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爆発的脅威

学校は昼休みが終わりを迎えるころであった。サラはカレーパンを食べながら、空を眺めてぼーっとしていた。


気まぐれに空の青さやらに思考を向けていると、異変に気づく。


目線の先より一機のヘリが上空より近づいてくる。


サラにとってそれは生まれて初めて見るものであり、それが軍用機であることなど到底知らない。


彼女はそのヘリが放つ兵器特有の威圧感と、禍々しさに自然と意識を向けていた。


「ピピロロロロ!.....空襲、空襲、空襲。」


サラの頭上より近づいてくる、ヘリの存在に呼応するように警報が鳴る。


鋭い割れたような機械音声が空襲警報を響かせていた。


ここでは、空襲警報はたまに鳴るものだが大抵誤報であった。そして何かが実際に起きたとしても、「自分は大丈夫だろう」と正常性バイアスが働くものだ。


耳障りな警報をよそにクラスで騒ぎはない。甲高いアラートのうるささにしかめっつらの生徒がほとんどである。


けれども、サラだけはあの機体の目的に気づいていた。


「奇襲だ...。」


クラスの落ち着きを取り払ったのは、一つの爆発。


爆発は風船が割れる音に威力を加えたような音だ。クラス中の窓が圧で押され、割れはしないもののクラスの生徒は窓が波打つ感覚を覚えた。


生徒たちは硬直した。雷が落ちるかのような爆風に対する生物としては最も普遍的な反応。


しかし、サラだけはまるでライブコンサートのバズーカ音を聞いたかのように圧倒はされても飲まれることはなかった。むしろ彼女の心が沸き立てられた。


それから4秒、5秒と静寂が続き...


「キューテストだ!!」


そう叫ぶのは隣の男性担任だ。怯えきった心を搾り尽くして出した声だろう。


サラの隣にいたアズキは爆発音により思考がやや停止しつつも、続けて心臓が凍てつくほどの不気味な気配を感じた。例えるなら鎖に繋がれた獣が放たれたかのような。


そちらの気配に目を向けるといたのはサラ。彼女はすでに走り出していた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「あの時の気配は、私も感じたよ」 


老人は火の海を見つめながら切なさげに呟く。


「ああ、もうすでにいるじゃないかと」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


学園に降下したキューテストたちは、目標数のグランを回収して、狩りを終えるところであった。


上空のヘリで待機をしている彼らの仲間の1人であるレイン。彼女は人のような形の影を操ることができた。


「15.....16.....17、18体あるぜ。グランはせっせとレインの傀儡が運んでくれてる。クズ血縁の未来ある女子生徒諸君に申し訳ないが、まあ...今までが幸運だったんだぜ?


...ロイ、もう十分か!」


兵士は殺害した者たちからグランを切り取って、それをレインの影の傀儡が運んでいた。


グランに内包された能力は非常に高値で取引される。そしてグランは切り取られた者もその時点で息絶える。


「数としては十分だな。だがグランは丁寧に切り落とせよ。買い手の連中は状態にうるさいんだ...あと俺はせっかくだし上物を探してくるぜ。」


ロイはどことない気配から“上物”の存在を予感していた。息を殺して潜む生徒たちを横切り、その気配の方向へと向かう。


ラベンダーは血に塗れていた。オアシスのような中庭はもう見る影も失った。


廊下は歩く足音が何重にもなって響くほど、場は静寂に包まれている。


「お?」


ロイが気配を辿っていると、桃色の髪の生徒がこちらへと歩いてくる。


金色の瞳を輝かせた彼女。その様子に怯えはない、サラであった。

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