第1話:どうしてこうなった……
すみません、遅くなりました。基本、こっちは亀更新となります。
「おーい、勇紀、めんごめんご、遅くなった」
正太、なんてタイミングで来たんだ。ある意味すごいぞ。
「一般人の存在を確認。『命令』により、戦闘行為を中断」
な、なんか銃をしまったぞ。よかった……
「勇紀、誰だ? このロリっ娘」
いや、確かにロリだが、他に気にするところがあるだろう。銃とか銃とか。まあ、本物な訳ないし、モデルガンか?この子はなんか全体的に中二病っぽいので、それで持ってるのかもしれない。
「『ロリっ娘』を検索・・・・・・データベースにロリっ娘のデータはなし。情報収集を必要と判断。問います。ロリっ娘とは何ですか?」
データベースって何だ!?中二病の中では知識とか記憶という感じなんだろうか。そして真顔でロリっ娘の意味を聞かれても答えられない。どう言えと……
「君みたいな小さくて可愛い女の子のことだよ!」
正太、お前をある意味尊敬する。中々に当たり障りなく、且つベストな答えだ。まあ元はお前のせいだけどな。
「データベースを照合。小さい、肯定。可愛い、否定」
「そんなことないよ。とっっても可愛いよ」
日本語の意味はちゃんとわかってんだよな……そして正太、通報するぞ。それ以上なんか言ったら。
「話を変えて悪いが、君はどうして俺の名を知ってるんだ?」
「ユウキ・ジンノ殺す、命令。あの言葉、インプットされた」
ふむ、つまりこの子は俺を殺すよう命令されてて、あの『死になさい』という言葉と俺の名はその為に覚えさせられたと。
……俺は清く正しく生きてきたつもりなんだがな。
「ロリっ娘ちゃん、勇紀の命とかどうでもいいから、君の名前を教えてくれる?」
おい、俺の扱いがひどすぎるだろ。
「名前………識別名、セイ・ミッレ・トレンタ」
識別名って……?ああ、また中二病の、人間としてのとか仮の名はコレだが、真の名は……って感じか。設定が中々に凝ってるな。
「セイちゃん、一人でお家帰れる? それともお母さんと来たのかな? 時間があるならお兄さん達と遊んでもいいけど」
「肯定。ユウキ・ジンノ殺すまで、対象から離れない、命令」
……俺なんかしたかなぁ。心当たりがまったくないんだが。うーん、想像だがこの子は日本語ペラペラだし、日本に住んでいた。それで旅行か帰省かは知らないが、イタリアに来て、マフィアごっこをしようと思った。日本に住んでいたから、日本人でなおかつ年のまだ近い俺と遊ぼうと思った……ここまではいい。だけど、疑問点が二つ。一つ、何で俺の名を知っていたか。ご両親が父さんと同じ職場とかか?二つ、どこから落ちてきたのか。周りには高いビルなんてない。
「そうか、セイ。お前は、どこから落ちて来たんだ?」
「落ちて来た、否定。転移地点、ズレた、肯定」
転移!?また中二病が発動したんだろうか…
「セイちゃん、魔女っ子ちゃんなのかな?」
その言い方はやめとけ、正太。魔法使いとかでいいだろうに。
「魔女っ子・・・・・・データベースを検索。意味、子どもの魔女。子ども……定義曖昧。よって否定。魔女、肯定」
「魔女さんなのか〜。どんな魔法、使えるの?」
正太、そこの設定できてなかったらどうするんだよ。はぁ、マフィアごっこかと思いきや魔法使いごっこか。いやあの銃はなんなんだよ!?
「魔法、使用。命令違反、否定。使用可能、肯定。……氷の矢」
どんなことをするのかな、と俺達は彼女をじっと見ていた。
氷の矢。それが出てきた。彼女のつぶやきと一緒に。魔法……実在していたのか!?そんなものが?
これは……
「正太! 逃げるぞ!!」
この子が本当に俺の命を狙っているのなら……危険だ。俺なんか簡単に殺せるだろう。これがトリックのあるマジックの可能性はあるが……俺達はみた。何もない空にいきなり氷の矢が浮かぶのを。これがマジックとは言いがたい。
「ああ!!」
この子は一般人の正太が来ると銃をしまった。つまり、一般人は狙わないはず。となると、人混みに行くべきだろう。そんなのここであれば簡単だ。空港内に入ればいい。あの子はいきなり逃げ出した俺達に驚いて、止まっている。大丈夫……
「魔の鎖」
なはずだった。しかし相手は魔法を使えるのだ。俺達は、謎の光る鎖に縛られた。……あの子の可愛い声ではなく、成人男性の声によって出された。
「何をもたもたしてるのだ。この欠陥品が」
「申し訳、ありません」
感じ悪いおっさん。あの子の父親か?にしては顔が似ていない。養父とかか?
「一般人がいたなら、記憶を消せばいいだろう。何をグズグズしてる!!!」
「はい、ご命令に、従います」
胸糞悪い光景だ。……と、他人事のように俺はただ見ていた。
「勇紀!!!!!!!」
いつになく切羽詰まった声で呼ばれる。正太、うるさいぞ。そう言おうとして俺は…
胸元が痛い。血が出ている。なるほど。心臓を魔法で攻撃されたらしい。
それだけ認識して……
すまん、正太。巻き込んで。
ゴメン、父さん。俺は、母さんと、同じ所に、い、き、ま…………
神野勇紀は、事切れた。
「ゆうき!ゆ「やかましい。これだから低俗な者は。まったく。忘却」
忘却。その術が正太に当たる。術の影響か彼は気を失った。そして彼は……
「人間とは、哀れなものだ。親友だの言っておきながら、あっさりとそれを忘れるのだから……」
「これらは、どういたしますか?」
いきなり現れた少女が言った。金髪碧眼。そう、セイと名乗ったあの少女と瓜二つ。ドッペルゲンガーと言われれば信じてしまいそうだ。
「トレンタトレか。死体は放っておけ。そっちは……」
そう言って男性は気絶してしまった正太を見る。
「そうだな、そっちも放っておけ。親友が目の前で死んだショックで記憶喪失、と思われるだろう。よければソイツが殺したと思うかもしれんな」
「わかりました」
セイ……セイ・ミッレ・トレンタと名乗った少女は風の魔術で勇紀を殺したあと、固まっていた。いや、思考していたと言うべきだろう。彼女には、今の自分の感情、否、感情というものがわからなかった。何故こんなに胸にポッカリと穴が空いたような気持ちになるのか、目から水分が出ようとしているのか。
「トレンタ! 次に失敗したら……わかっているだろうな? 処分するからな」
「はい」
わからな、かった。
主人公が死ぬ……一話目で。果たしてこんな小説は今までに……あったでしょうね。というか、某少年雑誌では主人公が幽霊という斬新なものがありましたし。あの作者さんの某狩人漫画、面白いのに…再開しないかなとずっと思っております。