恥ずかしい死に心地
三田奈学園に転入してから3日が過ぎた。
流石に他のキューテストが教員として現れることはなく、
クローガが教師として現れてくれても...とは少し期待したものの、それはそれで大変そう。
隣の席のユメアとは仲良くなった。不思議な雰囲気の子だけども、会話に底が見えないから楽しい。
ーー現在、午後の授業。科目は国語。
さすがに昼下がりの心地よい日光に照らされて、食後なのと合わさって眠気が私を襲う。このレイ・リン先生は3人が眠りについた途端、チョークをミサイルのように発射してくるシステム。
既に2人、もちろんカイと隣のユメアが深い眠りについている。あと1人がわたしになるかもしれない。
耐えろわたし、あのカタパルトは万が一わたしに当たればまずい、死ぬ。キューテストだからってきっと手加減もしない。
だが大丈夫。このくらい強い意志があればきっとわたしの意識は保たれる！！
ははっ....わたしの勝利。
サラは両手を強く握り締め俯いて、俯きながらいやらしい笑顔を浮かべる。
...
...
あれ？
目の前にはどこまでも広がる花畑が広がっていた。やさしい風がそっと肌を撫でて、涼しげな川のせせらぎが聞こえる。
サラの机と椅子のみがその花畑の中央に位置していた。
授業中だったよね...？
ここはなんて心地がいいんだろう、向こう岸に見える花はもっと綺麗だな。
実にステレオティピカルな彼岸と咲き誇る花。
...
まさか、三途っ！
微睡みが晴れてサラの脳天には矢のようなチョークが直撃していた。サラは過信していたのだ。強い意志さえあれば眠気も持ち堪えられると。
しかし現実は非情、他に寝ていたカイとユメアはキリッとした視線でどちらも避けていた。
脳天には凄まじい衝撃が走って、意識が吹き飛びそうになる。周りの生徒がサラの狼狽える姿を見ていた。
その様子にレイ・リンはニヤリと笑う。
「死ぬ“っ！」
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日が赤くなり、号令を済ませて各自が帰路につく。
「またな、サラ。」
カイは乱雑に教科書を詰め込んだ鞄を肩にかけて、適当に手を振って帰る。
「ばいばいカイ。ユメアは帰る？」
「ごめん、サラ。今日はちょっと用事がある。」
「うんわかった、また明日。」
隣のクラスのアズキも部活動やらと言っていたし、ロラも既に帰っている。シャルテに関しては少し気まずいのだ。
1人での下校を決意し、静かになった教室を出てゆく。夕日に染まる階段を駆け降りて、ツクツクボウシの寂しい声が聞こえた。
少し涼しくなったような空気、学校を出る。
5分ほど歩いただろうか、路地に出る。煉瓦造りの建物の横を通っていた時、背後から声がした。
「あの...ムツキさん。落としましたよ。」
「ん？」
振り向くと同じクラスの女子生徒が立っていた。茶色の髪が肩まで伸びていて、頭の左にサイドテールが結ばれていた。
左腕で大きなくまのぬいぐるみを抱えており、右手にはサラの財布が。首と両脚、両腕までもが指の先まで白い包帯でぐるぐると巻かれており、異質な雰囲気。
「サイフ拾ってくれたの？確か同じクラスの、アンだっけ。」
「うん、覚えててくれたんだ。」
サラは彼女に近づいて彼女の差し出した財布を受け取る。
「ありがとう...。」
「うんいいよ。」
「何かお礼しないと...今かr...。」
「お礼？そうだよね、もちろん厚意にはお礼が必要だよね...。」
「え？」
アンという女子生徒はその”お礼“という言葉に強く反応したようであった。
「じゃあ ”金色の太陽“ くれるよね？」
言い終えた途端、彼女の両瞳は濁ってからドクロの形に変わる。あまりにも不自然、そして急な強襲にサラは戸惑う。
「何、この子...？」
