三田奈学園へ
「キューテストがこんな堂々としてるのも変だ。」
「それは君にも言えたことだろ？サラ。」
学校での計画は、事前に打ち合わせをしていた。
目的はかつて三田奈学園に通っていた皇帝の情報を入手すること。しかし非常に繊細なプロセスを踏む必要があった。
とりあえずサラは、普通の生活を送ればいい。“金色の太陽”を手に入れた張本人ということもあって、何かしら狙われることは予想される。
彼女がいることによって、皇帝の情報漁りは見事にカモフラージュされる。だが当然、戦闘経験の少ないサラが捕えられてしまうかもしれない。
カイは、そのカウンター材料としてサラの護衛に努めることになる。
生徒の数も増して、コンクリート造りの角ばった学園に到着する。門の前には立派に三田奈学園と書かれた標が置いてあった。
アスファルトを踏み越えてサラとカイは、国の最高峰の学園へと入門した。
彼女たちが学園へ立ち入ったあと。後ろにいた生徒は、ふと立ち止まって学園を見つめる。
黒髪赤目のこの青年。彼はのちに魔王達を混沌の運命へと引き摺り込むことになるが、当の本人はその気配にすら気づいていない。
目を細めてあくびをして校内に踏み込む、彼の名は“ツイハ”。
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サラにとって初めての共学だったので男子生徒とすれ違うことに新鮮な気持ちを抱えるのだった。
彼女は何人かの顔見知りや友人と挨拶を交わしてから、朝日の照り込む教室、4-Aに入る。
カイも同じ組に割り振られたらしい。
先のキューテスト襲撃で壊滅的被害を受けたサラの女学校から流れ込む生徒も多く、ちょうど学年の切り替わる変わるタイミングだったので彼女達の多くも組み込まれることとなった。
そこである生徒と目が合う。
「アズキじゃん！」
前の学校での親友と3日ぶりの再開。サラにとって実に多くの出来事があったので、こうして日常で再開できるということはなかなか感慨深いものであった。
「ねえ、ニーナにチクったでしょ。めちゃくちゃ怒られたよ。」
「私だって心配だったんだから、ほんとキューテストを倒しに行ったのかと思ったよ...あの時何で出て行ったの？」
「あれは...。」
そのような会話の様子を眺めていたカイは突如、その会話に参加する。
「知り合いか？サラ。」
「うん、前の学園からの友だちだよ。」
「へえ、よろしく。俺はカイ。」
カイはこの少女を知っていた。彼女はラウルスの令嬢、アズキ・メイノである。今後利用できるかもしれないと思い、とりあえず知り合うこととしたのだ。
カイがアズキに挨拶をしたところで、サラの目には、異様に存在感を放つ数名が写っていた。
窓側の後ろ方の席にはキューテストのメガネの女性、自身の殺害を提案した者。目が合うと少し気まずそうに視線を逸らすのだった。
そしてその右隣には、先日怪我をしたレインを介護していたロラという女性が座っていた。こちらをやや睨むような感じで、どことなく威圧感を感じるのだった。
ーーめちゃくちゃ“キューテスト”に侵食されてるよ、このクラス...。
「サラ、名前と座席が書いてあるよ。」
アズキは黒板を指差すのだった。
サラはその付近に移動をすると、座席表を確認した。「ムツキ」という名前は窓の方にあって、後ろにはカイの名前があった。
アズキの名前はない、どうせ隣のクラスから茶化しにきたのだろう。
カバンを机の横にかけて、着席をする。
「よろしく。あなたの名前は？」
隣の窓際の席には、不思議な気配の女子生徒が座っていた。
その生徒を見ているとまるで、果てしない宇宙と星の光を見ているような気がした。
「サラ...です。よろしく。」
この少女。ソーダのような爽やかな青白の髪と、”金色の瞳“。
「私はユメア。サラちゃん、よろしくね。」
