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なんで俺の命は危機にあう!?   作者: 榊 唯月
初めての海外旅行
3/7

第2話:こうしてこうなった。反省はしている。だが後悔はしていない……はず

「ユウキ。ユウキ。おい。起きろや get up!」


「へ?」


 女の人の声で目覚める。……俺は、死んだんだよなぁ。


 ここは、どこだ?俺は……神野勇紀だな。


「ユウキ!」


 そう言われて女の人に抱きつかれる。……………誰だ?ん?何となく見覚えが……


「母さん!?」


 いつも見てたのは写真だったからわからなかったが……母さんだ。確か、メアリーという名前だった。


「そうよ、ユウキ、お母さんよ。…………大きくなったね。ずっと見てたわよ」


 かあさん………………


「オマエがセクハラしてるところもなあ!!!!!」


「すみませんでした!!!」


 土下座した。




「まったく。そんな子に育てた覚えはありませんですよ」


 育てられた覚えもないです。と、言いたいけど言っちゃ駄目だよな。


 ………というか、この母さんは本物だろうか?魔法で化けたりとかも、出来るんじゃないだろうか。一度思うと不安になってくる。


「でも……元気に成長してくれてありがとう」


 そう言って顔に浮かべられた笑みは。確証も何もないけど……ああ、母さん、俺の母さんだ、と俺に思わせるものだった。


「そして、ごめんなさい。ユウキが死んじゃったのは、ワタシのせいなのよ……」


「予想はしていたよ」


 母さんの悲痛な顔を、見ていたくはなかった。だから母さんの言葉を(さえぎ)った。


「だって父さんはただのサラリーマンだぞ? そんな父さん関連で命を狙われるとは思えないし。だとしたら、母さんかなーとは」


 母さんが泣きそうな顔になる。慌てて俺は付け足した。


「いや、母さんを恨んでなんかないよ。悪いのは俺を殺したあの男だし」


 実際に手を下したのはあの子、セイだろうなとはわかる。だけど……あの子を恨む気にはなれない。元凶は、あの男。そういうのは何故か本能でわかる。


 正太は大丈夫だろうか。……すまん、俺には祈ることしか出来ない。でも、何となくわかる。大丈夫だ、あいつは生きてる。そう、感じるんだ。


「それに、俺が生まれてこれたのは母さんのおかげだから」




「でも…ワタシはーーーー家なのに。推理できなかった。ユウキを、巻き込んでしまった」


「ゴメン母さん、何家って言った?」


 それは不幸(運命)か偶然か。勇紀はその言葉を聞き逃した。




「呼ばれてなくても飛び出してくる〜」


 白。それが親子の前にいきなり現れた。


 白い髪。白い肌。白い服。顔の上半分を隠す白い仮面。そして、白いウサ耳。圧倒的な白がそこに在った。


 怪しい。そして……………危険だ。それが二人の共通した意見だった。


「あ、名乗ってなかったね。僕は白ウサギって呼んでね。今日は〜、不幸な神野勇紀クンのために! な、なんと! 生き返れる権利をプレゼントしちゃいまーす」


 怪しい。胡散臭い。そんな二人の視線を気にもとめず、白ウサギと名乗った少年は話を続けた。


「それでは神野勇紀クン。天使とー、悪魔とー、ドラゴンとー、エルフとー、ゴーストとー、吸血鬼とー、獣人の中からー、好きなのを選んでね〜。いやー、昔より増えたんだよ〜、選択肢! 良かったね〜」


 怪しくても生き返れるなら生き返りたい。勇紀はとりあえず話をすることにした。


「人間、というのはないのか?」


「ないよ〜」


 勇紀は悩んだ。どの選択肢がいいか。天使は羽がはずかしいし、神の命令を聞かなくてはいけない気がする。行動も制限されそうだ。エルフは……なんというか、物理的に弱そうだし、俺には合わなそうだ。ゴーストは、普通の生活を送りたいからパス。吸血鬼は、弱点が多そうだ。獣人は、耳や尻尾からバレる気がする。ドラゴンか悪魔だな。男のロマン的にも。


 ……悪魔、かな。直感的にそう思った。


「悪魔、で」


 母さんから心配そうな目線を向けられるも、大丈夫と目で返しておいた。


「はいは〜い、悪魔かー。えーと、よいしょっと〜。それじゃあ、新たな生をお楽しみくださ~い!」


 身体が黒い(うず)()まれる。ぐるぐる、ぐるぐる…………熱い




「ユウキ! イギリスに助けを求めなさい!! メアリーの息子と言えばいいわ。そして、悪魔となったからには光が弱点! 天使には気を付けて!! ……悪いお母さんで、ごめんね。愛してるわ!!!!」


 悪いお母さんなんかじゃない……と言おうとして、声が出なかった。俺も、母さんのことが好きだよ。声にならずとも思う。


 イギリス……母さんの故郷。そこに何があるんだ。


 あと、あの胡散臭い白ウサギはもう去っただろうか。母さんが心配だ。俺を生き返らせたから、いい奴かといえば違う。奴は、ただの実験としか思っていなかっただろう。……それでも、いい。俺は生きてやる。奴の計画を、予想をぶち壊すくらいに強くなってやる。奴は、生者だ。直感的にわかる。おそらく俺が生き返ったら一度は会いに来るはずだ。その時、俺は…………奴を、白ウサギを、打ち倒せるレベルになってやる。



 母さんと、短い間とはいえ会えて嬉しかったよ。それが俺の(まぎ)れもない本心だ。


 あり、が、とうーーーーーーー






 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「ユウキを、ワタシの家のことに、魔法世界に関わらせる気はなかったのに………」


 メアリーはただただ()いていた。自分が逃げだした家の、問題に息子を関わらせてしまったことを。魔法の世界……メルヘンな響きだがその実、命懸けの世界に引きずり込ませてしまったことを。


「家出したとはいえ、あそこの家の人が推理を外すなんて〜。おっもしろーい」


 メアリーは白ウサギの、その、すべてを見透(みす)かしたかの様な言葉に戦慄(せんりつ)した。そんな、英国(イギリス)でもトップ・シークレットの内容を知っているだなんて……


 しかも白ウサギの正体は、メアリーの推理力をもってしてもまったくわからなかった。性別も、人種も、年齢も、何もかも。唯一わかるのは生者、ということ。それだけだ。


「どこまで知っているの? ……まさか、ユウキが死んだのもアンタのせいなんてことは」


 最悪の想像


「なーいな〜い。そんなにヒマでもなーいし〜」


 しかしそれは否定された。よかった、とメアリーは思う。もし、ユウキの敵がコイツだったら勝ち目は薄い。いや、メアリーの推理だと勝てる可能性はほぼ0%である。


「…………ユウキに手を出したら、承知しないわよ!!!!!」


 たとえ力(およば)ばずとも。ユウキの、愛しい息子の為なら、魂が消えようとも(あらが)うつもりだった。


「お〜、こわーいこわーい。うーん、なんとも言えないかな〜。まー、お前程度じゃ逆立ちしても僕には敵わないよ〜。ザーンネンでした~」


 ふざけているかのような軽い言葉には、恐ろしい程の『ナニカ(狂気)』が秘められていた。メアリーは思わず後ずさる。


「っ!!!」


 息を呑む。戦うのか………


「まー、じゃーね~。もう会わないと思うけど〜」


 白ウサギが消えたことに、思わず安堵(あんど)する。おそらく、生者の世界へ戻ったのだろう。






「ユウキ……アナタの無事を、祈ってるわ。………………もう、死なないで」



 メアリーは、母として……ただ、祈った。神を知りしともーーーーー










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