禍の意地
「ベルトラン、理不尽じゃねえか?ロイが死んだのも正当防衛だし、実力も証明されてる。レインも仲間にすればいいと思って連れきたんだろう...?」
メンバーの男は頑固なベルトランを宥めるようにいう。しかしベルトランは表情を一切変えぬまま、
「じゃあ、嬢ちゃんに聞けばいい。うちのミッションに同行しろ、ただしふざけた野郎と共にだ。そしたら俺らは認めてやる。」
サラは頭を下げる。彼ら、特に魔王レイ・リンの魔性には意地でも食らいつきたい、その思いから懇願する。
「問題ない...お願いします。」
レイ・リンはフッと笑うとテーブルに身を傾けて言う。
「じゃあ決まりだサラ。今日は家族のもとに戻りな。学校は...私たちが破壊したか。送って行くよ。」
言い終わった途端にガスの重い匂いが鼻を突く。振り向くと、クラシックな黒色の車両がドラムのような低いエンジン音を轟かしている。
一体どこから出現したのか、キューテストの誰かの能力だとサラは勝手に納得をした。
後部座席の扉が開いてサラは立ち上がる。ロイにつけられた傷は痛まないが、代わりに身体が重い。
「では、また...。」
サラはレイ・リンの顔を見て言う。彼女は微笑を浮かべていた。
車両には白い仮面をつけたスーツの男が運転席に。喋り出す気配もなく、無機質に感じた。
サラの後、レインも車両に乗り込み、走り出した。
「レインさん、色々とありがとう...。」
「勝手に拉致しただけだよ、気にしないで。」
サラは、悔しさを拳に握りしめる。
「うん、でも怖かったです。気配で動けもしなかった...。」
「最初はそんなもんさ...。」
レインはそっと言葉を添えた。しかし窓の外に目を向けて思う。
ーー逆だよ、サラ。恐れたのは私たちだった。気配の禍々しさは正直レイ・リンさんを超えていた...。
「ところでレインさん、一緒に行動するクローガさんってどんな人なの?」
窓の方を向いたまま答える。
「何を考えているかわからない男だよ。無口でおとなしそうな顔をしているが...獣だ。」