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音の鳴る森

作者: 夜光

テスト投稿で昔書いたものを投稿してみています。

朝方の天気雨、不思議な音が響いてきた。

どうやら森から聞こえてくるようだ。

音に惹かれて森へと向かう

森の入り口では音はまだ遠い

森の中を進むほど音は大きく響いていく

そしてたどり着いた森の奥はきれいな音で溢れていた

森の奥の開けた場所を横切るように白い服を着た大勢の人影がまるで森の木々など何もないように行列を作って歩いている

そしてそこではすべての音が本来の音とは別の物へと変わっていた

落ちた雨粒が木の葉に当たる音はまるでピアノのようで、葉に貯まった雫がこぼれる音は鈴のよう

自分や動物たちが歩く音は太鼓になって

雨のザアザアとした音はまるで透き通るような、いくつもの声が集まって歌っているようだった

まるで雨と森の全てが楽器になって一つの歌を奏でているみたいだ。

そしてその歌は森の中の行列を祝福して喜んでいるようで、聞いている自分も行列を祝福したくなるような歌だった。

森の中、雨が降りしきり、奏でられる音の中、森の動物や見覚えのない何かまでも見つめる中で、

白い行列がただ進んでいく。

どこへ行くのか、どこまで続くのか、どうにもできない好奇心からボクは行列の先へと向かっていった。

行列が見える距離、歩くより少し遅い程度の早さで進む行列を、横目に見ながら追い越すように歩いて行く。


ずっと行列を見ていると色々変わった物が見えてきた。


白い服はよく見ると着物のようで、そう気付いた後に行列を見れば行列に並ぶ人影達はみな着物を着ていた。

着物を着て歩き続ける人達は時折鈴を鳴らしていて、その鈴の音も森に響く歌に合流して行っている。

ふと思い出したのは何時かテレビでみた嫁入り行列という物だった。

この行列も誰かが嫁入りに行くための物なのだろうか?

そうしてさらに行列を見ているとまた一つ気付いた。

行列の中の何人かの頭に動物の耳のような物がついていた。

犬のような物もあれば猫のような物も有り、その中でも特に多くあったのが狐のような耳を持っている人たちだ。

本当にこの人達は何者だろうかそんな疑問を持ちつつも先に進んでいく。


しばらく歩いてたどり着いた行列の先、森の奥の大きな木のある広場だった。

大きな木の下に二人の人影。

行列に並んでいた人たちはその二人を中心にして集まっている。

森の音に合わせて踊る人、音に合わせて何かを掲げている人、様々な人がいる。

いつの間にか集まっている人や森の動物たち、そしてそれらの間を縫うように蛍のような光が飛び交っている。

何かの儀式が進行していくように、その儀式を祝うように、その場にある全てが動いている。

今まで見たこともないようなそんな幻想的な風景に僕はただ見惚れて、時間も忘れて立ち尽くしていた。


どれくらいの時間そうしていたのかも分からず、ただ呆然とそれを見続けていると歌う人影の一つが不意にこちらに目を向けた。

おそらく女性のように見えるその人は自分に目を向けてそして笑った。

その瞬間、自分の意識は遠のいていき、ついに真っ暗になった。

そして意識がなくなるその瞬間、歓声と何かの鳴き声が聞こえた気がした。


そして気付けば自分は森の外の気にもたれ掛かっていた。

空を見ると抜けるような晴天で雨はもう降っていなかった、太陽の位置からもう昼に近い時間らしい。

森の方を覗いてみるが、もう音は聞こえてこなかった。


あれは何だったのだろうか?

そんな疑問は残るけど、遠くから両親の呼ぶ声が聞こえてくるそろそろ昼ご飯の時間らしい。

その声につられるように家に向かって走り出した。

走りだして少し進んだ先で、ふと何かを感じて森を見てみると。

狐が一匹こちらを見ていた。

そしてなんとはなしに狐に向かって、「またね」と手を振ると、狐は一鳴きしたあと森の中に戻っていった。

それを見届けた自分も再び家へと走って行った。




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