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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

後悔

作者: 篠宮すずや
掲載日:2026/03/16

潮の匂いが嫌いだ……あの日からずっと。


俺には歳の近い妹がいた。


中学に上がってから、妹は変わった。

学校では明るくて、友達も多くて、先生からの評判もいい。


でも家では、俺にだけ当たりが強い。


その日も学校から帰った真央はただいまの挨拶もなく自分の部屋へ向かった。


その態度が、妙に腹立たしかった。


「帰ってきたのに、ただいまもなしか!」


自分でも驚くくらい、大きな声が出た。


昔は中が良かったが今では喧嘩ばかりの日々。


「そんな大きい声出さないでよ!」


「学校じゃ優等生ぶって、家じゃ反抗期かよ。ふざけんな」


真央の目が揺れた。


「……お兄ちゃんには関係ないでしょ。」


「は? 何が関係ないだよ」


その時今まで積もっていた何かが弾けカッと、頭が熱くなった。


「もういい! そんなに嫌なら出てけよ!」


真央の顔が固まった。


一瞬、静寂が落ちる。


でも、もう止まらなかった。


振り上げた手が、頬を打った。


乾いた音が、やけに響いた。


真央は何も言わず、ただ頬を押さえていた。


ゆっくりと、涙が溢れる。


「……変わったのはお兄ちゃんの方じゃない。」


その言葉は、小さかった。


でも、胸を抉るには十分だった。


真央はくるりと背を向ける。


「待てよ」


声が出たのに、足は動かなかった。


玄関のドアが乱暴に開く。


家の中が、急に静かになった。


俺はその場に立ち尽くしたまま、動けなかった。


どうせすぐ戻ってくる。


そう思った。


しかしその日は帰ってこなかった。


翌日インターホンが鳴った。


「誠ー!学校行くよー!」


玄関の外から俺の名前を呼びかける声が聞こえた。


「今日は随分早いんじゃないか?」


「そんな事無いわよ!ほら早く支度して学校行こ!」


こいつは俺の幼馴染の山崎玲奈やまざきれな小さい時からずっと俺の後ろを着いて回る鴨みたいなやつ、でも、何処までも着いてくる健気さが愛おしく思う。


「真央ちゃんはもう学校行ったの?」


「あいつの話はしないでくれ、俺はもうあんな奴の兄貴は辞めたんだよ。」


「ふーん。またいつもの兄妹喧嘩ですか。

 真央ちゃん学校サボってどこに行ってるだろうね。」


いつもの兄妹喧嘩……小さい頃はこんな喧嘩ばっかな生活じゃ無かった、いつからこんな風になったんだ。


学校のチャイムが鳴り、授業を淡々と受ける。玲奈と昼飯を食ってまた授業を受けそして帰る。毎日が同じ事の繰り返しだ、でもそれは俺たちに与えられた役割だ。


多分俺たち一人一人に何らかの役割があるはずで、それをやらなければ社会から追放され、孤立する……俺は妹を……いや、家族から追放者を出したくない、けど、いくら言っても真央は言う事を聞かないし、教えてくれない。


学校の帰り、玲奈は家の用事だとかいって先に帰った、一人いつもの帰り道を歩きながら風に流れる様に海の潮の匂いが鼻の奥を通り抜けた。


いい風だ、玲奈も居ないし、海の方まで寄り道でもするか。


心地いい風と海から流れる様に潮の香りのする方へ歩いていった。


寒くも暑くもない、透き通った海の水、心地いい風と潮の香り、ここの浜辺は人が居ないところが凄くいい所、俺の穴場の一つだ。


数分間海辺で流れる波を見つめていた。


不意に視界に入った1隻の船を見つけた。


船の船体には遠くて見ずらかったけど、日本語では無い外国の文字が刻まれていた。


「何だあの船随分古びてるな。難破船か、それとも密漁船か?……なわけないか。帰ったら真央とちゃんと話してみるか」


夕陽で海に道ができ、茜色に染まっていく。


何故か太陽が沈むまでその場から離れなれなかった。


太陽が沈み気温が寂しさを纏い変わる。しかし街は光で満ちていた。欠けたものを補うかのように。


「ただいまー。」


家の中は真っ暗だった、まるで俺の家だけがこの街から切り離されてる気がした。


玄関とリビングの電気を付け自分の部屋へと向かった。


8時が過ぎた頃玄関の鍵が空く音がし、扉が開いた。


「真央!どこいって……」


「……何よ、そんな怖い顔して」


「母さん……。」


「ほらご飯買ってきたから食べるわよ!突っ立ってないで、真央呼んできて食べるわよ。」


「て言うか、あんたさっき、もしかして、真央まだ帰ってきてないの?」


「ああ、うん。」


 「……俺、探してくるわ。」


あいつ今日という今日は絶対に許さん、1回痛い目に合わせないとだめだな。


それから2時間街を探し周り、真央の友人に聞いて回ったが妹の姿は見つからなかった。


携帯が鳴った。


母親からひとまず帰ってくるように言われ、家に帰ると、家の前にパトカーが止まっていた。


「ただいま。」


「ああ!帰ったね誠。」


「こんばんわ、君が誠さんで合ってますか?」


「はい。」


「それじゃ妹さんの事について少しいいかな?」


孤立する……社会から。そして妹が家出をした。


警察に妹の事を伝え、その日は疲れてたのかそのまま眠った。


お兄ちゃん!お兄ちゃん!起きて!!!!


妹の声が脳内で響き渡り目が覚めた、身体中汗をかいていた。


真央……。


真央が家出をして1週間、2週間が経ち、未だに見つかっておらず、捜査は難航していた。


真央が失踪してからどのくらい時間が経った、生きてるのか?居なくなって以降学校には行っていない、真央をずっと探している。


昔真央とお祭りで来たことがある神社の前に立っていた。


神なんか信じた事は無いし、神に願ったことも無い、だけど、身体は本殿の前で崩れ落ち、手を合わせ願った、(どうか、神様が居るのであれば、妹を俺の大事な家族を見つけてください!)


真央が失踪して数ヶ月が経ち、あの海辺に足を向け歩き始めた、理由なんてなかった、ただ、あの日見た夕陽の道がフラッシュバックして脳裏に鮮明に浮かんだ。


海辺着くとパトカーと救急車が居てブルーシートで何かを隠していた。


冷や汗と鳥肌が脳天から逆だった。


「嘘だ。嘘だ。待って!!!」


警察官達がいっせいにこっちを向いた。


「その子の顔を見せてくだ!!妹かもしれないんです!!!」


「ダメだ!帰りなさい!ここは立ち入り禁止だ!!」


警官2人に制しされたけど、無我夢中で掴まれてる腕を振りほどきブルーシートを剥ぎ取った。


次の瞬間。


あ、あぁ、。


変わり果てた妹がそこに居た。


「おい!誰だお前!取り抑えろ!!」


顔は水でパンパンに腫れ上がり目は抉り取られ全身に打撲痕がありまるで拷問されたかのような姿をしていた。


その場で泣きながら嘔吐した、血の塊が出るまで吐いた、全てが出た後に天を仰いだ瞬間潮の匂いが鼻の奥を通り抜けた。


7時過ぎ泣きながら両親が警察署まで迎えに来てくれ、そこから2、3時間両親は警察と話していた。


何が、ダメだったんだよ。……あの日真央と交した最後の言葉と顔が頭から離れない。


数日後静かに妹の葬儀が行われた。








読んで頂きありがとうございます!

週1ペースで投稿していきます。作品自体は完結まで構成済みなので気軽に読んでいただければ嬉しいです。

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