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【祝2000pv!】ケモミミ傭兵お仕事日記   作者: 広報部のK
【第三章】ケモミミ傭兵、次はロシアでお仕事です
27/45

【第一話】お次の任務はロシアの都市です

「いつつくんですかね~」

「う~ん……あと十分ぐらい?」

 SUVに揺られながら右手にそびえたつバリケードと、その奥の高層ビルを眺めながら光君の質問に答える。

「なんか師匠、上の空な気がしますけど?」

「しょうがないでしょ?しばらくの間はこっちで任務をしながら生活するんだし……誰だって好きな人の子とは考えるでしょ?」

 光君にちょっこっと引いてるのを見なかったことにして、運転手に尋ねる。

「ドライバーさ~ん。質問いいですか~?」

「あぁ、俺が答えれる範囲内だったら」

 バラクラバをかぶった覆面のロシア人兵士が答える。

「今から行くトカルスト市のCentral Cityってどういう場所なんですか?」

「どういったらいいだろうか……『ロシアのサンフランシスコ』って例えたらわかりやすいと思う。今となっては一部の建物を除き、廃墟街となっているけどな」

「これまたトラスト市みたいなところだね」

「トラスト市の方がまだましだ。トカルスト市に関しては国連軍やロシア連邦軍、ましてや手配元不明のPMC「コブラ・ディフェンダー」までが参戦しているからな」

 キィー

 SUVが止まってドライバーがシートベルトを外す。

「ちょっと待ってろ。このゲートから先は危険区域になるから装甲車で行く。今出してくるからな」

 と言い残し、彼は装甲車を出しに行った。

                 △△△

「早く乗れ。このまま隠れ家(ハイドアウト)まで行くぞ」

 そういってきたものの、僕は今驚きで一歩も動けなかった。何せ目の前には

「B…BTR-82…すげぇ…」

 ロシア製装甲車のBTR-82が止まっていたからな。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 BTR-82。ロシア陸軍が採用している装甲車両。主砲30mm機関砲であり、人に当たれば木っ端みじんになるほどの大口径である。水陸両用車両であり、未だに現役だ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「よし、乗ったな。そのままシートベルトをつけて待ってろ。5分ぐらいで着くからな」

 シートベルトをつけた瞬間。とんでもない加速力をこの身をもって体感した。体が座席に押し付けられ、身動きが取れない。

「うにゃ!」

 これ以上ない恥ずかしい声が漏れてしまった。しばらくの間、身を縮めて車両の轟音に光君と一緒に耐えていたら、急ブレーキがかかった。

「うぐぅ!」

 今度は体が前に倒れて、シートベルトがおなかに食い込んでくる。痛みに耐えながら震える声でドライバーに何があったか聞く。

「な……何があっちゃんですか?」

 あまりの痛さに活舌が回らない。おなかを抑えながら運転席の方を見た。

「な~に、ただの武装集団に喧嘩売られただけさ。こんなの機銃で吹き飛ばすのに限る」

 そういって彼は手元にあるコントローラーをカチャカチャと操作し始めた。僕らの頭上にある機銃砲塔が動き始め、けたたましい銃声とともに弾幕を貼る。

 Broooooooooo!!!

「убить врага《敵をキル》!このまま目的地まで直行だ!」

 どうやら歩兵だけだったらしく、30mm口径の機関砲は彼らを粉々に消し飛ばした。ドライバーはリモコンを置き、またアクセルを踏む。さっきの急ブレーキのダメージがまだ引いていなかった僕と光君はまた襲い掛かってくる加速力に耐えれず、到着したころには戦闘不能まで車両酔いしていた。

                △△△

「ここが僕らのハイドアウトか~。思った以上にきれいだし広いな」

 地下に続く階段を降り切り、部屋の中を覗く。

「まぁ、問題があるとすれば…」

「もはや考える必要もないですね」

「うん。暗いし、寒いし、挙句の果てにはドアもない!」

 ビシッと入口の方を指さす。そこには階段が見えており、監視カメラどころか一番基本のドアすらもなかった。

「とりあえず今回の任務のオペレーター兼トレーダーのところに行って顔合わせしときますか?」

「うん。ついでにドアがないことについて聞いてみよ」

 来た道を戻り、地上に出る。ここら辺の地域は国連軍が支配しているものの、いつ敵が来るかもわからない。ハイドアウトの外はほぼ全区域危険だと考えた方がよさそうだ。 

「えっと…ガルーダ―だっけ?その人のお店はここかな?」

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ガルーダ。主に東側兵器を扱っているトレーダー。他のトレーダーは誰にでもモノを売るが、彼の場合はタスクを行った信頼に値する人にしか物を売らないとのことだ。どうやら僕らの財団のジョージアン会長と関係があるみたいで、今回の任務の助けをしてくれるのもそのためみたいだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 地図とにらめっこしながら目の前の建物を見る。入口は有刺鉄線やトタン板でガッチガチに囲まれており、いかにも紛争区域が舞台のゲームに出てきそうなお店だった。

 リーーン

 入口にあるインターホンを押して反応を待つ。するとドアがロックを外す音とともにゆっくりと開き

「来たか傭兵たちよ。早く中に入れ」

 中年のおじさんが中から顔を出した。僕らは言われるがままに中に入っていく。その男は僕らが入ったのを確認するとすぐに鍵を閉め、カウンターに入っていった。

「あなたが……ガルーダーさんですか?間違ってましたらすみません……」

「いや間違ってない。俺がガルーダーだ。そしてお前らがWBFから来た傭兵たちだな?」

「はい。目的は……」

 そう言いかけたときに、ガルーダさんが口をはさむ。

「任務のことは聞いてある。俺のところの商会がお前のとこの社長と関係があってね。普通だったらこんなことはしないが、特別にお前らと協力関係を結ぶことにした」

 彼は店の奥に行ってアタッシュケースを持ち出してくる。

「ただ俺は商人でもある。自分でも売ってやってもいい奴と売ってやらない奴がいる。もし俺と取引したければ与えたタスクをやってくることだ」

 何を言い出すのだと思えば、早速仕事の話が出た。

「まず一つ目。トカルスト市には不届き者がいっぱいいる。そいつらを五人排除して、そいつらのドッグタグを5つ渡してくれ。そうすれば基本的な取引をしよう」

 はいはい。まずは敵を倒すやつね。不届き者っていうのは送ってくれたドライバーが言っていた武装集団のことかな?

「そして二つ目。いまここにあるアタッシュケースをCentral Cityで巡回しているBTRに届けてほしい。そいつらは攻撃しなければ誰でも中立に接するため、そのまま近づいても問題はない」

 そして配達ミッションね。これはいつもの仕事でもあるときがあるから問題はないはず。ただアタッシュケースが重そうだから、動きにくそうだ。

「どうだ?できそうか?」

「えぇ、問題ないですよ。それと一つ質問があります」

 光君がガルーダーさんからアタッシュケースを受け取っているときに質問する。

「なんだ?」

「ハイドアウトのドアがなかったんですけど、どういうことですか?」

「………は?ドアがない?」

 どうやら彼も知らないようだ。本当になんで消えているのやら…

「……分かった。タスクの時についでにねじとガムテープ、接着剤を持って来い。俺が作ってやる。まったくなんでねぇんだよ…」

「了解で~す。それじゃあ、失礼しました~」

 アタッシュケースを持った光君を連れてお店から出る。えっと確かアタッシュケースの宅配先が中央街のBTRだっけ?こりゃあ敵も多そうだ。

「師匠。次はどうするのですか?」

 アタッシュケースを大事そうに抱えながら僕に聞いてくる。

「そうだな……とりあえず最初の二つを終わらせに行くぞ。そしてらお金が稼げる。そうすれば後々、弾不足に悩むことはなくなるからな。やっぱりトレーダーがいるのって便利!」

「それでは善は急げって言いますので、早く準備して出発しますか」

「うん。そうだね」

 そして僕らは地下に戻って装備品の準備を進めた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ~タスク~

 ⓵スコンドラー《不届き者》を五人排除し、彼らのドッグタグをガルーダーに渡せ:Cleaning

 ⓶アタッシュケースをCentral Cityで巡回しているBTRに届けよ。:Delivery request


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 現在時刻:10:24

 現在地:Central City

 脱出予定時刻:11:30


 一般的に僕が使う武器はAR-15系統もしくはスナイパーライフルだけど、

「久々だな~、モダナイズドAK使うの。しかもカスタム元がAK74Mだとはね。てっきりAKMとか来るかと思っていたよ」

 今回の任務では一年ぶりにAKを扱うこととなった。当の昔に頭は使い方を忘れたが、僕は腐っても傭兵。いくら頭が忘れようとも体は覚えているのである。

《倉庫の中にある一番いいやつですよ。なくさないでくださいね。在庫が案外かつかつなんで》

「了解~」

 マガジンがしっかり刺さっているか確認し、チャージングハンドルを引いてチャンバー内の確認をする。

「しっかり装填されているっと」

 ハンドルを戻し、プレートキャリアについているPTTスイッチに手を伸ばす。

「早速だけど、ナビゲーションしてくれるかな?とりあえずBTRの巡回路を知りたいんだ」

《了解です。巡回路としては今目の前の大通りがそのうちの一つです。しばらくしたら来ると思いますよ》

 今のところはまだBTRは見えていない。とりあえず近くの建物でドアを作るための資材を探すか。周りには大きな映画館といくつかの商店街、そして廃棄された路面電車があった。路面電車の横にはスコンドラーと思われるものが二名いた。すかさずエイムを合わせてトリガーを引く。連続して弾丸が飛び出て、一人を綺麗に撃ち抜いた。

「ひゃうっ!」

 しまった。セーフティがセミオートじゃなくてフルオートになっていた。あまりにも久々すぎてセーフティの位置を忘れてしまったよ…...

「でも一人は落とせた!」

 すぐさまセーフティをセミオートの位置に戻してドットサイトを覗く。

「……隠れられたか。おおよそあの路面電車の裏あたりだな。グレ投げたら動いてくれるかな……」

 善は急げ!ポーチからグレを取り出して安全ピンを抜く。

「だいたい……ここらへん!いってこい!」

 思いっきり投げたグレネードは放物線を描きながら路面電車の裏に落下し

 バァァァン!!

 きれいにはじけ飛んだ。

「これはやれたはずだ!」

 嬉々としていったものの、前に何度かこうやって突っ込んで死にかけたことがある。だから僕は横から路面電車裏にエイムを合わせて、ゆっくりと確認していった。

「やっぱりやれている……それで何を回収するんだっけ?」

 頭の中は敵を殺すことしかなかったため肝心の回収するものをど忘れした。

「ねぇ?光君。敵から何を回収するんだっけ?」

 確認のために光君へ無線を入れる。

《何忘れてんですか!スコンドラーのドックタグですよ、ドックタグ》

「そうだった!ありがとうね~」

 回収するものが何かも知ったことだし、お懐拝見。回収するものはドックタグだから首にでもつけているだろう。

「あったあった。案の定、首にあったね」

 ドックタグのチェーンをポケットに入れていたマルチツールで切り離す。もう一人のドックタグも同様にして切り離し、事前にもらった小物入れポーチに収納する。今倒したのは二人だから、あとスコンドラーを三人倒せばいいってわけだ。

「ただ思った以上に街はがらんとしているな~」

 見渡す限りごみと建物があるメインストリート。そこには犬一匹すらもいなかった。

「こりゃあ、苦行タスクになりそうだ()」

 敵がいなきゃタスクもくそもない。とりあえずあたりの建物から使えそうなDIY用品を探して、BTRも探すとするか。

                △△△

 人生はよく「山あり谷あり」というじゃないですか?僕もそんな感じの人生たどってみたいな~と思ったことがあったんですけど……

「ひぇぇぇ~!!なんでここで別勢力のPMCと出会うんだよ!」

 その「山あり谷あり」が「戦闘あり絶望あり」ではない方がよかったかな~と思う今日この頃でございます。

「弾幕のせいで頭を出せねぇ!ヘルメットもないから頭を少しでも出したら、確実に冥界に葬られてしまう!」

 そこまで意味はないと思うがブラインドファイヤで牽制をして、これからのことを考える時間を稼ぐ。この牽制でラッキーヘッショが入ればなぁ……と考えていたが。

「グワァァァ!!」

 どうやら運よくやれたみたいだった。これがご都合主義ってやつか。でも一人倒したところで焼け石に水。打開策はないのか!と耳をふさいで悩んでいたそのとき

 Broooooooooo!!!

 後ろから鼓膜が破れんばかりの機関砲の音が鳴り響いた。後ろを振り向くとそこには緑色で塗装され、銃身が赤くなっているBTRがいた。おそらくだが偶然ここを通りかかったBTRに敵PMCの流れ弾が当たって敵対した感じだろう。とにかく命拾いした。それとついでにアタッシュケースもBTRに渡せる。

「まって~!!宅配便で~す!」

 走り去ろうとするBTRを呼び止め、ドアを開けてもらうように言った。

「どうした?そこの獣人よ」

「あ……あの……ガルーダーさんから……」

「とりあえず入れ。要件は中で聞く。外は危ないからな。こんなことで死にたくないし」

「あ、はい」

 僕は促されるままにBTRの中に入っていく。兵士は僕が入ったのを確認するとドアを閉め、自分も入ってきた。

「それで、何の用だ?」

「ガルーダーさんからアタッシュケースを渡してくれと言われました」

 アタッシュケースを手渡して言う。兵士はうなずきながらアタッシュケースを開けて、中身を確認する。

 「中身は問題ないようだな。それじゃあここで……と言いたいが」

 彼はアタッシュケースを座席の横に置いて僕に言う。

「せっかく来たかわいい狼くんだ。好きなところまで送ってやるぞ」

「え……いいんですか?」

「あぁ。どこでもいい。要望した場所に安全に送ってやるからな」

「それじゃ……」

 僕が要望した場所は兵士を困惑させたが、すぐに察してくれた。それからは彼はBTRを運転し、僕と世間話しながら目的地まで送ってくれた。

               △△△

「どうもありがとうございました」

「礼はいらねぇよ。せいぜい頑張りな。かわいい狼傭兵君よ」

 そう別れを告げて、彼はまたBTRを運転してどこかに行ってしまった。

「さてと……もう一つのメインタスクをやるとするか」

 僕は大通りの反対側にたたずむ()()()激戦区になるかもしれない「カーディーラー」を見つめて呟いた。事前に光君と一緒に下調べした内容によると、ここ「カーディーラー」はスコンドラーの大部隊によって占拠された場所らしい。周囲はトタン板やコンテナ、有刺鉄線で完全に要塞化されていた。そしてここに大量のスコンドラーがいるとなれば、タスクはサクサク進むだろう。

「ただ、この要塞攻略はすこ――――しめんどくさそうだな……」

 分かっている。この攻略はまったくもってすこ――――し面倒なわけがない。


 ()()()()()()面倒だ


「おっと!身を隠さないと」

 コンテナの上にある機銃にスコンドラーがついたのが見えた。50口径食らったら体吹き飛ぶからな。下手に姿をさらしてはいけない。BTRでここまで送ってくれた兵士によると、「カーディーラー」はロシア連邦軍を裏切ってスコンドラーとなった兵士らが占領しているという。そしてそのリーダー格の人が通称「ブリーダーチル《裏切者》」だそうだ。

「さて、どう攻略していこうか。いつもだったら狙撃で片付けるのだが、あいにく今はショートスコープではなくドットサイトをAKに乗っけてきている。これじゃ、狙撃は厳しそうだな」

《すみませんね。ショートスコープじゃなくて》

 作戦を練っていて油断しきっていた僕の耳の中に、光君の無線音声が入ってくる。

「びっくりした!何で聞こえているの!」

《おそらく師匠がずっとPTTを無意識に押してたんじゃないですか?》

「一理ある」

《それとボディーカメラの中継をずっと見てたんですけど、途中で戦ったPMCってどこの勢力なんですかね?》

 そういやそうだったな、と思い出した。あの時は命の危険を感じて確認もしなかったし、BTRが倒した後も確認しに行ってなかった。でもおそらく…

「おそらくアドラスグループとカルトとの関係を疑われている‘‘コブラ・ディフェンダー‘‘かな」

 ちらっとカーディーラーを覗きながら答える。正門の守りは機銃手だけみたいだからグレを投げ込めば入ることはできそうだ。

《あぁ!北米を拠点にしているPMCたちですか。でも何で攻撃した来たんですかね?》

「あくまで僕の予想だが、僕が彼らの関係をあぶりだそうとしているからじゃない?……なんかヘイトを買いまくっているのは置いといて」

 ポケットから取り出したカーディーラーの見取り図を地面に置いて、侵入経路を考える。どうやら建物内は吹き抜けがあるから、二階を見ておかないとな。

《師匠っていろんな団体からヘイト買ってますもんね~。カルトだったり、他勢力のPMCだったり》

「ひゅるしゃい《うるさい》」

 見取り図に線を書いて、ペンを口で咥える。まずは正面の機銃手をつぶさないとどうにもならない。その後は正面入り口から徐々に敵の範囲を狭める。こんなものか。残りは戦いながら考えるとするか。

「っと……いったん無線切るからな。何かあったら呼んでくれ」

《えっと…何をするんですか?》

「見てわからないのか?殲滅だよ殲滅。ブリーダーチルを倒すと国連から懸賞金が入るみたいだとさ。せっかくなら賞金稼ぎをしておくか。平和維持とともにね」

《師匠怖い》

「何をするにもお金は必要だよ。それがこの世の理さ」

                △△△

「よ~く狙って…バァァァン!」

 ダァァァン!!

 5.45mm口径の弾丸が一直線に機銃手の頭に飛んでいく。ショートスコープではないとても、腐っても僕はスナイパー。ドットサイトでも25m以内だったらトップクラスの精度を誇るよ(50mはちょっと精度が悪くなるけど…)

「そしてすかさずグレをぽい!」

「グレネード!!」

 さすが元正規軍。危険への察知能力が高い高い。でもいくら元正規軍だとしても、グレネードには慌てる。そのタイミングで

「見えた!」

 ダァァァンダァァァン!!

 お留守の頭を貫く。これで三人が落ちた。さっき聞こえた情報からおおよそ5人ぐらいがここにいるのがわかる。

「まずは前線を上げる」

 敵の防衛が薄くなったタイミングで、入り口付近のコンテナハウスの中に走りこむ。そして窓枠に銃を固定して、見える敵を掃討。

「ここから見える……敵はいないな」

 いったんここでリロードを挟む。今刺さっていたマガジンは残弾半分ぐらい。覚えておこう。ところでAKシリーズのマガジンってどれもさしにくくないか?

「ふぬっ!この!さされ!」

 ガシャ! ドン!

「ッッッッッ~~~~!!!!!!!」

 あの時のリロードでも四苦八苦して、ようやく刺さったけど、本当に足に落ちたときは痛かった。敵地だというのに思いっきり悶絶していたしね。

 ガシャン

「よ、ようやくリロードできた……敵来てないよね?」

 窓から見渡すが敵影はない。おそらく室内に立てこもっただろう。

「こりゃあ面倒なことになったな」

 ため息を一つついて、珍しくかけているシューティンググラスをかけなおす。僕は普通の人間と同じような耳はついていないため、グラスはゴムバンドでゴーグルのように固定している。

「ねぇ、光君?」

《はいはい。何でしょうか?》

「脱出時間が予定より伸びるかもだから、そこんところよろしく」

《わ、分かりました。無茶だけはやめてくださいよ》

「分かってる。それじゃ」

 ちらっと腕時計を見る。11時も回ってしばらくたったころだ。できればお昼前には片づけたいな。

「また後で」

 無線を切って銃を構えなおす。ハイドアウトのスタッシュにあったイブプロフェンを取り出して、胃袋の中に流し込む。これで戦闘準備は万端だ。

「『さて…ショータイムのお時間だ』」



 現在時刻 11:18

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