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「後継者」戦線――炎の後継者  作者: 相楽一生
第一章 百五十年後
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第5話 『崩壊』の後継者と、その死②


「発端は、先も言った通り『崩壊』の後継者の死だ。言うまでもなく『崩壊』の能力は強力無比、地水火風の後継者の比ではない。国境戦争を終わらせた後継者でもあるしな。後継者管理局は、全力で次なる『崩壊』を捜索した。しかし、見つからなかった。上層部からも相当叱責されたようだ」


 後継者の確保は、軍にとって頭の痛い問題だった。後継者の数は能力ごとに一定を保つのがルールである。

 サグジントは複数いる『火』の後継者の一人であるが、仮にサグジントが死亡した場合、別の誰かが『火』の後継者として覚醒する。『崩壊』に関しても同様である。


 問題は、次に選定される人間を特定する方法が無いことだった。


 つまり『崩壊』の後継者が死亡した以上、次の誰かが『崩壊』の能力に覚醒していることは確実なのだが、それが誰かはわからない。

 判明している条件は、ノーグ大陸にいること、主に十代から三十代の人間であること、その程度である。

 共和国で『崩壊』が死亡した後、連邦に新たな『崩壊』が生まれていることも十分あり得る。年令は例外もあるため、例えば六十代の誰かが『崩壊』になることも可能性は低いが起こり得る。

 更に厄介なことに、後継者であるかどうかを判断する方法は、当人の申告しかない。過去に死亡した後継者の身体を調べた際も、一般人との差異は全く発見できなかった。


 よって、軍としては後継者を探そうにも、高待遇を用意し、名乗り出てくれるのを待つほかない。


「どうしようもないだろう。ノーグ連邦の誰かが次の『崩壊』になった可能性も十分にある。共和国軍としては、自国内の捜索を継続する以外に打てる手はない」

「管理局もそう考えていた。後継者の軍事運用では避けられないジレンマだからな。国内の関連機関と協力し、表向きは新しい後継者の重点捜索と称して、次の『崩壊』を捜索していた。そこで問題が発生した。〝蝙蝠〟という名を知っているか?」

「戦時中に聞いたな」

「ノーグ連邦のスパイの暗号名だ。強力な『風』の後継者で、本土寄りの破壊工作でうちは相当やられた。その〝蝙蝠〟が今、共和国内に潜伏していると情報が入った。それも、次なる『崩壊』の後継者に接触するため、だそうだ」

「共和国内に発生した後継者を、連邦が先に見つけたのか? 信じ難いな」

「連邦の内通者からの情報だ。確度は高い。我々は全力で〝蝙蝠〟の潜伏場所を追った」


 グランスは続けた。

「〝蝙蝠〟が共和国から『崩壊』の後継者を連れ去った場合、現政権へのダメージは計り知れん。幸運にも国内で現れた次の『崩壊』を、よりにもよって連邦に奪われた間抜けと批判されることは確実だ。連邦の動きも厄介なことになる。国境戦争の終わり方に納得している者などいない。連邦が得意満面で『崩壊』の確保を叫ぼうものなら、再戦派にとってはこの上ない追い風だ。両国間の友好など簡単に吹き飛び、連邦側からの戦争再開も有り得る」

 サグジントは少し考えて、言った。

「情報が正しいとして、不自然な点が多いな。新たな『崩壊』が共和国に名乗り出ない理由は何だ? それに〝蝙蝠〟の行動も中途半端だ。『崩壊』が誰か判っているならば、この国にのんびり潜伏する必要はない。攫うなり殺すなりして、すぐに離脱するはずだろう」

 グランスは頷いた。

「私も同じ疑問を持っている。しかし連邦は〝蝙蝠〟を共和国に送りこむため、極めて慎重に事を運び、そこに『崩壊』のキーワードが含まれていた。奴らが『崩壊』に繋がる情報を発見したと見なすべきだ」

「偽情報の可能性はないのか」

「相手にメリットが少なすぎる。この情報を信じた我々が出来るのは、捜査態勢を強化することだが、それは既に実施済みだ。体制に穴が開くものでもないしな。にもかかわらず連邦は、〝蝙蝠〟の潜入に相当なリソースを割いている。我々はあらゆるルートを使って蝙蝠の潜伏場所を探り、ある都市名を得た。リムトーグ、という」

「初めて聞く地名だな」

「南部の港町だ。大陸鉄道に乗っても、少なくとも三日はかかる。私はここに『崩壊』がいると確信している」

「理由は」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。勿論、付近で土砂崩れの事例が極めて少ないことも確認した」

 サグジントは沈黙した。


「君も知っての通り、不自然な自然現象は国に出頭しない後継者が起こす事件の類型だ。『崩壊』の後継者は、リムトーグで何かを企んでいる。おそらくは個人的な理由で」



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