新たな知り合い…裏切ったりしませんよね?実はこの世界の黒幕だなんてことは…
転生してから一週間。今日も今日とて人一人いない。神様はいるけど…
あの、神様?毎日来てますけど、仕事とか大丈夫ですか?
「…嫌なこと思い出させないでください。ちゃんと終わらせてきてますよ」
なんとなくですけど、昼夜逆転生活してません?神様の世界に昼夜の概念あるか分からないですけど
「…仕方ないじゃないですか。人間が寝静まった時間じゃないと、我々が力を行使できないんです」
神の力?神託や神罰ではなく?
「我々と言っても、力を行使するのは妖精や精霊達。代行者によるものです。彼女達は人間にとって貴重な資源になるようで、見つからないよう隠れています。そして、人間が寝静まる夜に神々の代行者としてその力を行使します」
じゃあ、妖精の悪戯とか取り替え子って…
「悪戯の方は遊戯の神、取り替え子は神とは違いますが、妖精王の気まぐれです」
遊戯…あー、面白そうだからやってるのか。
妖精王の気まぐれ…こっちも面白半分?
「妖精王の方は面白半分、報復半分ですね」
報復…妖精が捕まったり?
「そうですね。妖精を捕え魔石に封じ、半永久的な魔法増幅装置にしたり」
資源ってそう言う
「妖精王が激怒したのは、爆破の魔石ですかね。妖精を複数魔石に封じ、反発する魔力が暴発、それをトリガーに別の失敗する魔法が作動。広範囲を爆破します」
別の失敗する魔法って、確実に失敗するんですか?
「はい。敢えて失敗するように術式を組み込んでいるのです」
クソ野郎ですね
「全くです。そんなことをしておいて、自分達を神々の使徒とか宣っているんですよ。死んでくれませんかね?」
まあ、妖精の方がよっぽど神々の使徒ですね。
「そう言えば、妖精王と精霊王が貴方と話したがっていましたね」
私とですか?
「妖精王と精霊王って実は元人間なんですよ。あなたと同じ転生者」
まじですか?
「恐らく同郷の者だろうと」
それは…話してみたいですね
「なら呼びましょうか。暇してるでしょう」
そんなあっさり
「……来るようですね。それでは私は戻ります。明日の仕事の準備だけしとかないと…」
…お疲れ様です…
それにしても、一週間で意外と領域が広がってるんだよなぁ。
海の方も領域が広がり、浅瀬なら大半が領域内に納まった。
森の方も着実に領域が広がっている。そのおかげか、魔物のような存在を時々感知する。
そして、それを狩っている気配も感知してる。
体内の魔力量が少ないのか、体外に排出する魔力を抑えているのか分からないが、異様な程森での動きが機敏だ。
人…なのか?
「君が感じているのは恐らくエルフの気配じゃないかな。あの森はエルフの狩場だから」
へー。エルフの…ってどちら様!?
「驚かせて済まない。僕は精霊王。元の名前は…忘れちゃった。適当に呼んで」
えーっと…じゃあ普通に精霊王さんで
「さんは無くてもいいよ?」
一応つけさせてください
「うんわかった。君のことはなんて呼べばいいのかな?」
…考えたこと無かったです。神様にはこちらからしか声をかけていなかったので…名前か
「土地である君に名前は必要ないんだけど、僕達が会話するには必要だろう?主神様や妖精王も来るだろうし」
そうですね…名前考えるか………
「……」
………
「………」
思い浮かびませんね
「元の名前とかダメなの?」
それが、思い出せないんですよ。前世?の記憶があるにはあるんですけど、恐らく自分に関する記憶がごっそり抜け落ちてる感じです。
「あーそうか。人じゃ無いから人の情報は要らないのか…」
「名前はゆっくり考えればいいでしょう。時間は死ぬほどあるんですからね」
もしかして妖精王さんですか?
「はい。妖精王リロンです。呼び方はリロでお願いします」
リロさんですね。よろしくお願いします
「お前なんで名前あるん?羨ましい」
「同種からの尊敬が足りてないんじゃないですか?」
「……そうなのか?」
「冗談ですよ」
…リロさんって、元の記憶ある感じですか?
「ありますよ。リロも元の名前から貰ってきてるんです」
へ〜。あれ?でも同郷の者って、さっき神様が
「あー私ハーフだったんですよ。だから、ミドルネームとファミリーネームがあるんです」
なるほど…リロ……?あれ、なんか聞いた事あるような…名前じゃない、声?え、でも…待ってぇ?
「おや、その様子。もしかして、私のこと知ってる感じですか?」
いや、まさかとは思いますが…ありえないと思うんですけど、リーゼロッテ社の御令嬢…
「よくご存知で」
「よくリロからそれ想像できたな」
え…でも確か、亡くなったの2年程前じゃ
「そうですね。元の世界で二年前でも、こちらの世界じゃ200年経ってるんですよね」
100倍の速度…
「実際はもっと複雑らしいですけど」
あ、そうなんですね。その話はやめましょう。
「そうですね」
「そういえば、リロ、もうじきアレですよね?彼に協力してもらうのはどうでしょう?」
え、唐突に何?
「あーそう言えば、ありかもしれませんね」
ちょ、待って。情報共有しっかり!
「えーと、もうじき妖精と精霊の昇華試験の日なんですよ」
昇華試験?
「下位が中位、中位が上位、上位が王位に」
「下位は名を持たぬ群体。中位から個体へ変化し、徐々に自我が芽生え、神々の代行者としての仕事を任されます。そして、上位になると種族名と個体名を与えられ、王位になると専用の四次元領域を与えられます」
「上位で有名どころは、元の世界でもきいたことがあると思います」
…サラマンダーとかウンディーネ?
「そうですね。代表例はそんなところです」
「ニクシー、ニクス、シルフ、アルラウネ、フェニックス、リャナンシー、シルキーですかね。聞いたことがあるとしたら」
え?待ってください。フェニックスって妖精や精霊の類なんですか?神獣とか聖獣では無く?
「妖精も精霊も神々の使徒ではあるから、神獣聖獣でも間違ってはないんだよ。世界によって違うんじゃないかな」
「私達の元の世界では、神獣や聖獣の認識が強かった気がするわ」
確かにそんな気がしますね。私もフェニックスのことを神獣聖獣の類だと思ってましたし
「話戻すね。昇華試験って精霊や妖精として発動できる魔法の規模や出力を測るのね」
「これまではエルフの森で行ってたんだけど、最近人間の侵攻が酷くてね。他の場所を探してたんだ」
ここがその候補に?
「そう。近くにエルフの森もあるし、ある程度精霊や妖精が馴染んでた方が、移住者増えると思う」
「そうね。この土地に妖精や精霊が住んでいれば、大抵の種族は移住を決めるはずよ。なんなら自国との交通網整備しそう」
「ドワーフは確実にやるね」
「天翼族は天空島を直上に移動するでしょうね」
「それなら小人族は地下に街を築くね」
「龍族なんかは、この辺りに巣を作りそうね」
ここってそんなに価値があるんですか?
「君が転生するまでは死んだ土地だったからね。無価値だったよ」
「エルフの狩場になっている森と海にリソース…魔力、龍脈の全てを奪われていたからね。土地が潤わないの」
「でも、君のおかげで龍脈の流れが正常になって、土地に潤いが戻ってきたんだ」
「そうなると、この土地は立地が最高なのよ。適度な魔物が出る森、魔物もいるけど海産物が豊富な海、龍脈のおかげ鉱石が尽きることの無い鉱山、開拓の余地がある広大な平原。貴方が手を加えたんでしょうけど、温泉にプール。湖や川」
「君がある程度開拓したおかげで、この土地は住むまでの工程を大きく短縮できるんだ。龍脈が正常に流れているということは、この土地にいるだけで魔力量が上昇したり、ゆっくりとだが回復したりするんだ」
「つまり、魔法を使って鍛冶や建築をするドワーフや小人には最高の土地。高度を維持するのに常に魔力を消費する天翼族の天空島はこの土地の上空に島を置くだけでその問題は解決」
「龍族は龍脈に不要な魔力を流すことが出来る。君が管理したおかげで、別の要因で龍脈に魔力が流れても問題が無い。逆に魔力が減った龍族が龍脈から魔力を補給することも可能なんだ」
エルフや獣人にはメリットないんですか?
「エルフは…そもそも近くの森に住んでいるからね。この土地に世界樹がない以上他種族程のメリットは無いかな」
「獣人は…あ、でも、精霊や妖精つまり神獣や聖獣がいるのであれば、いくつかの部族は移り住みますね」
「でも、フェンリルや犬神は精霊や妖精の中でも稀だろう?」
「一応候補の中位の子はいるじゃない」
「…でも、昇華してどれになるかはランダムだから」
ん?昇華する先の種族?はランダムなの?
「そうだね。意図して種族を選べたことはないんだ」
「下位、火の群体が中位で個体ごと自我を得て、得意分野をそれぞれ伸ばしても、殆どの中位は上位でサラマンダーかイフリートになるのよ。フェニックスは稀ね」
さっきは疑問に思わなかったけど、サラマンダーも上位なんですね
「まぁ、種族名と個体名持ちだから上位って判断だから」
「細かく分けようとすると大変なんだ。下位中位上位王位じゃなくて、初級下位上位とかにしないといけなくて…」
初級でも使える魔法の規模や出力で下位上位?
「そういうこと。昇華試験の回数増やさないといけないし、そんな大量に個体名を与えるのは、私達のネーミングセンスが死ぬのよ」
確かに。途中から名前考えるの面倒ですね
…あれ?でも、今の下位中位上位王位の方が名前考えるの多くないですか?
「下位が大体纏まって昇華するから、何期の火1とか2とかにできるから助かってるの」
「それに、精霊や妖精は気に入った子と契約して、オリジナルの名前を貰うこともあるから」
精霊王さんやリロさんから貰う名前は仮ってことですか?
「簡単に言えばそうね」
「仮の名前であれば、気に入った子と契約ができるんだ。妖精王はリロって言う固有名があるから契約はできないよ」
「さっき言った何期の火の1なら、仮の名前だから、上書きが可能なのよ」
なるほど。それで、私は何をすればいいんですか?
「特には何も」
「うん。この平原を使わせてくれるだけでいいよ。後は魔法を見て、昇華条件を満たすか判断するだけだから」
なるほど。それならどうぞ。代わり映えしない毎日が少しでも色付くなら
「ありがとう。そうと決まれば、精霊に告知しようか」
「精霊の方は任せて。何人か移住希望者も募ってみるわ」
「いいね。僕の方も募集してみようか」
ありがとうございます。
「お礼を言われるような事じゃないよ」
「そうよ。むしろお礼を言いたいのはこっち」
「エルフの森で行えば、最悪人間の侵攻が強まる可能性があるからね」
…エルフの森で魔法…裏切りか内乱か、別国家の介入…
「頭の回転早いわね」
「そうしない為にも別の場所が必要だったんだ。とても助かったよ」
お役に立てそうで良かったです
「じゃあ僕も戻るよ。また来るね」
「私もお暇するわ。またね、名前のない土地さん」
はい、また今度。
妖精と精霊か…どんな姿なんだろ
元の世界じゃ動物の姿や人の姿、ちょっとした異形、形の無いものも居たっけ?
それに、神獣や聖獣も精霊や妖精と同じって…
まぁたしかに、普通の動物がどうやって聖獣や神獣になるのかわからなかったけどさ…
元から神の力に触れているなら、神獣や聖獣になるのもわかる話だ
さぁ、太陽が昇ってきた。一日が始まる時間だ。
誰もいないけど声高らかに!
おはようございます!!!
…妖精王、黒幕だなんて思いもよらなかった。あの選択肢の表示の仕方怖かったです。
FG〇の話ですよ?
6月14日 一部修正。 土地君がリロの前世を思い浮かべたきっかけを追加。