第18話 全裸凱旋
「うおおおおおおお!!!」
ディスがウォランを倒したのを見るや、周囲の兵士達は勝鬨を挙げる。
それが戦闘終了の合図となった。
「…終わったようね」
空中から降りて来たレフィーナがディスに呟く。
ウォランに向けられた眼差しには、同情の気持ちが籠っていた。
絶対に納得のいかない決着であっただろう。
「勇者ディス殿では…?」
近付いてきた兵士がそう呼び掛ける。
恐る恐る尋ねる彼が、『違うと言ってくれ』と思っていたとしても、それがディスに伝わる事はない。
「そうだ」
「…そっか」
虚ろな目で、兵士は呟く。
「あ、えーと…敵将を倒した者に褒賞を与えると陛下が…。その、どうしても用事があれば致し方ないのですが、ご同行願えますか? 無理にとは言いませんし、全然断って頂いていいのですが…」
ディスが望んでいなかった全裸での王都凱旋である。
しかし、ディスは考えていた。
『魔王を倒した事を、果たして報告しないままでいいのだろうか』と。
魔王が倒れた事を知れば、多くの人に安心を届けられる。
それと比べれば、自分の恥など大した事ではないのではないか、と。
「行こう」
「あ、そ、そうなんですね。……そうですか」
挙動不審に兵士が答える。
ディスは魔王を倒してからずっと全裸であったのだ。
ちょっと感覚が違ってきている事に、ディスはまだ気付いていない。
「じゃ、じゃあせめてマントを。その凶悪…いや、卑猥…いや、そのままでは寒いでしょうから」
そう言いながらディスにマントを掛ける兵士。
「これで少しはマシ――――――」
マントが弾け飛んだ。
「さぁ、行こう」
「わしもか!?」
「私も!?」
困惑する二人を、気にするなとばかりに引き連れる。
違うのである。
魔族や竜神と言う立場から気にしているのではないのである。
全裸に続いて歩く事に抵抗があるのである。
――――その日、魔王を倒した英雄が、全裸で凱旋した。