君に降る
レインたちにとって光の王の攻撃は厄介となった。
先ほどまでとは違い、威力が落ちている。その代わりにその次に撃たれるまでのブランクがほぼなし。
レインは影を自身に纏う技術「入」を使って身体能力を上げても、飛んでくる星屑のような光子は避けきれず。ゆっくりとレイン達の体は斬られてゆく。
双子のアウとロラにとっても同じ。彼女達は赤色矮星を作り出そうとしているものの光子を躱わす必要があったので、転移しつづけていた。
ゆえにまともに作り出せていない。
何よりもレイン達は感じていた。この無機質な光子はまるで弾幕のようで、光の王がただ握っているだけその虹色に煌めく剣こそが本命なのではないのかと。
やがて声を振り絞って、これに対する嫌悪感を抱きつつも3人は呟く。
「吸血兎」
それは、人間と似て非なる者。18世紀にエカチェリーナ2世が発見したと言われる、家畜の血を吸う兎。
時代の流れで伝承はヒトの形となって、蔓延る。なぜヒトと同じ形に進化したのかは誰も知ったことではない。
少なくともレイン、アウとロラは自らを人間だと思っているし、天を指す耳を生やして遠のく自我に身を委ねたくないものだ。
しかし状況が状況なので受け入れないという選択肢はなく。
彼女たちから獣の耳が生えて、爪とその牙が伸びる。妖艶と本能のどちらも纏って彼女たちは回帰する。
持久力を犠牲に身体と行動のキャパシティが増大。
レインは直接殴りかかることも考えたものの、下手に近づけない何かを感じていた。
なので自身の影の世界から多くのものを誘うことにした。
顔を顰めたレインはルフトを指差す。
背後から現れるのはマッハ2.3。風を切り光子を貫く雄猫はレインは自身の影に潜めていたもの。
やっと人間らしい驚いた顔を見せたルフト。ついに煌めく虹のつるぎを下段に構えて、戦闘機を迎え撃つ。
空間を破くような爆音。黒い煙をかき分けて、ルフトは埃で少し汚れた程度。
ーーやっぱりあの剣、絶対相殺...。
ルフトは少し表情を歪めて、レインに意識を向ける。上空のアウは長い耳を揺らして叫ぶ。
「今!!!」
赤色矮星は再び地に降る。
「鬱陶しい!!!」
爆発の最中、ルフトは虹色の剣を力任せの振り、赤色矮星と全ての砂埃を撥ね飛ばした。
そして彼は再びの上の気配を察知して真上に視線を向ける。
レインの潜めていた、畳み掛けるように落下するビル群。その圧倒的質量を以てルフトに降り注ぐのであった。
「君に降る...。」




