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「後継者」戦線――炎の後継者  作者: 相楽一生
断章 百五十年前――始まりの後継者
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第9話 始まりの後継者

 アイゼン軍は破竹の勢いで勝ち進んだ。アイゼンは大国であったが、有力貴族たちが権力を巡って反目しており、軍は規模に対して統率を欠くと思われていた。先の防衛戦で勝ったのも、外からの脅威が一時的な団結を生んだに過ぎない、と。

 サウマン帝はその評判を利用した。彼は再編した軍を率いて、油断していた隣国に襲いかかった。

 アイゼンは帝国を称し、その前に立った国家は友好・敵対の態度を問わず粉砕され、属州として下り、更なる隣国を攻めるための道具に変えられた。


 侵略開始から十年が経ったとき、残っていたのは大陸の隅にある、イルノという小国だけだった。なすすべもなく、王城は帝国軍に包囲された。


 もはやこれまでと覚悟したイルノ王の元に、三人の若者が現れた。

 彼らは自らを「後継者」と称した。

 神の力を受け継いだゆえ、後継者なのだと。

 王は怒った。帝国兵が攻め込まんとする今、妄言に付き合っている暇はない。


 お疑いはごもっとも、と若者が手を一振りすると、巨大な火球が空に現れた。火球は帝国軍の只中に飛び込み、敵兵を焼き尽くした。

 呆然とする王に、三人は臣下の礼をとって言った。我らの力、帝国の支配から大陸を解放するためにお役立て下さい。


 王に否応もなかった。

 国の規模に似合わず、王には軍略の才があった。天変地異を自在に操る後継者の力を駆使し、王国軍は帝国軍に劣らぬ速度で進撃した。

 帝国軍が優れているとはいえ、所詮は人の力であり、天変地異を操る彼ら後継者に勝てるはずもなかった。王は各国を解放し、帝都に攻め入り、サウマン帝を捕らえた。


 大陸全土が歓喜に沸いていた。王は三人の後継者を呼び、言った。君たちには幾ら感謝の言葉を尽くしても足りない。君たちはこの大陸の救い主だ。財宝、地位、好きな褒美をとらせよう。


 いいえ、と後継者は首を振った。何も要りません。

 何と謙虚な、と王は驚いた。

 後継者は悲しげな顔で言った。褒美などとんでもない。

 

 王よ、本当に申し訳なく思っているのです。我々はあなたを騙していたのですから。


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