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見つめる世界は形を戻す

戦後使われなくなった、高架下の影が覆い隠していた顔が晴れて、レイ・リンの表情は明るさを取り戻す。


「コンビニ寄ってもいい?」


「うん。」


「...コンビニって、最近流行ってるでしょ。」


「うん。学校帰りに友達とよく行ったりします、アイスクリームとかお菓子とか...色々あって面白いです。」


青と白に光るサインに包み込まれて、冷えた空気の中へと誘われる。


「実は...200年前にもあったんだよね。戦時中になくなって、そのあとも多くの資料が失われたから”コンビニ“って言う存在は最近まで姿を隠してた。」


入店音が響いて、ゆっくり歩きながらあれやこれやの製品を眺め。


「そうだったんだ。」


「今はあの頃...200年前に戻りつつあるんだ、生活も。この荒れた世界も形を取り戻していつつあるんだよ。」


レイ・リンは氷菓のコーナーで立ち止まり、ブルーソーダのアイスキャンディーを手に取る。


「キミは好きなアイスないの?」


「私はこのポップホットが好き。アイスなのに弾けるし、辛いので。」


口の中でばちばちと弾けた後に燃えるように口内で広がる辛さがなんとも刺激で、クセになる味わい。


「結構おもしろいの選ぶんだね。」


その長方形の袋をサラは手に取って、彼女たちはレジへと向かうのだった。


無愛想な店員との会計を終えて、アイスキャンディはレイ・リンが奢ってくれた。


コンビニの前に立って、袋を手でつまんで開けながらサラは魔王に問いかける。


「ねえ、レイ・リンさんは魔王になって...次に何を目指すの?」


「この国を、200年前の形に戻したいんだ。」


「え。」


目は遥かを見つめていて、なにか先ほどのレイ・リンとはまるで違うような。魔王の気配を感じない自然の彼女を感じた。


「でもそのためには、ある人物を倒さなきゃいけない。」


「そのある人物って、誰ですか?」


皇帝(・・)。その者は、強大な力を以て私たちを含めて全員を狩るつもり。


このコンビニや私たちの生活のように、世界は厄災とは離反した元の姿に戻りつつあるのに。」


ーー「そこでね、サラ。もし私達と協力して皇帝を、この国を倒せたら...。」


レイ・リンはアイスキャンディーを大きくかじる。どこからか風が強く吹くような感じがした。


ーー「私の<魔王(グラン)>を、キミが喰らえばいい。」


魔王の言葉に誇張はなく、ただ現実と報酬をこの龍の少女へと突きつける。心臓にまで響いた言葉は、サラの欲を火花が走るように底から駆り立てるのだった。

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