冗談めいていた
「ボクを纏えツイハ。」
しゃれこうべの手がツイハの目を優しく覆い隠した、彼は目を瞑る。
何かが自分と一体になるのを感じてから彼は目を再び開く。片方の瞳は金色に燃えていた。
「へへ...なるほどなぁ!!」
彼は両手を広げて歓喜する。彼の頭を巻く金色の光輪、そしてテテンと同じ純白の天衣。
彼が手首をくるりと回すと呼応したかのように
背後にある外濠の水が宙に浮き上がるのだった。それは渦を巻いている。
先端はドリル状に回転しており、鋭利だということは目に見てわかる。
今度はその手を激しくサラに向ける。すると水の渦は蛇行して彼女に向かう。
それのスピード凄まじく、到達までの時間はまるでなかった。
反射的に <恋の龍> が彼女を庇う。
「ガアアアッッ!!」
龍の胴体を表面から内側に激しく削っていった。
そして龍はガラスのように砕ける。その間大きく背後に跳躍したサラに直撃することはなかったが、
鋼鉄のような鱗ですらも薄氷のように扱うツイハにサラは慄く。
冗談めいた威力だ、もはや感心する。
「まるで魔王じゃん...。」
破壊された <恋の龍> を再び使役するには時間が必要であり、この状況下では無限にも等しい。
彼女は身に纏っていた数少ない龍の鱗でツイハを相手する必要がある。
さっそくや勝算は皆無だろう。
侮っていたわけではないが、このときはツイハの異変に気づけなかった自分を責めた。
逃げても仕方がないのは当然。ならば命の全てを費やしてでも“仲間“のために、できる限りのダメージを与えておかねば。
全ての龍の鱗を脚部に纏わせる。鉤爪を道路に食い込ませてから彼女は飛躍。
斜め上に跳んだ彼女は200メートルほど上空に辿り着く、ビル群よりも高いところだ。
それでも竜巻は自身を追ってきていた、生物のようにうねっていたその様子はまるで大蛇だ。
とりあえず距離を離すことが優先。単純な思考だが、能力の有効範囲には限りがある。
サラは全身全霊を注ぎ込んだ身体能力でビルを蹴って距離を作り出し、そのうちドリルの回転音は聞こえなくなった。しかし4つ目を越えたところで高層ビルの影に見えたのは、天衣のツイハであった。
彼は少し体をうずめると3対の翼がはじけ、無数に弾けた羽が追尾式のミサイルのように弧を描きながらこちらを狙う。
空気を切り裂いて、鋭い音を鳴らしながら急行。サラの反応速度よりも僅かに上回る。
予見はしていた、ゆえに足に纏った鱗を満遍なく体に散らせる。
空中での制御が不可能なサラには避けることなどできない。そしてすぐに羽の欠片は着弾していった。
ほとんどの羽が彼女の身体を切り、そのうち数枚がぐさぐさと手足に突き刺さる。
太刀打ちどころではない。
手足は動かず落下による死亡を覚悟する。莫大な代償を払って衝突を回避したとしても、目を光らせたツイハが確実に殺しにくるだろう。
希望が体から抜けていくがわかる、そこであの冷たさを感じた。
...
いつのまにか、彼女は抱えられていた。朦朧とした意識をよそに思わず口にする。
「これは夢...?カイがなんで飛んでるの...。」
空中を浮遊する人物は、ぼろぼろに流血している。それでも彼は腕の中にいるサラに笑顔を見せた。
「<カタルシス↓↓>、重力の性質は俺が奪った。」
宙に浮かぶもう1人の人物は不快を顔に浮かべる。そんな彼にカイは涼しい視線と言葉を一つ送るのであった。
「なぜお前が <魔王> となったか...などどうでもいい。だだしその“パジャマ”はたいそうお似合いだなァ。」
「く......カイっ!!」




