母なる者たち
「敬礼!」
隊の指揮官は怒号にも似た号令を兵士たちに浴びせる。
白いテントの中で皆は一斉に敬礼をするのであった。それを彼は厳しい顔つきで見回る。
1人の兵士の前で彼は立ち止まり、彼は額に汗を浮かべる。
「タロ!お前の敬礼の角度はそれでいいのか!」
「失礼しました、アルベルト指揮官!」
震えた声とともに敬礼を直すのであった、近衛兵の中で1番若い兵士であるタロは集団でも目立つほど背が低い。
アルベルトは元の立ち位置につくと、咳払いをしてから続ける。
「休め。ここ最近のサクララ率いる政府軍の動きが激しくなってきている、奴らはいつ動いてもおかしくない!
そして何よりも重要なこと、それは皇帝・ゾラ様に危険が迫っているということだ。自身の全てを捧げても、ゾラ様をお守りしろ!」
「「了解!!」」
テント中に統一された返事が響き渡る。彼ら全員皇帝近衛、ケルベロス隊である。
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澄んだ空気と水々しい草、広大な平野には人の気配がない。
「モー。」
近くにいる牛を眺めながら柵に寄りかかる少女はソフトクリームを舐めていた。薄いジャケットだけを着て、荷物は一切持っていない。
「牛は古代より人といるな、切り離せない存在なのだろう。」
飼育員と見られる老いた女性は手に銀のバケツを持って、通りかかった。
「女の子が1人で来るとは、珍しい。」
「普段は来ないのですか?」
「女の子どころか観光客自体がいないよ...国民に観光の余裕はないのだろう。ふれあいの牧場にはしたけど...今はまだ戦後のようだね。」
彼女はのどかに暮らす牛たちを見ながら朗らかな口調で続ける。
「皇帝様が一次産業を支援なさったおかげで私たちはこうして暮らせる。皇帝様がいれば、いつかここも観光客で溢れかえるさ。」
「へえ。」
「ところでお名前は?お客様も珍しい。よかったらうちでご馳走するよ。」
「ユメアと申します...仕事があるのでごめんなさい、お気持ちだけいただきます。」
彼女は柵から離れて軽く女性に礼をすると、スキップのような軽い足取りで去っていく。
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“政府は、新首都高速道路から17時までに全ての車両に退避勧告を要請しました“
...
4車線をもまたぐ、クエーサー自走電磁砲。
車輪だけでも直径が8メートルを超え、
皇帝の本拠地を囲うように存在する新首都高速道路。そこをレールとして機能させる自走電磁砲が運ばれた。
ーーある兵士は報告する。
「サクララ大佐、只今より首都包囲作戦を開始します。」
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ここからは「荒れた世界で桃色の魔王になります:後編」に続きます。
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