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第一話 廃神さまと掲示板

途中に2ちゃん風味の描写が入ります。

 運営からのメッセージが流れた直後。私はさっそく転職に関する情報を確保するべく、このゲームにある総合掲示板「エルガイアちゃんねる」を開いてみることにした。右手を空中に差し出し、半透明のウィンドウを展開。すると、その無機質な電子画面にはすでに驚くほどたくさんの書き込みがあった――。






516 名無しの守護騎士さん 9/8 06:11 

どうやら、隠しクエストはもうすでに発見されたようだなw


517 名無しの守護騎士さん 9/8 06:13  

マジかw ソースプリーズ


518 名無しの守護騎士さん 9/8 06:14

ぬこ耳大隊と幻想殺し旅団のやつから聞いた

もうすでにギルマス以下有力なメンバーはクエに出発したらしい


519 名無しの守護騎士さん 9/8 06:14

さすが廃人wwwww


520 名無しの守護騎士さん 9/8 06:15

なんという行動の速さ。

サラマンダーより速ーい!


521 名無しの守護騎士さん 9/8 06:16

話題を豚切るけど、課金くじにチャレンジしたやつおる?

あれでも転職の書が出るっぽいけど


522 名無しの守護騎士さん 9/8 06:17

>>521

ギルメン全員で合計一メガ課金したけど、まったく影も形も見えなかったぜorz

他に手に入ったアイテムがかなり使えるから、損はしてないと思うけどな


523 名無しの守護騎士さん 9/8 06:17

俺様のマネー力を見せるときが来たか。

へへ、すまんなしょぼいPSで。だけど、マネー力だけは一流だってことを見せてやるぜw

当たったら報告してやるから、貧乏人は嫉妬汁www


524 名無しの守護騎士さん 9/8 06:18

>>523

カモ乙

というか、そのネタ古すぎるだろwwwww


525 名無しの守護騎士さん 9/8 06:18

>>523

スイ「その程度で一流とか……プッ」


526 名無しの守護騎士さん 9/8 06:19

スイたん来たw

あの娘、今回のガチャも当たるまで回すつもりかな


527 名無しの守護騎士さん 9/8 06:19

さすがにないだろw


528 名無しの守護騎士さん 9/8 06:20

>>527

スイたんをなめんな

俺はスイたんが転職一番乗りに1000ジンバブエドル賭ける


529 名無しの守護騎士さん 9/8 06:21

>>528

ちょッ、おまwww 

でも、もしそうなったら他の廃人涙目w


530 名無しの守護騎士さん 9/8 06:22

運営にとっては神課金スイたん>>超えられない壁>>他の廃人だからな、そうなってもしかたないだろ

ちなみにあの子は俺の嫁


531 名無しの守護騎士さん 9/8 06:23

おい、おまいらはいつになったら、スイたんは俺の嫁だってことを理解するんだw

あの子は俺のものだぞ







 …………こういうとき、どういう感情になればいいんだろう? 私にはいまいちよくわからない。とりあえず、私は最後の方の書き込みをスルーするとウィンドウを閉じた。私が誰かの嫁とか書かれていたが、精神の健康のためにも気にしない方がいいだろう。世の中には変なことを考える大きなお友達がいっぱいいるってことはよくわかっているつもりだ。


 某掲示板の人たち曰く「スルー検定一級」の実力を持つ私。ゆえに、すぐさま後半のレスの存在をきれいさっぱり忘れると、一目散に課金くじの設置されている王都へと向かうことにした。エルガイアちゃんねるの情報によると、まだ転職アイテムを入手した人はいないようである。ここは一番乗りするために、一刻も早くアイテムを確保するしかない。


 私は空高く転移球を放り投げた。直後、球が爆裂して視界が白に歪む。渦巻く光、身体を包む浮遊感。何度経験してもなれないそれをしばらく我慢すると、私の視界に突如として大きな城が飛び込んできた。ホワイトパレス、エルガイア最大の国家であるレンブラント王国の王城だ。


 その白鳥に喩えられる白亜の優美な王城は、盛装をしているようであった。中央に聳える高い尖塔から色とりどりの垂れ幕が下され、城壁の上では無数の旗がたなびいている。そのざわめきの中を花火が上がり、パーンと軽快な音を響かせていた。大型アップデートの直後というのはいつも、こういうお祭りのような状況だ。


 当然、城だけでなく城下のにぎわいもすさまじいものだった。私の目の前には思わず引いてしまうほどの人の海が広がっている。どこもかしこも人、人、人……。夏休みの某ねずみ遊園地みたいだ。しかし、行かないわけにはいかない。私は大きく息を吸い込んで気合いを入れると、その人波の中へとダイブした――。


 数分後。私は脱水機に放り込まれた洗濯物みたいにもみくちゃにされていた。だが、なんとか無事に課金くじの設置されている広場までたどり着く。すでに広場の中央にあるイベント用の天幕は人でいっぱいで、その外ではレアアイテムを当てた者による自慢大会が開かれている。私は某キツネ顔の小学生よろしくアイテムを見せびらかしている連中を、あきれたように見送りながら天幕の中へと向かった。


「いらっしゃいませ! こちらは新・アイテムくじの会場となっております。一回千円ですが、何回おやりになりますか?」


「そうね、転職の書が当たるまで」


「……具体的な回数の指定をお願いします。料金は前払いですので」


 一瞬だが、反応が遅れた受付のお姉さん。どうやらNPCではなく運営の社員のようだ。私はそんな彼女の若干冷たい視線を完全黙殺すると、課金くじを何回やれば転職の書が当たるのかを考え始めた。


 課金くじは、平均すると一万分の一くらいの確率で一番レアなものが当たる。だが、実際にはレアものが当たる確率はそのくじによってまちまちだ。今回の場合、当たるものが恐ろしく貴重なものなので普段の五分の一で五万分の一くらいの確率を見込めばいいだろうか。そうすると、確実に当てようと考えるならその倍の十万回は確保するべきだろう。


 十万回やる。私はそう決断すると、お姉さんの方を向いた。そしてその、よくできた石像みたいな状態の顔にちょっと尋ねてみる。


「料金の支払いって、ウェブマネー限定かしら? 額が大きいから、銀行の口座から引き落とすようにしたいのだけど」


「……あ、はい! できますよ」


 お姉さんはおそらく課金用と思われるディスプレイを出した。私はそのディスプレイが海外の銀行にも対応していることを確認すると、お姉さんに告げる。


「なら十万回やるわ。料金の方はスイス銀行の口座からでよろしく――」


……ゲームの料金を引き落としするのに、スイス銀行を指定したのはスイがはじめてかも。

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