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【祝2000pv!】ケモミミ傭兵お仕事日記   作者: 広報部のK
【第四章】ケモミミ傭兵、絶望と涙を添えて、行きます
37/45

【第一話】休暇終了。対カルト作戦開始のお知らせです

「......」

『何やっているんだ』

「黙祷」

『誰に』

「ベルリンの壁を乗り越えて死んでしまった人たちや、その他の人に」

 僕は傭兵という職業であるため人殺しは当たり前のようにやっているが、それでも命を尊重する気持ちはある。

「そろそろお昼を食べに行こっか」

「うん.....」

 横で一緒に黙祷を捧げていた雪に声をかける。何か元気のなさそうな返事だったけど、涙を流しているみたいだから、昔のことに悲しんでいたのだろう。

「はいはい泣かない泣かない。過去は変えれないけど未来は変えれるから。ここで亡くなった人たちが望む世界にできるようにがんばろっか」

「そうだね」

 ベルリンの街は朝からずっと活気があった。主に観光客のせいだけど。

「おっと......?」

 談笑しながらレストランに向かっていた時、嫌な奴らの姿が目に映った。

「ねぇ雪」

「何?」

「別のルートで行こっか」

 すぐさま180度回転して逃げるが、運悪くバレてしまった。

「よぉ仁。嫁さんとデートか?楽しそうだな」

「バンパー......なんでお前らがここにいるんだよ!ていうかただの旅行だから旅行!デートじゃないんだから......」

 話しながら人の少ない近くの公園に向かう。理由は簡単だ。バンパー、ハス、ガスター。この三人が揃ってたら何かしら事件が起きたってことだ。おそらく僕をわざわざ呼び止めたのもその話をするためだろう。

「んで?何か話でもあるの?」

「お前は勘がいいな」

「お前ら三人が揃ってたら何かしら起きたっていう法則がある」

「その証明は」

「今はいいだろ。ほら本題。何かあったんじゃないの?」

 そう言うと、ガスターはバックの中からノートパソコン取り出した。画面には複数の防犯カメラ映像が映っていた。

「これは......防犯カメラ映像?」

「その通り。深夜の駅での映像だ」

 映像の中では三人の男が銃を持って移動しているのが見え、その後にカメラが破壊された。

「ここに映っている路線って?」

「これは三日前の映像なんだが、その日に唯一動いていない路線があった。これもそこの路線だろう」

「当局に聞いた話だと、どの路線には警備はあまり配置していなかったとのことだ。そして深夜でより警備のいない時に入り込まれたのであろう」

 横で見ようとしている雪を静止させながら、思考を巡らせる。まずこいつらは誰なんだ?そして銃を持って何しに来てんだ?

「今のところ財団はカルトだと仮定して動いている。それで俺らが調査できたわけだ。他のメンバーもな」

「これ......僕の休暇無くなるの?」

「その通り」

 ガスターの感情のない返答が、僕の心の中に突き刺さる。

「雪。どうやら僕の休暇は無くなったみたいだ......」

「うそ......」

「とりあえず替えの日は用意しておくから......マジで追加料金出させてもらうからね!」

「勝手にしろ。でもカルトに唯一精通しているのが財団だ。どのみち対応しないといけない」

 バンパーはそう言ってG17を渡してきた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


G17。オーストリアの銃器メーカーであるグロック社が開発した自動拳銃の一つ。9mm弾を使用しているため、反動は比較的小さく、初心者でも扱いやすい一品となっている。またカスタムパーツが多いため、さまざまなニーズに応えることが可能となっている。

 余談だが、僕の部隊でも半数以上のメンバーがグロックを使っている。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「グリップには滑り止め加工。スライドも同様だ」

「ほうほう」

 スライドを引いて感触を確かめる。確かに滑りにくいな。これをカスタムした人は「天才」と言うべきだろうか。

「マガジンバンパーを追加し装弾数増加。サイトはドットサイト。アイアンサイトは見て貰えばわかる。俺は説明が苦手なんだ」

「OK分かった」

 グロックを内ポケットにしまって立ち上がる。とりあえず雪を安全な場所に移動させないと。

「お前らは先に昼飯を食べたらどうだ?元々そのつもりだろ?」

「え?でも危ないんじゃ......」

「その点は大丈夫だ。この周辺には財団警備部隊が巡回している。そうそう危険なことは起きないだろう」

「そう......ならお言葉に甘えさせてもらうよ」

 とりあえずお腹を満たそう。腹が減っては戦ができぬっていうでしょ?それと同じ要領だよ。

         △ △ △

『警戒しろ』

 雪と楽しく食事をしていた時にダストに話しかけられた。

「敵でもいるの?」

『そんな感じのやつがいる』

 周りを見渡すと、確かにそれっぽい人がいた。大きな体にコート、そして海軍が被ってそうな帽子をかぶっていた。あれ?どこかで見た気が......

「あれって......イヴァンさん?」

 そして「イヴァンさん」と思わしき人物はそのまま一直線でこっちに向かってきた。

「君があの時の狼傭兵の仁か」

「えっと......イヴァンさん?」

「その通りだ。このレディはお前の妻か?」

「まぁ......ちなみになんのようでしょうか?」

「それについては後でだ。やること終えたらこの紙に書いてある場所に来い」

 彼は一枚の紙切れを僕に渡し、そのまま人の波に消えていった。

「彼の方はどちら様だったの?」

「彼はトカルストで出会ったライトキーパーだよ」

 ちょっと情報整理がしたくなってきた。今のところバンパーらによると、ドイツにはカルトがいるかもしれない。そしてイヴァンさんが来たことは、それを裏付ける証拠となるだろう。何せ、彼とは対カルトでお世話になった人だ。今回もそれ系の話だろう。

「一年越しにカルトの復活か?また忙しくなりそうだよ......」

 会計をしながら小さくつぶやく。

『あいつらが行動を起こすとしたら、それは無差別テロだと思う』

「と言うと?」

『トカルストで見た資料は覚えているか?』

「カルトがテロを起こすってやつね」

『反応無くなってから一年だ。その間に毒ガスの開発は終わっているだろう。当初はまだ強力ではないが、奴らの能力を考慮すると......』

「大規模無差別テロに使えるだけの毒ガスが完成している......ってことだよね?」

『確証はないがそうだろう』

 雪を説得してホテルに帰らせてから、指示された場所に僕は向かって行った。指定されたのは近くにあるホテル。

         △ △ △

「ようやく来たか。他のメンバーも待っている。早くしろ」

「はいは〜い」

 指定されたのはホテルはとても大きく、本当にトップオブトップの人たちが使っているような場所だった。従業員も含め、お客さんたちの服装はスーツ姿とかだった。

「ここで待ってろ」

 イヴァンさんについて行き、廊下の突き当たりについた時、彼は僕に待ってるように指示した。そして近くの従業員を呼び止める。

「ここの会員のイヴァンだ。アルケミストに用がある」

「イヴァンさんですね。いつもありがとうございます。ではこちらへ」

 従業員は目の前の扉を開け、僕たちを地下へと誘導していった。しばらく階段を下った後、僕は目の前に広がる光景に驚いた。

「すごい......」

 さっきまで殺風景だった階段とは打って変わり、地下空間にはロビーと似たような装飾を施されていたガンショップが広がっていた。

「お、来たきた」

「バンパー?なんでここに?」

「イヴァンに呼ばれてな。どうやら大事な話があるみたいだ」

 現在この空間には零号狼部隊のメンバー全員がいた。

「その通りだ。そしてその重要な話がカルトと関わること。対カルトで武器が必要と思うからここに集まってもらったんだ。アーマメント。ちょっとこっちにきてもらえるかな?」

 イヴァンさんは部屋の奥に向かって声をかけた。間も無くしてここの店主と思わしき人物が出てきた。

「紹介だ。彼がアーマメント・アルケミスト。武器商人......いや、ソムリエの方が合っているだろう」

「初めまして。アーマメント・アルケミストでございます」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


アーマメント・アルケミスト。40代のドイツ人の武器商人。武器に対して独自の哲学を有しており、武器を単なる殺戮の道具ではなく、「魂を宿す芸術品」として扱うとのことだ。

 彫刻のような端正な顔、鋭い審美眼を持つ瞳。そして服装は僕が今まで見てきたどのものよりも洗練されたスーツを着ていた。

 本人は依頼者が求める武器を完璧に提供するだけではなく、カスタムも承っているとのことだ。一番好きなのは|ヘッケラー&コック《H &K》社だそうだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「つまり対カルト用に17人分の武器が欲しいと?」

「その通りだ」

「そうですね......時間はかかるかもしれませんがよろしいでしょうか?」

「今日中には用意できそうか?」

「その言い方だとできると言わざるを得ないようですね」

 そう言うとアーマメントさんは店の奥に向かっていった。

「さて、あいつが準備している間は作戦会議だ」

「カルトの作戦でもわかったのか?」

 僕の横に座っていたジェイドが声を上げる。

「その通り。俺の情報屋としての能力を舐めてもらっては困るな」

 彼は大きな地図を取り出し、机の上の広げた。どうやらドイツの地図のようだ。

「前に仁に無差別テロのことを話したよな」

「そうですね。世界征服うんたらかんたらのためにするっていう......」

「なんか違うがまぁいい。そしてそのテロなんだが、現状決行日が入手できた。今から一週間後だ」

「場所は?」

「現状はわからない。もしかしたら気まぐれで場所を選ぶかもしれない」

 彼は胸ポケットからペンを取り出し、5カ所に丸をつけていった。

「あくまで俺の予想だが聞いて欲しい。おそらく奴らは世界に影響が出るような場所でテロを起こすと思う。だからまずはアメリカorロシア大使館」

「最初っからでかいものきましたね......」

「次にホテル。今日映画の撮影で使われているのがわかった。一週間後もだ。そこにいる有名な俳優を狙う可能性はあるだろう」

「ホテル......カメラをハッキングできるか?」

「ガスター、一回聞き終わってからそれ考えて」

「他には国際空港、ドイツ連邦銀行。そして最後にECBだ」

「ECB、欧州中央銀行。もしかしたらドイツのフランクフルトでテロが発生するんじゃねぇか?」

 確かに連邦銀行とECBはどちらもフランクフルトに位置している。また、フランクフルト空港という巨大なハブ空港も存在している。ここで起こされたら収拾がつかなさそうだ。

「それじゃ、俺らはフランクフルトへ。他の機動部隊は別箇所の警備をするってことでいいか?」

「バンパー。これはあくまでBlackOPsだ。そんな大胆に行動はできないってことだけ覚えとけ」

「そうだな。でも人数はわずか16人だ。これなら部隊行動しても目立たないだろう。みんないいか?」

 みんなからは賛同の声が上がったところで、この会議は幕を下ろした。

「おい、狼傭兵」

「はい」

「ちょっとこっちに来い」

 突如イヴァンさんに呼ばれ、店の奥に連れてかれる。

「一つお前に言わないといけないことがある」

「なんでしょうか?」

 彼は周りを訝しんでから口を開けた。

「お前らの中に裏切り者がいる」

「......はい?」

 あまりのぶっ飛んだ内容に、変な声が出てしまった。

「誰かはわからない。でも確実に裏切り者がいる」

「逆にあなたはなんなんですか?確かあなたはカルトと関係があったはず......」

「俺はあくまで情報屋としてだ。そしてこのホテルの会員はそのような人はなれない。だから俺は白だ」

「裏切り者......ねぇ」

 確かにずっとモヤモヤはしてた。バレるはずのない浄水場制圧任務。でも機甲部隊はいなかった。間違った情報でも渡されたのか?

「おや。あなたは先ほどの獣人様」

 ふと後ろからアーマメントさんに声をかけられる。

「ちょうどよかったです。他のメンバーの装備の準備は容易かったのですが、どうしてもあなた様のだけが難易度がありまして......それでなんですけど、どうせなら《《テイスティング》》していきませんか?」

         △ △ △

「まずはライフルといきましょうか」

 そう言ってアーマメントさんはショーケースを開けた。中には世界各国のカスタム済みの銃器が並べられていた。

「あなた様が一番好きな弾薬を教えていただけますか?」

「ニッチなものですけど、.300BLKっていうものが好きで」

「なるほど」

 彼はショーケースから漆黒に塗装された一丁のSIG MCXを取り出した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


SIG MCX。ドイツのSIG Sauer社が開発したモジュラー式の自動小銃で、軍事、法執行機関、そして民間市場向けに設計されている。同じAR系統の中でもかなりの高額品であるが、それに見合うレベルの本体性能を有している。使用弾薬は.300BLK。

 僕の愛銃のF46Tの元ネタとなった武器であり、.300BLKを使用する武器の代名詞と言っても過言ではない逸品である。また、第二世代として


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「私からお勧めしますのはドイツのSIG社が誇るアサルトライフルの一つ。SIG MCX VIRTSでございます」

 僕の目の前に出されたMCXは僕が見てきた武器の中でトップオブトップの美しさを放っていた。差し出された僕はそのまま持ち上げ、使い心地を確認する。

「ハンドガードはM-LOCKモデル。追加デバイスとしてMAWLレーザーデバイス、M300フラッシュライトを載せており、タクティカルアドバンテージを高めました。スコープは1×6倍ショートスコープを搭載。近中距離での交戦を想定しております」

 確かに使いやすい。デバイスの配置は全て計算し尽くされており、素早いコントロールが可能となっていた。

「グリップ周りには滑り止め加工を行いました。素手やグローブはもちろん、濡れた手でも滑りません。他にはどのようなものがご要望でしょうか?」

「えっと......バックアップ用でショットガンを。僕はショットガンには疎いので、あなた様のお勧めをお願いします」

「ショットガン。そして私のおすすめですか......」

 彼はもう一つのショーケースを開け、中からM590A1を取り出した。

「こちらはアメリカのモスバーグ社の傑作の一つ、M590A1でございます。テイスティングをどうぞ」

 促されるままに銃を手に取る。トカルストでも扱ったが、僕のようなショットガンとは無縁の人でも扱えるようなシンプルさになっている。さもないと、あの時扱うことができなかったからね。

「室内戦を想定してショートバレルを採用。ピストルグリップを使用しているため、従来品よりもレシーバー周りのコントロールが楽になっております。もちろん、滑り止め加工もありますよ」

 ポンプの部分をガチャガチャしながら耳を傾ける。確かにレシーバー周りの操作が簡単。これなら咄嗟の戦闘でも大丈夫そうだ。

「そして最後にデザートとして......」

 彼は机の下から何かの箱を取り出した。

「私自身が何時間もかけて研ぎあげた最高級のタクティカルナイフでございます」

 渡された一本を手に取って確認し、そのまましまった。

         △ △ △

 装備の準備が終わった僕は、他のメンバーと交換して、最初に来た広い空間(ラウンジというものかな)に戻ってきた。

「イヴァンさん」

「なんだ」

「なんでわざわざ僕らにここで用意しさせたのですか?」

 じりじりと近寄ってくる僕を静止させながら答える。

「ここでの装備調達のほうが楽だからに決まってんだろ。逆にどこでやれと」

「財団ドイツ支部」

「それは無理だぜ、仁」

 声をかけられた方に顔を向けると、アンダーバレルランチャーを備えたSCAR-Hもを携えたカルイがいた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


SCAR-H。ベルギーのFN社が生み出したSCARの一つ。7.62×51mm弾という大口径弾薬を使うバトルライフルの一種である。

 そしてカルイのはそれにアンダーバレルランチャーのM203を載せているという鬼畜カスタムだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「無理って?」

「現状ヨーロッパ圏とアメリカ圏の支部は装備不足なんだ。それもそのはず、対カルト部隊増設に装備を全部持ってかれてしまったからな。俺らに貸せるだけのものはないよ」

「なら店で買えば......」

「それも無理だね」

 今度はアイサが出てきた。

「私はドイツで滞在したことあるけど、ここで買うには一年近くの審査が必要なの。そんなには待てないでしょ?」

「そうだね......ならここで調達が最適解か」

 しばらく待ってると、全員が銃器を調達できた。

「ところでバンパー。装備はどうするの?」

 予想通りとも言える機関銃を装備したハスが口を開く。

「装備は航空輸送で送ってもらった」

「銃もそれでよかったんじゃ」

「ただし民間の航空機だ。変に財団の輸送機は飛ばせないんだ。俺らの輸送機が飛ぶは、ほぼ事件があったと同意義だからな」

「言い過ぎだと思うけど、理解はできるね」

 ソファに体を投げて一息つく。ただずっと一つの件が頭から抜けれなかった。

「裏切り者......ねぇ」

『心当たりはあるか?』

「全く。でもいる気はなんとなくしてたんだ」

 そうでもないと浄水場の話の辻褄が合わなくなる。でも一体誰だ?自分自身は己が一番わかっているから、僕は裏切り者ではない。となるとこの部隊のメンバーか

「雪か光君?それともその他?」

 でも証拠が少なすぎる。そもそもでそうじゃないと僕は信じたい。

『まぁ、せいぜい頑張れ』

「お前はなんか知ってることはないのか?悪魔だろ?」

『俺に予知能力はない。自分で考えろ』

「あぁもう!」

 癇癪を起こしたって何も変わらないのは知っているが、それでも起こしてしまう。

「さぁみんな。ちょっとこっちに来い。作戦の復習だ」

 むしゃくしゃいている時、イヴァンさんが招集の合図をかけた。

「おそらく「なぜお前が指揮をとっている」と思っている人がいるはずだろう」

「実際俺はそうだ」

「カイン。お前は黙ってろ」

 バンパーの制裁に不満を抱えながらも、カインは口を閉じた。

「ゴホン。そろそろ本題に行こうか。今俺らがここにいる理由は分かるだろ?」

「対カルト作戦ね」

 M14 EBRを抱えたマリーが答える。流石は選抜射手マークスマン、カスタムも使う武器も考えられてる。

「その通りだ。現状、カルトはドイツの3カ所でテロを行う予定だ。そして最有力候補はフランクフルトだ」

「さっき調べたらこっからは最速でも五時間ほどはかかる。事前準備をするなら早めに行動することをお勧めする」

「あぁ、その通りだな。てことでブリーフィングは終了だ。装備はこっちで一旦回収する。後ほど滞在してる場所に送らせてもらうぞ」

         △ △ △

「お帰り〜」

 ホテルに戻ると風呂上がりの雪が出てきた。

「ただいま。また仕事が入ってしまったよ」

 雪の目を見つめながら話す。僕は信じたくなかった。彼女がスパイだなんて。

「そうなの?旅行計画どうしよう......」

「また次回はどう?この任務が終われば絶対休めるんだし」

「そうだねぇ......でも心配なの」

「心配?」

 雪が下を俯きながら呟く。いつも心配心配と言ってる雪でも僕が絶対帰ってくるのは知っているはずだ。でも今日のはやけに暗い。

「うん。カルトも本気を出すんでしょ?それで仁が死んでしまったら......って考えちゃって」

「大丈夫。昔に約束したでしょ。何があっても帰ってくるって」

 僕はこの15年近く、ずっとそのことを守ってきた。どんな高難易度任務に行こうが、僕は必ず5体満足で帰ってきた。今回も大丈夫なはず......だ。

「僕を誰だと思っている。狼傭兵の月夜仁だよ。問題はない」

 笑顔で雪に語りかける。でも内心では怖かった。大規模部隊に室内戦で勝ったことはある。でもそれはせいぜい他のPMCだ。カルトの方が圧倒的に練度は高い。そして今回は精鋭も出してくるだろう。

「大丈夫。ほら笑って」

 それでも僕は笑顔を作る。そうでもないと生きてけないからさ。理由は特にないけど。


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