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第1章第3話 魔法の練習

 月、水、金の午前6時30分から30分間は魔法の練習の時間、兄さんとステフ姉さんだけが参加している。7歳から始めるのが我が家の決まりだ。


 7時から30分間は魔力の鍛錬の時間で、私とシェリーも加わる。魔力の鍛錬が始まる頃には兄さんとステフ姉さんは魔力欠乏寸前でフラフラしているのだけれど、魔力が少ない状態で捻り出す鍛錬をすると魔力量が効率的に上昇すると言われているため、この順番でプログラムを組んでいるそうだ。


 因みに、この世界には時計が存在する。ねじ巻き式だが、約百年前に発明されたそうで、発明者はその功績で叙爵され、今でもこの国の貴族に彼の子孫がいると、以前父さんが話してくれた。


 今日は水曜日、今は魔力の鍛錬を実施中だ。


 「ねぇねぇ、この魔力の鍛錬って本当に魔力量が上昇するのかなぁ。」


 シェリーはここのところサボり気味だ。魔力の鍛錬は凄く地味な修練で、身体の中から魔力を練り上げて集中させるだけの、動きもなく、効果があるのかどうかの実感さえもない。6歳の子供が我慢出来る筈がない。母さんも私達の監督として傍で観ているけれど、シェリーが寝ていても、本を読んだりお絵描きをしていても叱る気配がない。


 私はというと、魔力視のお蔭で飽きずに続けられている。魔力を変質すると色が変わったように見えるので、変質した魔力を放出してどうにか花火みたいに出来ないか試行錯誤している。


 最初はシェリーと同じように、本当に効果があるのだろうかと疑問に思いながら行っていた。だから、シェリーがサボり始めたときは、しめた!シェリーを検証に利用してしまおうと咄嗟に思いつき、今日で1か月が経過した。


 「少しずつだけれど魔力量が増えている気がするから、きっと効果があるんだよ。シェリーも頑張った方が良いよ。」

 「この間と言っていることが違うじゃない。この間は見つからないでサボる方法を楽しそうに教えてくれたのに!」

 「何のことかな。ぼ~としていると直ぐに追い抜いて、どんどん差をつけちゃうからね。」


 魔力視で観ると、シェリーの魔力の延びが止まった。だから、頑張って魔力の鍛錬を続けようと決めたんだ。この間のことは惚けておくしかないだろう。


 「痛いっ!?」


 シェリーは思い切り私の頭を殴った後、


 「今日は魔法を教えて貰うからね。」


 それだけ言って魔力を練り始めた。母さんがこっちを観ているから!大きな声で言わないでよ!


※※※※※※※※


 裏庭に来るとシェリーは既に待っていた。

 この時間、屋敷の人がここに来ることはない。調査済みだ。


 「遅いわよ!」

 「時間ぴったりだけど。」

 「私を待たせたでしょう!」

 「凄い言い掛かりだな。痛いっ!?」


 体重がのった良いパンチが鳩尾に。6歳児の身体の使い方ではない。天性の暴力女か、私と同じ転生者なのではないかと疑ってしまう。


 「早く魔法を教えなさい!」

 「はい。」


 これ以上は藪蛇になってしまうだろう。


 「これがライトの魔法の魔方陣なんだけど、自分の魔力を込めた魔性インクを使ってこれを描くんだ。あとは魔方陣に沿って魔力を流すだけだよ。」

 「嘘おっしゃい!クロはいつもそんなことしていないじゃない。」


 ちっ、騙されないか。因みに嘘ではない。魔方陣も魔法を使う方法の1つだ。敢えて嘘を探すとすれば、お手本の魔方陣をわざと間違えているくらいだ。あれでは何も発動しない。


 「いきなりは難しいかもしれないけれど、魔法を使うには、発動させたい現象を明確にイメージして、それに適した性質に魔力を変質させるのが大事なんだ。」


 中級魔法まではこれでいける。上級魔法以上になると複雑な変質や組み合わせ、魔力の形まで制御しないといけないらしい。


 どの道、魔力の変質自体が結構難しいので、しばらくはこれで誤魔化せるのではないだろうか。そうであって欲しい。


 「こんな感じ?で、この後はどうするの?」


 初めてなのに一度で出来てしまった。


 「次は、発動したい現象をイメージしながら魔力を身体の外に放出してみて。」


 シェリーが腕を拡げながら魔力を放出すると優しい雨が降った。


 「できた!できた!やったー!」


 シェリーって実は凄い魔法の才能の持ち主なのかもしれない。


 同じ魔法を何度も試していると思ったら、


 「次は風の魔法を使ってみたいな。えいっ!」


 そよ風だけれど、また一発でできてしまった。それぞれの魔法に適した性質を感覚でわかっているのだろうか?


 「できたよね?やったー!楽しいー!」


 喜んでいるシェリーを見ていると、なんだか私も嬉しくなってきた。


 「今度は温かい風にしてみようか。温かい風をイメージして、火の性質の魔力を少しだけ混ぜるんだ。」

 「こうかな?」

 「ち、違う!火の魔力が大き過ぎる!燃やすイメージじゃないから!」

 「あっ!」「ウォーターボール!」


 庭の植木が燃えた。

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