【エピローグ】ただいま
ガチャ ギィィィ
寝ている雪を起こさないようにゆっくりと自宅のドアを開ける。おそらく3日ぐらいだろうか、家を留守にしていた期間は。一日目は施設での任務遂行、二日目は報告書や調査の同行、そして三日目の昼前に帰国のフライトに搭乗。財団本部はバルカン半島のどこか(機密事項)にあるため、日本までは飛行機で17時間ぐらいかかった。
「ようやく帰ってこれた……」
現在時刻は午前5時ごろ。まだ日も登っていない。僕は足早に廊下を抜けて、僕の寝室に入っていった。
「すぅ……すぅ……」
「雪は……寝ているね」
部屋のベットには僕の嫁さんである雪が小さな寝息を立てていた。
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雪。フルネームは月夜雪。中学2年生の時に知り合い、そのまま交際。そして9年前に結婚した。白髪のロングで、僕と同じように狼の耳と尻尾がある。ちなみに元人間であり、僕と長期間一緒にいたせいで獣人の見た目になった……らしい。彼女自身はテレビアナウンサーとして働いている。趣味はゲーム
僕の仕事で家を留守にしてしまうことについては何も言わず、ただただ僕の帰りを待っていることが多い。 かわいい
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ドサッ コト……
銃をラックにかけ、装備品を棚に置く。雪を起こさないように慎重に……
「んぅ……仁……」
「やべ。起こしちゃった」
ギシ
ゆっくり下したつもりなのに雪を起こしてしまった。彼女は眠たそうにしているが、体を起こしてふらふらとこちらに歩いてくる。
「仁……」
「どうした?」
ギュウ
雪が僕の体に抱き着いて、顔を見上げる。彼女の顔は「なんで三日もいなかったの」ということを訴えているように見えた。
「ごめんね」
「やだ……ゆるさない」
むぎゅ~
そう言って雪は顔を僕の胸に沈める。いつも帰ってくるとこうなる。多分、僕のにおいでも吸っているだろう。
「雪?」
「なぁに」
雪は僕がいなくて寂しかったのか、少しむすっとした顔でこっちを見た。余談だが、この顔も可愛い。
「ただいま、雪」
「ん…おかえり」
彼女は少し微笑んで、顔を僕の体にピトッとくっつけた。
~第一話、完~




