第1章第6話 神の権能『鑑定眼』
「茂みの中に何かいるね。」
魔力視を使って周囲の観察をしていると、不意に感覚が鋭くなったように感じ、草の細かな動きまでが気になってしかたがなかった。
「あんた、なんでそんなことがわかるのよ?庭の茂みなんて、ここから100メートル位あるわよ。」
「草がそこだけ揺れていたから。」
「いや、普通の視力では見えないし、気づかないわよ。あんなところの草が揺れていても。」
どうやら、感覚が鋭くなったように感じるのは間違いではないようだ。しかし、シェリーには驚かれてしまった。この状態は何なのだろうか。
暫くすると、茂みの中からウサギに短い角が生えた見た目の動物が出てきた。
「ショートホーンラビットじゃない。どうやって柵の中に入り込んだのかしら。」
シェリーがショートホーンラビットと言う名前を教えてくれた。すると驚いたことに、先程から茂みでカサカサしているのもショートホーンラビットであることが分かった。数は三羽だ。どうやらこれが鑑定眼のようだ。
感覚が鋭くなり、様々なことが目にとまるため、全く気が休まらないので、ショートホーンラビットへの対処をシェリーに任せて、自室に帰ることにした。
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魔力視により、メイが紅茶をメイドワゴンに載せて、扉の向こう側に居るのがわかった。
普段うちで使っている茶葉はアッサムとダージリンの2種類があり、私はアッサムティーの甘い香りが好きなのだが、今日はダージリンだ。魔力視を通してでも鑑定眼を使えるようだ。
「失礼します。クロード様、お茶をお持ちしました。」
紅茶の香りは間違いなくダージリンだ。
因みにメイは、
個体名:メイ
種族:人族(女性)
年齢:18歳
魔法適性:水、●
特技:●●●●、●●、回復促進、料理
とみえた。どうやら、私の知らない魔法や特技が使えるようだ。
「ありがとうメイ。」
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屋敷の中庭
鑑定眼に慣れていないからなのか、ずっと発動したままだからなのか、疲れが激しい。何とか意識してオンオフを切り替えられないものか試行錯誤している。
併せて、鑑定眼の能力について検証した。例えば、鑑定眼を使っていることは周囲から判別されない筈だ。外見上の変化が無い上、魔力の変化もない。
視認している物の性質を観ただけで見抜くことができる。但し、決して万能ではなく、見抜けるのは私が理解できる範疇に限る。肯定的に捉えると、知識を増やすことで性能が向上するということだ。
生物に関して鑑定できる範囲については、私の知識と関連するのかどうかが今のところ不明だ。能力を正確に把握したり、他の対象と比べることはできないが、魔力視で観た魔力量だけは計測できる。また、癖を把握して行動を正確に予測することなど、応用性がある。加えて、スキルを鑑定する仕組みは全く分からないが、知らないスキルは把握できないものの、相手がスキルを使った瞬間に鑑定眼を使っていると、スキル名と効果が判明した。
◯ 現在の鑑定可能な範囲
物→名称、性質、材質
人→名前、種族、性別、年齢、魔法適性、特技、魔力量(魔力視と連携した場合)
動物→種族、性別、年齢
魔物→種族、性別、年齢、魔力の強さ、攻撃手段、魔力量(魔力視と連携した場合)
事象→事象の発生原因、発生元、人や環境への影響など、事象によりさまざま