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決死を結ぶ

ツイハを前にする。怒りで我を忘れた子供のようだ。


ただし力がある。


ツイハの背後からは、テテンが能力で形成した渦の大蛇が迫ってきていた。


ビル街の中心地、宙をうねるそれを通行人たちは不思議そうに眺めていた。また一部はそれを見て逃げた。


カイはサラを抱えて、空中に浮遊したまま数十メートル先の彼に手をかざす。


「 < ヨトゥン(4000人の命) > 」


そう呟くと、側の高層ビルの窓ガラスが一斉に砕ける。


そして轟音と共にそのビルを食い破るようにして出てきたのは、氷の巨人であった。


ずんぐりとした体にボクシンググローブのような拳、頭部はない。


氷山が人の形となってそのまま動き出したかのようで、一歩進むごとに舗装された地面を薄氷のように割る。


「ツイハよ、おそらくビルの中の人間を生け贄にあの巨人を生み出したな...。」


「なんて酷いことができるんだ!」


カイに一直線で向かった大蛇を氷の巨人は、拳で受け止める。それでも拳の先からドリル状に砕いていき、肩の辺りでようやく大蛇は動きを止めた。


割れた氷が粉塵として周りに舞うので、ツイハはカイを見失う。


「ちっ。」


「ボクに体の主導権を与えよツイハ。今だけでいい。」


テテンはその声を脳内に響かせた。


「ああ、わかったよ。」


ツイハが意識を失って、秒針が一つ動くまでにテテンが目を覚ます。氷の巨人のもう片方の拳が差し迫っていた。


ツイハに乗り移ったテテンは、無の表情のまま拳を見つめている。それが自身に到達する目前。氷の巨人が腕の先からみるみると金色に発光し出した。


「これはボクのものだ。」


すぐにその光は身体を包み込み、巨人の動きは止まる。


静止を確認したテテンは呟く、


「 < 特定(でてこい) > 」


テテンのうちには周囲の情報が立体の地図のように見えた。そこで自分から遠ざかっている一際目立つ気配、サラを抱えて距離を取るカイを発見する。


「能力が持たない...。」


ガスを失った航空機のように飛行を実現していたカイも高度を失って、コンクリートの歩道を滑るようにして着地。


手足に重傷を負って動けないサラをそっと寝かせ、振り向き背後を確認する。


氷の巨人だったはずのものが黄金の身体をもち、間違いなくこちらへと向かってきている。


氷の巨人の主導権が取られたというわけか。


そして空中で佇む1人の賢き将、テテン。黙ってこちらを見つめていた。


「縮め。」


テテンは氷の巨人に向けていた手のひらを握る。


呼応した氷の巨人は全くの音も立てずに押し潰れされ、ピンポン玉ほどのサイズとなった。


次にテテンはカイたちの方を指差し、発光する玉は弾丸のように発射される。カイの身に恐怖が走った、カイの目には二つの太陽が映るのだ。


すぐに地面から隆起する分厚い氷の壁、サラを抱えてドーム状のトーチカを形成する。


そこに光球は着弾した。一瞬の静けさがあたりを包み、そしてエネルギーが拡散した。


周囲の建物や人々、車。光の奔流にさらされたものの全てが一瞬にして塵のように消し飛ばされる。光は周囲を破壊し続けて、そのうち勢いを無くす。


世界が静けさを再び取り戻した時。

更地とも呼べるクレーターの中央、氷のドームが崩れた。


「なかなか氷というのは厄介だな。」


口から流れ出る血、目線は天使の方に。


サラを守るようにしながら、カイは決死を結ぶ。

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