表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/20

第4話 全裸と幼女

「んー! んんー!!」

「静かにしろ! こんな状態を見られたら俺のイメージが崩れるだろうが!」


 小声で怒鳴りつけるディス。

そして、涙目でディスを見上げる幼女。

 犯罪的としか表現出来ない状態で、ディスは耳を澄ませる。


 部屋の前を数人の兵士が駆けて行く音が聞こえ、数秒後には静けさを取り戻していた。


「……行ったか」


 ふぅ、と息を付くと、ようやく幼女から手を放す。

解放された幼女は全力で距離を取ると、壁に背を付けるようにしてディスと向き合った。

 その時になって初めて、お互いの様子を認識したのであろう。

額から小さな角を生やし、紅い髪をした幼女。

ディスはその幼女を見つめ、思い出す。


「魔導将・メアリか」


 そう。

目の前の幼女こそが魔王軍十幹部の一人、魔導将メアリである。

 実際の戦闘に参加する事はほぼ無いが、魔王軍で使われている兵器や魔導具は彼女が作った物である。

それ故に、魔王討伐軍では彼女を捕える事も重要な任務であったのだ。


 ……肝心のその彼女だが。

ディスの顔を確認し、視線が下へと滑って行く。

そして、下半身でその目が止まった。


「………」


 目を見開き、何かを言おうとしているのか口をパクパクさせる。

見た目は幼女であるが、メアリは魔族であり、それなりに長い事生きているのである。

捕えた人間を調べた事もあり、男性の全裸を見ても取り乱す事などないのである。


…普通であれば。


 メアリは目の前の人物を測りかねていた。

年齢は十代後半から二十代前半の人間。

身体は引き締まり、相当に鍛えられていた。

これだけで、歴戦の戦士である事は伺える。


だが全裸。


何故か全裸。


 装備どころか服すら着ていない。

そんな人間が何故魔王城に居るのか。

捕えた人間が逃げ出したのかとも思ったが、いくらなんでも服ぐらい着ているはずである。

一体どのような人物で、何を目的としているのか。

多少困惑しながらも、何かヒントを得ようとその露わになった身体を見つめる。

先ほど取り押さえられた事を考えれば、まともに戦って勝ち目は無いのだ。

対抗する手段を考える為にも、今は情報が必要だ、と。


そして、結果的に下半身を凝視してしまったのである。


 『ソレ』は、メアリの知るモノとは全くの別物であった。

『ソレ』がどんなもので、何の為の器官かは理解している。

だが、通常のモノとはあまりにも違い過ぎた。

だからこそ最初は考えてしまったのだ。


人間にこんなモノ付いていただろうか、と。


 『ソレ』が何かを理解した時、言い知れぬ恐怖が襲ってきた。

あり得ない、そんなバカな、と。

それは伝説に語り継がれる蛇竜のようであり、禍々しい混沌を現したオブジェのようでもあった。

あまりに強大であり、本能が警鐘を鳴らす。

あんなモノを使われたら死んでしまうと。


 そして……あまりの恐怖に、メアリは失神した。


「え? …え!?」


 突然白目を向いて倒れた幼女を前に、全裸の男は呆気に取られる。

ディスはまだ知らなかった。

見た目もサイズも、人の常識を遥かに超えている事を。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ