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第二の災厄

「ロイさん...稽古ありがとうございました...。」


----


鱧男とシャルテの戦闘が終わる頃、カイは暇をしていた。


キューテストの第二拠点、ニコという街にある研究施設。


眩しいくらいの電灯の下で整頓されたあまたの薬品。多くの波長を記録したであろうパネルが研究室にずらりと並んでいた。


そのうちの丸椅子に腰を下ろしたカイ。着慣れない白衣に身を包んで、白いデスクに溶けるように伏している。


ながらも分厚いガラス越しにぼんやりと光る“金色の太陽”を見つめていた。


「カイさん...本当ごめんなさい。最低でも回廊の1人が“太陽”を警護するべきだって、勝手に私たちが決めてしまったので。」


背後で研究員の女性が気まずそうに言う。


天座であるレイ・リンの下につくシャルテやカイ、ベルトランなどの鮮鋭は <回廊> と呼ばれている。


彼らは高い戦闘力を持ち、組織の中枢を担っていた。


「いいんです、ヒラノさん。一番暇な俺がすべき任務なんですから...。」


「研究主任のクローガさんも燃料切れで有給を取ってしまいましたので。」


「ああ。あいつも休み中心で生きてるからな...最近は妙に張り切ってたけども。まあ“太陽”を回廊レベルが守るべきってのは俺も同意っすよ。」


カイはだらだらと意見を述べた。この任務も学園帰りに行っているから疲労と合わさって面倒なだけであって、そう苦痛ではない。


「“太陽”は 高度 ナ 物 ですカラネ。」


「誰。」


カイは重い体を起こして、その声の方向に目を向ける。


妙な静けさが研究室に漂った。


「何なんだ...。」


カイの視線の先に佇む生物は赤黒い肉塊であり、その触手のような腕が床を伝っていた。


蛸のようなうねる腕とその佇む本体と思しき紅い身体。その中央の眼はこちらを見つめていた。口などの発声器官は見つからない。


研究員のヒラノは研究室の端で愕然としていた。


「太陽の 返還に 承りまシタ。代表者はアナタ ですカ。」


いくつもの警備を掻い潜り、その気配の片鱗をも見せないこの生物にカイはどことない恐怖を覚える。


「宇宙生物...第二の災厄。」


ヒトに備わったグランという器官の源であり、100年前に人類の多くを淘汰した生物である。

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