【第二話】危険はいつも突然に
室内戦において、みんなは何が一番大事だと思う?索敵能力も大事だし、ワンショットワンキルできるエイムも大事。でも僕個人的には…
「どんどん行くよ!」
ノリと勢いが大事かな(?)
『これが特殊部隊の兵士とは思えんな』
「今はルールも何もないから、自分に合った本当の戦いができるの!そこぉ!」
ダァァァンダァァァン!!
カーディーラー内では僕の奇襲に慌てたスコンドラーがどうにか持ちこたえようとしている。しかし、無線がないのか実戦経験があまりないのか連携はあまりうまいとはいえるものではなかった。
「さすがに頭の出し過ぎはダメだな」
頭を隠してリロードをする。さてとここからだ。いくら彼らは連携が取れなくても、牽制射撃は想像斜め上にうまかった。頭を出そうとする場所にキレイに撃ちこんでくるからな。
「グレで牽制して、爆音に乗じて射線変えるか?」
悩んでいても仕方がない。ここは僕以外の味方はいないから好きなだけ派手に動ける。もちろんFF《フレンドリーファイア》してしまう心配もない。
バァァァン!! うわぁぁ…
投げたグレネードが一人のスコンドラーの近くで爆発する。残り5人ほどと思われた敵が4人になった。
「こっち側に行けばいいかな?多分こっからだったら意識外から攻撃できそう…」
いた。グレネードの破片による出血を止めているのか、包帯を巻いていた。その後ろでは先ほど打ってきた敵なのか、銃がジャムったらしくジャム解消をしているようだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ジャム。いろんな種類はあるものの、僕の定義としては「何らかの原因によって弾が発射されなくなる」状態を‘‘ジャム‘‘と呼んでいる。解消方法としてはジャムの原因を見つけて、原因の弾なり薬莢なりを排除、そして再度給弾する。簡単そうに見えて、切羽詰まっている戦闘中に起きたら解消動作などやってられるはずはないため、ジャムったらどうなるかお察しでしょう。そうならないためにも銃のメンテナンスは大事ですよ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「側頭部が丸見え。トタン板で防壁作るなら、隙間埋めなきゃ」
ダァァァン!
敵が頭を貫かれ、倒れる。近くにいた見方が声をかけていたが返事するはずもなかった。間髪入れずにまたトリガーを引く。
ダァァァン!
もう一人が倒れる。これであと2人。おそらく吹き抜け上n
ダダダダァァァ!!
「いったぁぁ!!」
ちょこっとトタン板からはみ出た右腕を持っていかれる。僕としたことが…
「射線もうばれたのかよ!」
『サプレッサーなしAKで撃ってるから当たり前だろ?
こんなにバカデカ音を鳴らしたらそりゃばれるはずさ』
「正論言うな!マブネッ!」
一発の弾丸が頭をかすめる。あまりの驚きのせいでよくわかんない言葉が口から洩れる。
「これじゃあ頭は出せなくなったな…また爆音の乗じて射線変えるか」
最後のグレネードのピンを引いてトタン板の隙間から、吹き抜けの上に向かって投げる。
カンッ コロコロ…
どうやら吹き抜けの上にはいかなかったようだ。それでも好都合。僕の目的は敵の撃破ではなく、敵の《《意識外》》に移動すること。それができればどこに飛んだっていい(限度もあるけど…)
バァァァン!!
グレネードが爆発したタイミングに施設の裏から入る。足音から察するに、敵はまだ吹き抜けの上だと思う。ゆっくりと歩き、敵の頭を探す。
「み~つけた」
ニヤッと笑ってエイムを合わせる。もらったと思ったとき
ダァァァン!ガシャン!
銃声の後に何やら嫌な音が鳴った。噓だろと思い、チャージングハンドルの方を見る。
「ジャムった!!!!」
そこには空薬莢がチャンバーに挟まっていたのである。しかも先ほど――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
すこし時を遡ろう。僕は「ジャムったらどうなるかお察しでしょう――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ダダダダァァァ!!!
「このAK絶対呪ってやる!ひぇぇぇ~!」
『整備できてないだけだろ』
「ド正論言うな!」
僕の存在に気付いた敵がトリガーを引き、何発もの弾丸が僕に向かって飛んでくる。こんな状態では反撃どころかジャム解消すらもできない。一時撤退だ!
「うぐぅ!!」
7.62mm口径の弾丸が僕の足を貫いた。5.56mm口径の弾丸とは比べ物にならないほどの痛みが込みあがってくる。
『おい仁!鎮痛もう切れてるぞ!』
「これ以上ないタイミングだな!!」
『皮肉か?』
「皮肉だ」
命からがら銃弾の雨の中で逃げ回り、どうにか入口にあるコンテナハウスに逃げ込めた。壁に背中を寄りかからせて、銃のジャム解消を行う。どうやら薬莢がチャージングハンドルの間に挟まったみたいだ。急いで挟まった薬莢を取り出し、ハンドルを引く。これでOKだ
『……来てるな』
「うん。金属音がするね」
ちょうどジャムが治った時に足音が聞こえた。どうやら敵は追いかけてきたようで、足音的に高所有利をとるために、反対サイドのコンテナハウスの上に上がったと思われる。
ちらっ
最小ピークで窓からのぞく。こちら側は暗所となっているため、最小ピークをしておけば、そうそう敵からばれることはないだろう。
「やっぱりハウスの上にいるね」
『まだお前の場所を特定できていない。今のうちに奴の脳天をぶち抜け』
「わかってるよ」
しっかりとアイアンサイトを敵の後頭部に向ける。息を吐いてトリガーを引いた。
《《が!》》
カチッ……カチッ……カチカチカチカチカチ!!(怒)
「なんでここで弾が発射されねぇんだよ!」
『今度は給弾不良か。敵にばれる前に早くしろ!』
なかなか引けないチャージングハンドルを思いっきり力を込めて引いて、チャンバー内の弾を排出する。
「今度こそは!」
カチ……
「くそったれ!!!」
何と今度は弾切れを起こしやがった。しかもタイミングが悪いことに、敵がこちらの存在に気付く。これが不幸の
ダダダダァァァ!!
すばやく身を隠し、敵の銃撃から身を守る。運が良かったのか、敵の弾はそこまで貫通力があるようなものではなかったため、トタン板を貫通してこちらに当たることはなかった。
「マガジンマガジン……あった」
ガッシャン!
「リロード完了っと」
空マガジンを新しいマガジンで押し出し、新しいのを差し込んでチャージングハンドルを引く。ちょこっとハンドルを引いて、チャンバー内に弾がしっかり入ったことを確認して、ハンドルをたたく。こうすることによってチャンバーを閉鎖する
‘‘ボルト‘‘っていう機構がしっかりと閉まり、給弾不良が起きないのだ。
「でもここからどう反撃しようか…ソレヨリチンツウヲ」
思い出したようにプレートキャリアのポーチから愛用の鎮痛剤「イブプロフェン」を取り出す。ボトルのを開けて鎮痛薬を取り出す。そのまま口の中に放り込み、唾液で流し込む。
「ふぅ…」
このイブプロフェンは少し特殊であり、一般的な鎮痛剤は十数分後に鎮痛効果が作用するが、僕が使っているものは服用してからすぐに効く《《特殊品》》である。
『敵がしびれを切らして降りてきたぞ』
「都合がいい。ここは右壁で最小露出ピークだ」
AKをフルオートに切り替えて敵が近づくのを待つ。
「今!」
右壁ピークで射撃を開始。マズルフラッシュが視界を包み込み、重厚な銃声と落下した薬莢音、内部メカの作動音が耳に響いてきた。そしてその直後にコンクリートに人が倒れる音が聞こえてくる。
「やったね」
『オーバーキルだけどな……オレハスキダケド』
「最後なんか言った?‘‘俺は好きだけど‘‘的なものを」
『ほぼ聞こえてるだろ』
ガチャ
マガジンを外して残弾を確認する。おおよそ半分、すなわち15発程度が残っている。プレートキャリアのマガジンポーチには残弾ゼロのマガジン一本と数発撃ったものが一本……
「これ……弾薬足りる?」
今更だった。さっきからカーディーラーの制圧ばっか考えていたから、マガジンの残弾量をこれっっっっぽちも考えてなかった。
『弾込めしておけ。‘‘弾がなくて死にました‘‘っていう理由であの世に行ったら、地獄に落とすからな』
「弾込めしたいのも山々なんだけど……」
ダストが僕の残弾管理の不器用さにあきれていたころ。僕は別の現実を突きつけられていた。それはまさに
「弾込めするための予備弾薬を持ってくるのを忘れた(泣)」
『……は?』
ダストがワンテンポ遅れて反応する。
「やっちゃった……(泣)」
『すぅぅぅ……はぁぁ……』
ダストがため息をつく。
『オブラートに包ませて聞こう。お前は《《馬鹿》》か??』
「ごもっともです」
△△△
残弾少なめ+予備弾薬なしという現実を突きつけられてから十分ぐらい後のこと。僕は制圧済みのカーディーラー内をフリーファームしていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ファーム。このトカルスト市では生きていくためには武器や食料、防具が必要だがそれらを揃えるためにはお金が何よりも必要とする。そしてこの街には現地住民が運営している‘‘フリーマーケット‘‘っていうものがあり、そこに出品したりしてお金を稼いだり出品されたものを買うこともできる。
そしてその‘‘フリーマーケット‘‘では電子部品や骨董品、弾薬などが高価格帯で取引されている。その一例として医療用品の‘‘LEDX‘‘、PC部品で比較的に高価な‘‘グラフィックボード‘‘、他にも貴金属はよく高い値段で取引されがちである。
例で挙げたLEDXとか日本円にして驚異の160万円で取引されるのである。そして、そのような一括千金や装備品代を揃えるため現地住民含め僕らはいろんな場所をファームするのである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「高価なものないかな~」
『そうそうないだろ。あったらLEDXが160万とかまでぶっ飛ぶわけがない』
「それもそうか……」
何かいいものないかな~と思いながら漁ってるものの、どんな高価なものよりも弾薬が必要な気がした。いくら価値のあるものを見つけても、敵に倒されれば意味がない。だから銃弾は重要だ。
「でもここにあるのは7.62mmのなんだよな。僕のは5.45mmなんだよね」
『倒した奴から武器を鹵獲すれば?』
「精度が悪すぎるからダメ。こう見えても、僕は銃の精度にはうるさいからね」
『まぁあ、勝手にしろ』
弾薬は見つからなかったけど治療用品やグレネード、光学サイトが見つかった。これでも儲けもんだ。他にはハイドアウトのドアを作るためのパーツや、売ったらお金になりそうな電子パーツを拾った。
「光君?」
《はいはい、なんでしょうか?》
そろそろハイドアウトに戻ろうかと思い、光君を無線で呼び出す。
「そろそろ帰るからさ、どこから行けるか教えてくれる?」
《分かりました。少々お待ちください》
「ぶっちゃけ距離がかかってもいい……けど?何だあれは?」
ふと、向こうにあるデスクの上を見たらそこには黒いクワガタのようなものが置いてあった。デスクに近づいてそのものを手に取る。その瞬間、僕の瞳孔は見開いた。
「L……LEDX!」
そのクワガタみたいなものはLEDXであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
‘‘LEDXとか日本円にして驚異の160万円で取引されるのである。‘‘
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そう。あのバカ高い値段で取引される‘‘LEDX‘‘。それが今僕の右手の中にあるのである。
「あわ……あわわわわ……ガガガガガガガ」
『レジ○ガスのものまねして現実逃避するな。それは正真正銘のLEDXだ』
《今戻りました。それで脱出地点に関してn》
「光君…」
《はい、なんでしょう?》
「一番近い脱出地点を教えて」
今僕の頭の中は物欲しかなかった。なにせLEDXだ。単体だけで160万もいく超高価品である。すぐに帰ってマーケットに売り払おう。そして装備に全投資しよう。そんなことしか考えてなかった。
《えっと…一番近いところはセントラルストリートを、北に進んだところにある崩落現場の、地下道脱出です。でもなぜ一番近いところを?》
「LEDXを見つけちゃった」
《すぅ……》
無線が切れる。おそらくハイドアウトでは光君が発狂しているだろう。
《これ以上は何も言いません。早く帰ってきて!!》
「ラジャー!」
傭兵はお金がかかわると理性を失う。それがここで証明できた。
△△△
‘‘物欲は人を狂わせる‘‘この言葉を僕はとある配信者の動画で見たことがある。そしてそれがゲームだけではないことを今知った。
ダァァァンダァァァン!!
「当たらん!手が震えて当たらん!」
『これが160万という金額の震えってやつか……面白い』
「面白がらないで!こっちは命を懸けてるんだよ!?」
‘‘LEDXを持っている‘‘ということが緊張につながり、銃を持っている手がとてつもなくプルプルと震えている。それに合わせて
『無駄口をたたくな。ヘッドラインを意識して撃て』
「分かってるって!」
敵は十数メートル先にいて、車を遮蔽にして弾薬の耐久戦が繰り広げられていた。しかしその敵が想定外だった。
「それよりなんでここでブリーダーチルがいるんだよ!」
そう。敵はブリーダーチルとその取り巻きである。カーディーラー内の殲滅に夢中になりすぎてど忘れしちゃったよ。てへぺろ☆ってやってる暇はない。先ほど言った ‘‘LEDXを持っている‘‘ことに合わせ、おそらくブリーダーチルが誘拐したのか獣人の母子が近くにいた。
ダァァァンダァァァン!!
「なんで民間人がいるんだよ!あぶね!」
『おそらく彼も反亜人勢力の人だろう。
「亜人は奴隷だから何をしてもいい」そんな考えで奴隷として誘拐したんじゃない か?』
「これ負けたら死ぬか奴隷かの二択じゃねぇか!」
『もとから負ける=死ぬな気がするが?』
車に身を隠してリロードを挟む。これが最後のマガジンだ。20発ちょいで敵五名を排除しなければいけない。
「難易度が高いタスクだこと」
ガシャン!
チャージングハンドルを引いてチャンバーに弾を送る。さっきまで頭を出していた場所から出すと確実に葬られる。そうならないためにも顔出しする場所を変えないと。
「フラッシュ!」
球体型の炎を作り出し車の向こう側に投げる。大きな破裂音とともにまばゆい閃光を放たれる。いまだになぜこうなるのかは知らない。僕には聞かないでくれ。
「ヘッドライン意識!」
頭を出し、ドットサイトのドットを敵の頭に合わせる。BP弾がフラッシュで目をやられた敵の頭を貫く。続けざまに右に展開していた敵にも二発撃ちこむ。一発はヘルメットにはじかれたが、二発目はヘルメットを貫き頭に入った。
「射線変更」
相手の耳鳴りが続いている間に車の後ろから移動する。ルート上にいたもう一人も蹴散らして、残り二人。一人は取り巻きでもう一人がブリーダーチル。
『どうだ?倒せそうか?』
「見て考えて」
壁に身を寄せてマガジンの残弾確認をする。
「ラストハーフほど」
マガジンを差し戻して、息を整える。銃を構えなおして残りの二人を倒そうと、頭を出した瞬間。
「ジーザス!!!」
パァァァァンン!!
一つのまばゆい光が僕の視界を奪った。そして立て続けに一発のケリが、僕の腹部にめり込んでくる。
「うぐぅ!」
ドシャ!
背中からアスファルトに倒れる。フラッシュによって視覚と聴覚を奪われた僕は何が起きているのかわからず、ただ横たわるだけだった。
「誰かと思ったらあの狼傭兵じゃねぇか」
うっすらと見えるその顔は今でも鮮明に覚えている。ブリーダーチルだ。不敵な笑顔を見せながら語りかけてくる。はっきり言うと‘‘きもい‘‘
「うぐぅ」
まだおなかの痛みが引いてないため、まともにしゃべれない
「‘‘最強‘‘傭兵と聞いたけど、大したことがねぇな。結局はこういう運命なんだよ。正義を掲げても負ける。傭兵の運命さ」
彼はトカレフの銃口を僕の脳天に突きつける。
「話はおしまいだ。お前から知りたいことも何もないし、聞きたいことm」
終わったと思った瞬間。体の中に響くような銃声が鳴り響き、晴れてきた視界には奴の顔はなく、鮮血が映った。
ガガガガガガガ
そしてそこには緑色の巨大な装甲車《BTR》が止まっていた。機銃は一筋の煙を銃口から立て、銃身は赤くなっていた。
「さっきのドライバーさん……」
車両のハッチが開き、中からカーディーラーまで送ってくれたBTRのドライバーさんが出てきた。
「ヒーローは遅れてくるっていうだろ?」
彼は僕の腕をつかみ、立つのを手伝う。
「カーディーラーを制圧したのは僕なのに?」
「ボスを倒したのがヒーローだ」
勝ち誇った顔で僕を見る。
「ぐぅぅ…なんでだ…なぜおまえは倒れない…ガハッ!」
どうやらブリーダーチル一命をとりとめたようだ。幸運にも己の脂肪でね。そんな彼はなぜ僕が生き残っているのか疑問に思っている。決して精度が良いとは言えない機銃で撃っているのに、僕には当たっていない。
「う~ん……主人公特権ってやつかな?まぁあ、僕はそこも含めての‘‘最強‘‘だから」
ダァァァン!
ガバメントを取り出して、辛うじて生きてるブリーダーチルの脳天を撃ち抜く。無慈悲だとか言わないでくれ。この殺伐とした世界ではこれぐらいやっておかないと、自分や周りの人の命の危険につながってしまうからね。
「これで僕がヒーローだね」
「こりゃ俺の負けだ。まさか機銃掃射を食らっても生きてるとはな。久しぶりに確殺が大事ってことを知ったよ」
彼は手を挙げて‘‘お手上げ‘‘ポーズをとる。
△△△
「あ、ありがとうございます!なんとお礼をしたらよいか……」
「いえいえ。同じ亜人としても見過ごせなくて……」
顔の前で手を横に振りながら答える。
「ほら、あんたもお礼をしなさい」
そう言って女性は後ろにいた男の子を前に押し出す。
「あ……ありがとうございます……」
恥ずかしいのか、恐怖で声が出ないのか声がとても小さかった。
「何でもない事さ。それとこれ」
ポーチからチョコバーを取り出して、男の子に渡す。
「銃撃戦が始まった瞬間にお母さんを連れて遮蔽に行けてすごいね。そんな君にはこのチョコバーをあげるよ」
男の子はうなずいて、チョコバーを受け取る。
「狼傭兵君。そろそろ街から出るのか?」
機銃の弾薬交換を終わったドライバーさんが僕に聞いてくる。おおよそ僕の進行方向から出ようと予想したんだろう。
「うん。そろそろね」
「お二人はどうしますか?安全を選ぶなら、そのまま国連軍の難民キャンプまで送りますよ」
「そ、それじゃ、お願いします……本当にありがとうございます……」
「了解」
その後はみんながBTRに乗ったのを確認し、ドライバーさんがBTRを発車。僕らは車に揺られながら寝てしまった。
「ふぁ……」
気づけば母子獣人はすでに降車しており、残りは僕一人だけ乗っていた。
「あとどれくらい?」
欠伸をしながらドライバーさんに聞く。
「あと十数分。あの忌々しい街からは脱出したから安心はできるけどな」
「まったくその通りだよ」
もう一度欠伸をして眠りにつく。頭の中ではハイドアウトについた後のやることをいろいろ考えていたが……
「すぅ……」
そんなことはいつの間にか消え、僕は寝息を立て始めた。
現在時刻12:07 Central City脱出成功




