせいか。思ったより俺は冷静らしい。
「新人、落ち着けェ。んで、そこのお嬢ちゃん、何の用だァ?」
お嬢ちゃん。俺を、おそらく殺そうとした人物。俺の、推理。……当たって欲しくはない、推理。その答はーーーー
「教会、認識。検索………遊撃隊、判明」
セイ・ミッレ・トレンタ。俺を殺した(生きてるけどな、俺……悪魔として)美少女。
どうやって感知したかはわからんが(多分魔法?)、俺の生存を知った、あのいけ好かない、セイの父親?がまた性懲りも無く、セイに俺の殺害を命じたんだろう……イラつくな。もちろんセイに、ではない。セイを道具のごとく扱うあのオッサンに、だ。
「へェ、コッチのことを知らずに攻撃してきたッてかァ。ソッチの二人組も心当たりはないようだし……狙いはユウキ・ジンノかァ?」
「隊長。ねみぃんで帰っていいっすか?」
「もきゅもきゅもぐもぐもきゅ」
「テメエらはチョッット黙ッてろ」
隊長さんの心のこもった言葉に……2人は黙った。いや、普通に食って、寝てるけど。
「ユウキ・ジンノ、殺害、命令、肯定」
「そうかァ。んじゃァ、とりあえず教会の敵だな? 新人!」
「はい………主よ。汝が敵に戒めの鎖をお与えください。光の鎖」
魔法。それが目の前で使われている………お姉さん、俺を拘束する時もそれを使えば良かったんじゃないだろうか。
「回避可能。迎撃態勢に移ります」
「おせェよ」
いや、充分早いですよ~。
「セイっ!!!!」
見えない攻撃……多分、によってセイは地面に倒れた。って、おい!
「あの女子なら大丈夫じゃよ。あれ程の実力者ならば、手加減くらいできとる」
「でも……」
やはり、心配だ……セイはさっきから、何かをつぶやいているだけで、動かないし。
と、思っていると。目の前を何かがよぎった。
「クルリ、皇帝から連絡ネ。ささと問題終わらせろとのことヨ」
それは白い鳥っぽいモノだったけど、栄仁さんの手に触れると、手紙?になった。多分ホアンディーさんからのお手紙なのだろう。……変な名前の人だなあ。そして、携帯使えよ、そんくらい。
「……妾があの女子の問題を解決しろという事かえ?」
「丁度よかたネ。祓魔師の後輩がこち来てるヨ。これで自由に動けるダロ?」
「……異国の地をゆるりと楽しみたかったのう」
「ふーん、なんて名だァ、その祓魔師は?」
エクソシスト?これまたファンタジーな。というか、俺が祓われるのか?やだなー逃げたい。
「ヴィンツェンツィオ・キャンピオンだたネ」
「え、えーっ!!!!! それってまさか、最年少の枢機卿の、キャンピオン猊下ですか!?」
「新人、驚くのもわかるが、ソノお嬢ちゃん逃がすなよォ。人違いの可能性もあるだろォが」
どうしよう。会話にまったくついていけない。アレ?俺、当事者だよね?枢機卿ってなにそれ?おいしいの?
「行動不能。実力差……推定。計算終了。脱出、不可能。検討、自爆」
自爆!?つまり……自殺するってことか!?そんな……そんな命令ーーーーーー
「セイっ!! 命令なんて聞かなくていいんだ」
「命令、聞く。任務、遂行。存在、意義」
「そんあことはないっっっ!!!!!!」
美少女はそこに立っているだけで目の保養なんだ!癒されるんだ!!あと、旅行会社に証言をしてくんないと、せっかく当たったツアーがパーになる!!!
「あースミマセン。こんな感動的なシーンに空気読めない感じで登場しちゃって」
ひょっこりと、ヘコヘコしつつ出て来た少年……っつっても俺と同い年くらい。真っ白い髪に、黄色の目がひどく目立つ。しかも真っ赤な服を着ている……よく通報されなかったな。
それと、大丈夫です。心の中ではスッゲーゲスいことを考えてたんで。
「げ、猊下……」
「あ、かしこまんなくていいですよ」
俺と同じくらいの年っぽいのに、かなり偉いらしい。お姉さんがすっごいキラキラと尊敬の眼差しで見てる……他の3人は総スルーだけど。いいのか!?
「来たネ。遅かたヨ」
またもや放置される。俺はこの場に必要なのだろうか?……
暇だし、ポケットを探る。……あれ?
「はは、ちょっとばかし面倒な案件がありまして」
セイ?腹減ったか?いや、実はな、ポケットにチョコがあって。機内食でもらったんだ。
「言い訳はナシネ」
え?食べたことない?じゃ、ほら、食ってみなよ。
「英国王室の……「ほほう、面白そうじゃの。これ、栄仁、話をきこうぞ」
もぐもぐと黙って食べるセイ。……癒される。
「……説教は自分で受けろヨ」
「猊下!? 王室からの干渉ですか!?」
「もぐもぐもきゅもきゅもぐ」
「ふわぁー、そろそろ帰っていいっすか~?」
「新人、落ち着けェ! ……コイツらは落ち着きすぎだけどなァ。あと、猊下。ことが大きいんでェ、バックれますゥ」
「却下」
「ちッ」
さてと。
……英国王室って?えーっと、聞き間違えですか?
もうやだ。セイ、二人で逃げたいな。あ、無理だよな、そうだな。
……正太、すまん、まだお前を探しにはいけないようだ。俺が何をしたっていうんだorz
平穏な日常に戻りたいっっっっ!!
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皇帝・・・皇帝の中国語であり、人名を指しているわけではない。皇帝、というあだ名の生徒が凰璃にはいる、という事。
枢機卿(すうききょう、すうきけい、ラテン語: Cardinalis、英: Cardinal)とはァ、カトリック教会における教皇の最高顧問であり、カトリック教会において教皇に次ぐ地位にある称号だァ。まあつまり、オレらの上司だッつーことだ。スッゲーざっくり言うとだけどなァ。要するにィ、お偉いさんだ、お偉いさん!
遅れて非常に申し訳ないです。