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黄色のグッドマーク

サラは自室のテレビの前で細長いポテトの菓子を頬張っていた。


ピンクの謎生物のもちもちとしたぬいぐるみを抱いて、部屋着でただくつろぐのみ。メイドのニナには転校の準備をしろと言われているものの、いまは特にやる気がない。


「え、え!?」


ーー神楽ヒルタウンは、爆発によって壊滅的な被害を受けており...。ーー


テレビの速報はとある街の壊滅的被害を写していた。それも昨夜まで自分がいた場所である。


「拠点が...。」


自分の居場所をやっと見つけられたのに、そこを失ったことで何か心が宙に浮いたまま着地をしないかのような感覚に陥る。


ーー先の汚染物質と似たような性質を持つ波長が記録されたことから、超自然対策委員会は“魔王災害”であると発表しております。


もはやどれが拠点の残骸かもわからず。皆は無事なのだろうか、この爆発はなぜ起きたのか。金色の太陽は、と様々なオーメンが思考をむさぼるのだ。


幸い、昨晩キューテストのグループチャットには加入していたのでサラは勢いよくスマートフォンを拾い上げる。


3件の通知が来ていた。パスワードを2度打ち間違えたのち、解錠される。


しかし、会話内容はサラの想像していたものとは違っていた。


ーーレイ・リン「拠点ごめんつぶれた!」11:34送信


それに対してクローガとレインの2名は黄色のグッドマークを送信しているのみ。他のメンバーは既読をしているか、それすらもしていないか。とにかく誰も深く気にしている様子はないのだ。


すると短いバイブレーションが鳴る。それはレイ・リンからであった。


ーーサラ、明日は普通に登校してね。


なんとも言えない安心感である。魔王災害やら拠点やらで頭が回らない、とてもに安心すべき状況ではないものの生物の本能だろうか。


自分より実力のある者が焦りを見せていなければ、それに対する安心感というものがどこかより漂ってくるというもの。


まあこれでいいのか...。


さらっと了承の返信を差し出してスマートフォンの電源を切る。自室のテレビの音は耳に入ってこず、ベッドに寝転がって天井を見つめる。


「明日の準備するか。」


その日は教科書やら登校ルートの確認をして、事前に用意されていたスープと飯を食う。

誰とも肉声の会話をすることなく、日は沈んでしまった。


「ねえサラマンダー。わたしに必要なものはなんだと思う?」


寝転んで漫画を読みながら、ふと自身の能力に問いかける。なぜそれが気になったのか、自分でもはっきりとはわかっていない。


サラマンダーは潜っていた布団の下からひょこっと顔を出すものの、サラに円の目を見せてから首を傾げるだけ...。


サラもその顔を静かに見つめるだけであった。とくに考え事があったわけでもないけど、どこか疲れたような気がして眠ってしまう。


新しい日が登る。


前とはほとんど変わらない黒を基調とした制服。襟には紫色の線が入っている。


「よし、完了。」


日を浴びて、通学路を歩む。新しい靴はややずれて痛いものの、革製は最初はそんなものだろうと深く考えることもせず。


「な、君も転校生か?」


学生がちょうど多くなってきたところで、サラは何者かに話しかけられる。


その声の方向に顔を向けると、その場にいたのは、“キューテスト”のカイ。


ーーなぜもこんなにきな臭いのか、彼らは。

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