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第3話 全裸と魔王城

 股間を隠す事を諦めたディス。

呆然としつつも、これからどうするかを考える。


 魔王城の最奥にて、全裸の男が佇んでいる光景は…贔屓目に見ても単なる変態である。


(本来なら王都に戻って、魔王討伐の報告をしなければいけないんだが……このまま戻るのはさすがにまずい。であれば…呪いを解く方法か、せめて股間だけでも隠す方法を見つけたい)


 しかしアテが無い。

ディスは近くの瓦礫に腰掛けると、虚空を見上げて考え込む。


 魔王と勇者の戦いは大昔から続いているが、未だかつて、戦闘後にこれだけ居座った勇者が居たであろうか。

しかも全裸である。


「そういえば…さっき魔王が言ってたな」


 古代の禁呪。

俗に古代魔法と呼ばれるそれは、神々が地上に居た時代に使われていた強力な魔法。

今では扱える者など殆ど居ない、幻と言ってもいい魔法である。

 ただし、威力が強力過ぎる事と消耗が激しすぎるという欠点がある。

使うのが神のような超常の存在であったからこそ扱えた魔法であり、魔王ほどの存在でも命を代償にしなければ扱えなかったというわけだ。

だからこそ、『禁呪』などと呼ばれるのである。


「……どうやってこの魔法の事を知った?」


 浮かんだ疑問が口から零れる。


 禁呪を扱える者は、少なくとも地上にはほぼ居ないだろう。

使い手は遥か昔に居なくなってしまっている。

故に詳細が伝わっていないのだ。


 とすれば――――――。


(どこかで魔導書でも見つけたか?)


 仮にそうだとすれば、この魔王城のどこかに残されているはずだ。

ディスはそう考え、魔王の私室か、書物室かと予想する。


 問題は…そこまでどうやって辿り着くかである。


「……行くしかねぇか」


 やや諦め気味に、ディスは呟いた。

こうして、魔王城でのスニーキングミッションが始まるのだった。

全裸で。





「魔王様はどこへ消えたのだ!?」

「勇者と戦闘していたようだが…どこにも見当たらん」

「まさか…すでに…?」

「我らが魔王様が負けるはずがない! 必ず見つけて手助けするのだ!」


 魔王城の兵士達が行き交う中、ディスは細心の注意を払いながら進む。

戦闘になれば兵士の一人や二人なんともない。

 だが、全裸を見られる…しかもその状態で戦うのが嫌なのである。

後々勇者は全裸だった、などと広まればもう堂々と外を歩く事など出来ないだろう。

既に一人見られているので手遅れかもしれないが。


(場所も解らん上に、これだけ兵士が居たら何時まで経っても辿り着けないな)


 人知れず溜息を吐き、ディスは周囲を見渡す。

案内板などあるわけもないが、何かしらの手掛かりが欲しい。

物陰に潜みながら、隈なく部屋を見て行く。


だが。


「こっちには居ないぞ!」

「俺はあっちを探してくる!」


 前方からの声に気付き、ディスは後退しようとする。

だが、後ろからも人が走る音がした。

挟まれた、そう考えるや否や、ディスは近くの扉に手を掛ける。


(誰も居ませんように!)


 飛び込んだ勇者は、ハッとして振り向いた幼女と向き合う。


「…キ……キャアアむぐ! ん~~~~!!」


 全裸の男が幼女の口を塞ぎ、取り押さえる絵面は……十人中十人が通報する案件であっただろう。




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