第9話 始まりの後継者
アイゼン軍は破竹の勢いで勝ち進んだ。アイゼンは大国であったが、有力貴族たちが権力を巡って反目しており、軍は規模に対して統率を欠くと思われていた。先の防衛戦で勝ったのも、外からの脅威が一時的な団結を生んだに過ぎない、と。
サウマン帝はその評判を利用した。彼は再編した軍を率いて、油断していた隣国に襲いかかった。
アイゼンは帝国を称し、その前に立った国家は友好・敵対の態度を問わず粉砕され、属州として下り、更なる隣国を攻めるための道具に変えられた。
侵略開始から十年が経ったとき、残っていたのは大陸の隅にある、イルノという小国だけだった。なすすべもなく、王城は帝国軍に包囲された。
もはやこれまでと覚悟したイルノ王の元に、三人の若者が現れた。
彼らは自らを「後継者」と称した。
神の力を受け継いだゆえ、後継者なのだと。
王は怒った。帝国兵が攻め込まんとする今、妄言に付き合っている暇はない。
お疑いはごもっとも、と若者が手を一振りすると、巨大な火球が空に現れた。火球は帝国軍の只中に飛び込み、敵兵を焼き尽くした。
呆然とする王に、三人は臣下の礼をとって言った。我らの力、帝国の支配から大陸を解放するためにお役立て下さい。
王に否応もなかった。
国の規模に似合わず、王には軍略の才があった。天変地異を自在に操る後継者の力を駆使し、王国軍は帝国軍に劣らぬ速度で進撃した。
帝国軍が優れているとはいえ、所詮は人の力であり、天変地異を操る彼ら後継者に勝てるはずもなかった。王は各国を解放し、帝都に攻め入り、サウマン帝を捕らえた。
大陸全土が歓喜に沸いていた。王は三人の後継者を呼び、言った。君たちには幾ら感謝の言葉を尽くしても足りない。君たちはこの大陸の救い主だ。財宝、地位、好きな褒美をとらせよう。
いいえ、と後継者は首を振った。何も要りません。
何と謙虚な、と王は驚いた。
後継者は悲しげな顔で言った。褒美などとんでもない。
王よ、本当に申し訳なく思っているのです。我々はあなたを騙していたのですから。




