プロローグ:ある少年
処女作です。
どこまで書けるか分かりませんが、よろしくお願いします。
初回ということで短いです。
「……」
1ページ、紙をめくる。独特な香りと心地よい音が鼻と耳に存在感を伝えてくる。
「……」
1ページ、紙をめくる。沢山の文字が集まり、意味を成して、文章として目と脳に働きかける。
「……」
1ページ、紙をめくる。程よく色褪せた色合いと少し破れている材質が、歴史あふれる書物であると目に訴えかけてくる。
文字通り五感で本を読み、楽しむ少年の姿がそこにはある。
______
「よし、読み終わった〜」
同じ姿勢で長時間維持していたため訪れる特有の目と体の疲れ。腕を伸ばして顔を天井に向け、あとがきの最後の1ページまで楽しんだ余韻に浸りながらリラックスする。
この本、注目されていないのが非常に勿体ないと感じた1品だ。話自体はシンプルな恋愛物であるが、登場人物のリアリティが段違いで心情の変化も細かくて没入感が高く、所々で入る時間経過の描写が想像力を沸かせるものだった。ページの劣化具合から考えて出版されてからそこそこの時間が経っているはずだが、貸出リストを見ると片手で数えるほどしか読まれていない。大変惜しい。
「ま、こんな奥にあるからなぁ…仕方ないか」
今いるのは一般人立ち入り可能エリアギリギリの地下5階最奥部。人も殆ど来ないし仕方ないのかなぁ…今度の蔵書整理の時に本の入れ替えを頼んでみよう。きっと他の人にも楽しんでもらえるはずだ。
本を定位置に戻し、脚立から降りる。閲覧室まで行ってもいいんだけど、やっぱりこのスタイルのほうが落ち着く。
「あ、もうこんな時間か。そろそろ閉館作業入るだろうし、今のうちに受付に戻っとくか。」
ふと近くにあった壁時計の時間を見ると午後4時30分。17時閉館なので、そろそろ掃除や利用者への声がけが始まる。ミーティングに遅刻するとあの人が怒るし、さっさと戻るに限る。
「明日は何読もうかな…また恋愛物選んでも良いし、復讐劇でも良いな。いや、それとも偶には歴史物でも…」
そう呟きながら地上へ昇る階段へと歩を進めていく。
ここはエルジオ大図書館。世界最大級の蔵書数を誇るエルジオ王国の中心部に位置する図書館であり、「無限図書館」と呼ばれている。
そして彼の名前はアルト・エルジオ。エルジオ大図書館に住み込みで働く司書見習いであり、異なる世界の記憶を持つ者である。
・エルジオ大図書館
世界最大級の蔵書数を誇る図書館であり、どれだけ時間があっても制覇することができないことから「無限図書館」というあだ名が付けられている。(むしろ無限図書館という名前の方が認知されている)
地上には3階、地下には7階まで広がっており、蔵書で一杯になると地下に新しく階を増築していく。




